「暁の女豹」

駿 銘華

第1話 パイロット版シナリオ Ver.001

黒バック


タイトル:暁の女豹


フェードイン


場所:都内の霊園。


殺し屋が緑の風景を背景に黒い革のコートを着て墓石の前に立っている。


右回りにロールパン


ドリーズームイン


殺し屋は墓石に手桶から尺で水を汲んでかけ、持っていた花束を墓石の前に置く。


カットアウト/カットイン


墓石に刻まれた「坂井家」と言う文字がアップで映し出される。


カットアウト/カットイン


殺し屋は両手を合わせて目をつぶり、頭を少し下げて墓石に祈る。


殺し屋が祈りを終えると、コートの右ポケットから「何か」を取り出す。


殺し屋が右手で「何か」を墓石の前に置く。


殺し屋はコートの裏ポケットに右手を入れ、スマートフォンを取り出す。


クレーンカメラ


ドリーズームイン


殺し屋のスマートフォンのディスプレイ画面が映し出される。


殺し屋のスマートフォンの画面には、中年男性の顔写真と「坂井真」と言う名前、それに身長、体重、年齢、職業などの様々なデータが映し出されている。


殺し屋は画面を操作すると、その画像データを削除する。


殺し屋はスマートフォンを操作して次の画像を選択すると、そこにはヒロインの娘の顔写真付き人物データが映し出されている。


カットイン/カットアウト


男が手桶を持って墓石からゆっくり離れて歩き出す。


ドリーズームアウト


カットアウト/カットイン


墓石の前にはライフル弾の空薬莢が置かれている。


ブラックフェードアウト


フェードイン


場所:ビルの屋上。


夕暮れ時の街並みが写し出されている。


ドリーズームイン


殺し屋が非常階段から長くて大きなライフルケースを持って登って来る。


ハンディカメラ移動


殺し屋が屋上の柵に近づく。


殺し屋はライフルケースを地面に置く。


カットイン/カットアウト


殺し屋はライフルケースを開けてライフルを覆っていた黒布をどけ、特殊な電子式照準装置付きスナイパーライフルを組み立てる。


殺し屋が向かいのビル向かってスナイパーライフルの銃口を向けながら電子式照準装置の接眼レンズのカバーキャップを開き、持っていた黒布をスナイパーライフルにかけ、電子式照準装置ごと覆い被せる。


殺し屋は黒い布の先に開けられた穴から電子式照準装置の対物レンズを露出させ、対物レンズのカバーキャップを開ける。


殺し屋は黒布を自分の頭に被せてズームスコープを覗き込む。


カットイン/カットアウト


ズームスコープの照準用のレティクルがターゲットを映し出す。


社長らしき人物が歩道を歩いている。


カットアウト/カットイン


電子式照準装置の倍率がアップされると、その社長の顔が写る。


クロスオーバー


場所:都内の霊園。


殺し屋が墓場でスマートフォンの坂井の画像データを削除している。


カットアウト/カットイン


場所:ビルの屋上。


殺し屋はゆっくりとスナイパーライフルの銃口を動かす。


カットアウト/カットイン


スナイパーライフルのトリガーガードのアップ


ブラックアウト


SE:スナイパーライフルの射撃音が聞こえる。


SE:歩道を歩いていた通行人の女が悲鳴を上げる声がする。


SE:救急車がサイレンを鳴らしながら通り過ぎる。


フェードイン


場所:ビルの屋上。


殺し屋が頭に被っていた黒布を外す。


殺し屋が足元に落ちていた薬莢を拾ってポケットにしまう。


殺し屋がスナイパーライフルを片付けていると、ポケットから一枚の写真が落ちる。


湾岸戦争時代に撮影された殺し屋が仲間と共に写った写真である。


ズームイン


写真には若い時のヒロインの姿が写っている。


フェードアウト/フェードイン


場所:ヒロインの家の台所。


ヒロインとヒロインの娘がキッチンで歌を歌いながら料理を作る準備をしている。


ヒロインの息子:「お袋ぉ。オレ腹ペコで死にそうなんだよ。なんでもいいから早く作ってくれよぉ」


ヒロインの娘:「お兄ちゃん、うるさい。ちゃんと美味しい物作るからガマンしなさい!」


ヒロインの息子:「チッ。いつまでたってもナマイキなガキだ」


ヒロインの娘:「お兄ちゃん、今「ガキ」って言った?」


ヒロインの息子:「ちげーよ。「ガッキー」って言ったんだよ」


ヒロインは幸せそうにクスリと笑う。


カットイン/カットアウト


場所:東日本橋の地下一階の「THE BAR」


ヒロインがカクテルを飲んでいると、マスターがヒロインに大きめの高級ブランドバッグに入ったガンケースを渡す。


ヒロインは洗面所に行ってガンケースの中身を確かめる。


ガンケースの中には、ヒロインの愛銃が入っている。


カウンターバーに戻ったヒロインは、マスターと乾杯をする。


カットイン/カットアウト


場所:木場の「針治療院」


ヒロインが針治療とオイルマッサージを受けている。


(セリフ考案中)


