相思相愛になった日(女帝・皇帝の正位置夫婦)
「ねぇあなた、書類はもう終わった?」
「女帝か、もう少しで終わる予定だ!」
「……これのどこが、もう少しなのかしら?」
女帝さんの日課は、夫である皇帝さんに仕事をさせることから始まる。彼は決して仕事をサボっている訳では無いが、俗に言う段取りが悪いのだ。それを正すのは彼女の仕事でもある。
「ほら、先ずここからよ。この後は順番にやれば終わるわ」
「うむ……こうか! 流石は女帝だ、これならば直ぐに出来そうだ!」
女帝さんの助言を受け、皇帝さんは早速作業に取り掛かった。先程まで山積みになっていた書類が、次々と減っていく……ものの五分ほどで、書類は綺麗さっぱり片付いた。
「女帝のおかげで早く片付いた、礼を言うぞ! どうだ、久しぶりに出掛けようじゃないか。あまり君との時間を過ごせていなかったからな、今日は君と過ごしたい」
「あら、いいわね。それじゃあお出かけしましょう?あなたも着替えて、折角のお出かけだもの。目一杯着飾らなくちゃ!」
「君はそのままでも充分綺麗じゃないか、君は私の自慢の妻だよ」
「相変わらず口だけは達者ね……ありがとう。さ、出掛けましょう! そうだわ、折角だから娘に会いに行きましょうよ」
「それは名案だ、早速行こう!」
今でこそ仲がいい二人だが、元々は政略結婚で決められた関係だった。女帝さんは最初、皇帝さんを受け入れられず拒絶さえしていたらしい。
対する皇帝さんは彼女に一目惚れをし、振り向いてもらおうと毎日手紙を書いた。
『今宵は綺麗な月が浮かんでいる。君と二人で見上げたら、どんなものが見えるだろうか』
それに対する女帝の返事はこうだった。
『誰と見ても月は月』
冷たい女帝さんの態度に、皇帝さんは愛らしさを覚えた。懲りずに毎日手紙を書き続けていた皇帝さんだったが、ある時突然送らなくなった。
突然来なくなった手紙に不安を覚えた女帝さんは、こっそり皇帝さんの部屋を尋ねた。
するとそこには、大量の書類に埋もれ苦しそうに手を動かす皇帝さんの姿があった。見兼ねた女帝さんは書類に目を通し、皇帝さんに次々と指示を出し始めた。
戸惑いながらも彼は指示に従い、手を動かし続けた。書類はあっという間に終わり、部屋は元通りになった。
「ありがとう女帝、助かったよ! 君に手紙を書きたくて頑張っていたのだが、なかなか終わらなくてな」
そう話す皇帝さんの目にはクマが出来ており、食事もろくに摂取していないように見えた。
「……これしきのこと、皇帝ともあろう方が終わらせられないなんて恥ずかしい限りよ。最も……妻となる婚約者に心配をかけさせるだなんて信じられないわ。これからは私が手伝ってあげるから、何時もみたいに手紙……書いてちょうだい」
この出来事をきっかけに、二人の仲は深まった。今となってはラブラブである。
この先もこの仲睦まじい姿が、見られますように。そう静かに祈っている。
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