二人で出来る遊び(塔の正逆位置兄弟)
「ねぇ、いつまでそうしてるわけ?」
「あ……えっと……」
色とりどりの積み木を上に積み重ねては、バランスを崩して落ちてしまう……それをまた直しては崩れの繰り返しを行う兄に、弟はあきれた顔で声をかけた。
「さっきからさ、黙って見てればおんなじことやってるじゃん……何がしたいわけ?」
「えっと……家を、作りたいんだ。みんなが笑って暮らせる……家」
「……そんな簡単に壊れる家、誰も住めないと思うんだけど?」
「あはは、やっぱり……そうだよね……」
兄であるタワーさんは、私があげた積み木で、家を作ろうとしていたようだ。だがバランスが悪いのか簡単に崩れてしまい、先程から組み立てては崩れるの繰り返し。
そんな兄を見かねた、弟のタワーちゃんは、ため息をつきながらどこからか紙と色鉛筆を取り出してきた。不思議そうに見る兄に、弟はそっぽを向きながら言った。
「これなら、直ぐには壊れないでしょ! ほら、一緒に書くよ!」
「一緒に……書いて、くれるの……?」
「僕が持ってきたんだから、書くに決まってるでしょ? 一人で書いててもつまんないから、誘ってんの! いやなら別に良いけど……」
普段兄のうじうじした態度を、見ていて腹が立つと言ってる弟だが、なんだかんだ言って一緒に遊びたいのだろう。
カードといえども兄弟であることに変わりはないのだから。悲しい意味を背負いながらも、懸命に生きようとする姿は凜々しくも儚い。
「……一緒に書く。誘ってくれて、ありがとう……!」
「だったら早く書きなよ! 書けたら主に見せに行くんだから!」
「え……主に……?見て……くれるかな……?」
「主が僕らを拒むはずないじゃん、何言ってんの? 変な心配してないで、早く書きなよね! おいていくよ?」
こっそり二人の部屋を覗いていた私の目には……無邪気に一緒に絵を描き笑い合っている、幼い兄弟の姿があった。
「……なんだ、仲良く出来るんじゃない。」
ほほえましく思いながら、二人に見つかる前に、その場を後にしたのだった。
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