カットイン/カットアウト


場所:昼間の都内の公園。


ヒロインとヒロインの娘、ヒロインの息子が散歩をしている。


殺し屋が太い幹の木陰で待ち伏せしている。


ヒロインたちが殺し屋が隠れている太い幹の木の5メートルの距離まで近づく。


ヒロインの目つきが急に鋭くなる。


殺し屋は素早く木陰から現れて拳銃を抜き、ヒロインの娘に照準を定めて発砲する。


ヒロインはヒロインの娘を地面に殺し屋に足を真っ直ぐに向けて転ばせ、寝かせた状態で突き飛ばして転がせる。


殺し屋は数発の銃弾を発射するが、娘が転がって動いているので銃弾は地面に当たって土煙を上げる。


ヒロイン:「カースケ、伏せて!」


ヒロインの息子は伏せながらポケットからエアーガンを取り出し、殺し屋の銃を持った手に向かってBB弾を発射する。


BB弾は殺し屋の手に当たって、殺し屋が一瞬怯むが、銃口をヒロインの息子に向けて発砲する。


ヒロインの息子は地面の上を横に転がりながら殺し屋の銃撃を避け、エアーガンを連射しながら殺し屋に反撃する。


ヒロインは地面に後転しながら上着を跳ね上げて、腰の後ろにさしていた拳銃を抜き、殺し屋に向かって発砲する。


殺し屋はヒロインの銃弾を避ける為に前転し、横向きに回転しながら発砲する。


ヒロインは体を斜め後ろに180度回転しながら殺し屋の銃撃を避け、頭を向けて殺し屋に反撃する。


殺し屋とヒロインはお互いに逆方向に回転しながら発砲しているうちに、お互いの拳銃の弾丸が尽き、2丁の拳銃がスライドホールドオープンする。


殺し屋は拳銃を地面に捨てて立ち上がり、ポケットからレバーアクションのフォールデイングナイフを取り出して刃を出す。


ヒロインは悠然とした表情で立ち上がり、殺し屋と向き合う。


殺し屋はかけていたサングラスを外す。


殺し屋:「久しぶりだな、こうやってやりあうのも」


ヒロイン:「あの時は味方同士だったけどね」


殺し屋:「悪く思うな。これも仕事なんだ」


ヒロイン:「今回ばかりは相手が悪かったんじゃない?」


殺し屋:「それはどうかな?」


殺し屋はナイフを握りながら徐々にヒロインに近づく。


殺し屋とヒロインは睨み合う。


殺し屋はヒロインにナイフを突き立て攻撃する。


ヒロインは殺し屋の右手を掴み、左手で殺し屋の右手をひねってナイフを奪う。


ヒロインは殺し屋の首を右手で掴んみ、右手で殺し屋の首の付け根にナイフを突き立てる。


殺し屋:「強くなったな。さあ、とどめを刺せ」


ヒロイン:「アタシは生き物は殺さない主義なのよ」


殺し屋:「昔は散々殺しまくっていた癖に」


ヒロイン:「その人なら、もうとっくの昔に死んじゃった」


殺し屋:「じゃあ、お前はもう女豹じゃないってのか?」


ヒロイン:「まあそうね。せいぜいノラネコってところかしら?」


公園に住む地域猫が、ヒロインと殺し屋の間をすり抜ける。


そこに刑事が拳銃を向けながら駆けつける。


ヒロインは殺し屋の手を放す。


殺し屋は両手をあげながら立ち上がり、両手を前に差し出す。


刑事は右手に拳銃を構えながら左手を後ろに回してズボンのポケットから手錠を取り出す。


殺し屋はその一瞬の隙をついて前進し、刑事から拳銃を奪って刑事に向かって発砲する。


ヒロインは刑事を突き飛ばして殺し屋の銃弾を避けさせ、殺し屋の拳銃を奪おうとする。


殺し屋は瞬時に後ろに回転しながらヒロインと距離を取り、


殺し屋:「そのテにはもう慣れたぜ」


殺し屋はヒロインの頭に向かって拳銃を発砲する。


ヒロインはその銃口の向きを見定めて、首を素早くかしげて銃弾を避け、身体をかがめながら地面に落ちていた自分の拳銃に飛びかかって拳銃を拾い、銃口を殺し屋に向ける。


殺し屋:「何をやってる? 空のハジキじゃ役に立たないってのに」


ヒロインの娘は、首から下げていたネックレスに付いた1発の銃弾をちぎり、1発の銃弾をヒロインに投げ渡す。


ヒロインの娘:「ママ! キャッチ!!」


ヒロインはその弾丸を左手でキャッチし、スライドオープンしたエジェクションポートからチャンバーに弾丸を装填すると、スライドストップを下げてチャンバリングし、殺し屋の拳銃の銃口めがけて発砲する。


