魔法少女戦記
やにりす
スノードロップからのお告げ
「アイリス、お願いがあります。ローズワールドに迫っている危機を救ってください。枕元にプレゼントを置いていきます。」
不思議な夢だ。白いロングヘア、透き通るような肌。大きな瞳。
立ち振る舞いの全てから気品あふれるその女性は、前女王のスノードロップ様だ。
彼女は私が幼いころになくなってしまい、あまりお目にかかれる機会も少なかったが、その存在感は今突然夢に出てきても圧倒されるほど大きいものだった。
「んー!よく寝た!」
そんな心地の良い夢を見た日は寝覚めもいい。
先ほど夢の中で彼女に言われた言葉も忘れて、ベッドの上で大きく伸びた。
ガサッ
「あれ?なにこれ?」
伸びた反動でベッドから1枚の手紙が落ちる。
広げてみると「今日の午後9時、宮廷前の公園の噴水」とだけ記されていた。
元々手紙が置かれていたであろう枕元には、ブレスレットが置いてあった。
「そういえば・・・」
先ほどまで見ていた夢を思い返す。確か、スノードロップ様が「救ってほしい」とか言ってた気がする。ただ、今のローズワールドの女王はロベリア様だ。なぜ今になって急に?それに何故一般市民の私が?色々と疑問は深まるばかりだが、ここで考えていても仕方がない。
「時間までまだあるし、街でも覗いてこようかな。」
夜まで時間をつぶして、指定された場所へ向かうことにした。
午後9時。噴水前に到着すると、幼馴染のハナニラと4人の見知らぬ少女がいた。
「ハナニラ!もしかしてハナニラも手紙を受け取ったの?」
「アイリス!そうだよ、もしかしてアイリスも?」
重大な使命を託されたのが私だけじゃないという安心感から、見知った顔のハナニラに駆け寄る。私が駆け寄ると不安そうなハナニラもパッと表情を明るくした。
動くたびに丁寧に巻かれたボブヘアーが揺れていて、いつも通りのハナニラに私も安堵する。
「そうなの、でも「救ってほしい」だけ言われても、どうしたらいいのか全然わからないよね・・・」
「うん、でも私だけじゃなくてアイリスも一緒だと心強いよ!」
「あの、盛り上がってるところ悪いんだけど、私もその手紙もらったんだよね。」
近くにいた赤髪の少女が声をかけてきた。はっきりとした話し方と堂々とした態度から頼もしさを感じる。
「私の名前はアンズ。あっちにいるのはチューベローズとカルミア。あの2人もスノードロップ様のお告げを聞いてここに来たらしい。」
アンズ、と名乗る少女が指をさす方を見ると、白髪の少女と水色の髪の少女が立っていた。
「初めまして。私はチューベローズ。」
「・・・初めまして。私はカルミア。」
白髪の少女、続いて水色の髪の少女が自己紹介を始めた。
チューベローズは露出の高い派手な服を身に纏い、人懐こく、カルミアはクールで無口な印象だった。
「私はハナニラ!こっちは幼馴染のアイリス。よろしくね。」
仲間が増えてうれしそうなハナニラが私の分まで紹介をする。
「よろしくね。えっと・・・アンズとチューベローズとカルミアは知り合いなの?
「いや。ちょっと前にここで知り合ったばかりだ。」
「そうなんだ。とりあえず・・・これからどうしたらいいんだろう?」
「そうだな・・・。お告げによると、今ローズワールドには危機が迫っているらしい。これといってピンとくるものはないが・・・何か思い当たることはないか?」
アンズの問いかけにみんな首を傾げて唸っている。
そりゃそうだ。いきなり国規模の話をされてもわかるわけがない。
しばらく円になって考えていると、何かを思い出したようにカルミアが口を開いた。
「そういえば、最近噂になっている「クロユリの呪い」、とかはどうでしょう・・・。」
クロユリの呪い。それは女王ロベリアが治めるようになってから徐々に広がっていった失踪事件のことだった。
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