ヒロインの放った銃弾は殺し屋の拳銃に命中し、殺し屋は拳銃を落とす。


そこに背後から近づいて来た刑事がすかさず殺し屋の左手に手錠をかける。


刑事:「お前の右手は、しばらく使えなさそうだな」


刑事は、もう一方の手錠を自分の左手にかける。


殺し屋:「ノラネコにしちゃあ、腕がたつじゃねえか?」


ヒロイン:「女豹だってノラネコだって、必死に生きてるのは同じだからねぇ」


刑事が殺し屋と共に立ち去ろうとする。


ヒロイン:「ねえデカチョーさん、アタシを捕まえなくてもいいの?」


刑事:「あんたは俺の命の恩人だ。見逃してやるから、ガキどもを連れてさっさと失せろ」


ヒロイン:「それでいいのかしら? 後悔しても知らないわよ」


刑事:「お前がまた世界のどこかで何かしでかしたら、その時に捕まえに行くさ」


ヒロイン:「このお人好し」


刑事はヒロインにウィンクすると、殺し屋を連れて車に向かう。


ブラックアウト


刑事:「(無線の声)国際指名手配犯、殺人未遂の容疑で現行犯にて確保。これより署に連行する」


フェードイン


場所:荒川の土手。


朝陽が河辺に浮かび上がる。


ズームイン


ヒロインが川岸に座りながらタバコをふかしている背中が映し出される。


ロールパン


ズームイン


カットイン


ヒロインは首から下げた1発の銃弾がついたネックレスを取り外すと、それを川に向かって放り捨てる。


そこにヒロインのスマホが鳴り、ヒロインが左のポケットからスマホを取り出して通話ボタンを押す。


殺し屋:「なあ、考えたんだが、俺たちまたやり直せないか? 俺にはお前が必要だし、お前には俺が必要だ」


ヒロイン:「檻の中にいる人が言うセリフじゃないわねぇ」


殺し屋:「俺の息子と娘をよろしく頼む」


ヒロイン「何を今更。アタシ達をほったらかしにしてた癖に」


殺し屋:「金ならずっと払って来たじゃねえか?」


ヒロイン:「子供を育てるのはお金じゃないんだよ!」


ヒロインは通話ボタンを押して通話を切ると、しばらくタバコをふかしながら考えこむ。


そこにヒロインの息子と娘が現れる。


ヒロインの息子「お袋ぉ、やっぱりここにいた」


ヒロインの娘「ママ、またタバコなんか吸ってる。あれ? ひょっとして泣いてるの?」


ヒロイン:「そんなワケないじゃない。ちょっとタバコの煙が目に染みただけよ」


ヒロインの息子:「んじゃあ、もうタバコやめるって約束、守るんだな」


ヒロイン:「それはどうかしら?」


ヒロインの娘:「もう、こんなのポイ!」


娘はヒロインのタバコを奪い、川に投げ捨てる。


ヒロイン:「あっ! 27円もするのに!」


ヒロインの息子:「買わなきゃいいだけの話じゃねーか」


ヒロインは両脇に子供たちを座らせ、子供たちの肩に両手を回して抱き締める。


ヒロインのスマホが再び鳴る。


ヒロインの娘がヒロインからスマホを奪い、受信メールを開く。


ヒロインの娘:「あれ、これ誰からのメール? 「さっきの返事は?」って書いてあるけど?」


ヒロイン:「あなたたちには関係のない事よ」


ヒロインの娘:「ふーん、なんだか知らないけど返信しちゃお」


ヒロイン:「ちょっと、何やってるのよ!」


ヒロインの娘:「何って、「いいね!」を押しただけだけど?」


ヒロインは困った顔をするが、やがてその表情は苦笑いに変わる。


ヒロインたちの背中のシルエットを写しながら、タイムラプス動画で流れる雲が映し出される。


テロップ:「川に物を投げ込むのは不法投棄ですので条例で禁止されています。あとテッポウの銃口を生き物に向けるのは危ないので絶対にやめましょう・・・ネ!」


エンディングテーマが流れる。


スタッフロールが始まる。


ブラックアウト


スタッフロールが流れ終わる。


テロップ:「そして、これから壮絶(笑)な戦いが始まる」


テロップ:「TO BE CONTINUED.」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る