第14話 もしも、あの世に行けたなら
「あ、あれ?」
たぶんわたしは死ぬんだわ、と
身構えていた。けれど何も起こらなかった。
ラジオは、ふつうにFEN。
映画音楽を流している。
MASH、という映画のテーマソング。戦争に行きたくない人の気持ちを綴った歌詞。
わたしも、なんとなく歌に聴き入ってしまった。
放射能に汚染されてしまって、もう未来は明るいはずも無くて。
絶望の淵に立った兵隊たちが病気になって逃げ込む野戦病院、それがMASHだとDJが言っていた。
FENって米軍放送なのにこんなこと言っていいの(笑)なんて笑ってしまったけど
そのおおらかさがアメリカだな、と思う。
絶望の淵に立っていても、歌を歌える気持ちがある国。
わたしの国に、そういうゆとりが欲しいと
そう思ったりした。
みんなの為にならない原発なんかを作って、嘘ばかりついて。
結局、お金持ちの自分勝手じゃない。
それでみんなの国を汚しても
責任なんか取りはしない。
だからわたしは、死んでもいいとそう思ったりして
引き金を自分に引いたんだ。
でも、何も起こらなかった。
「うん」フェルディナントの声がようやくラジオから聞こえた。
「君は、ここで死ぬ運命じゃないんだよ。だって、君の活躍で未来は救われる事になっているんだから」
と、フェルディナントは変なことを言う。だって、もう原発は爆発しちゃってるのに....
「だから、それをなんとかすればいいんだ。僕は、未来から君に話し掛けている。つまり、この通信は時空間を越える事が出来るんだ」
わたしは、ちょっとした疑問を覚え「なら、どうして最初から爆発前のわたしに通信しなかったの?」
フェルディナントはきまり悪そうに「まあ、ちょっとした手違いさ。そんな事したらストーリーがつまらない。事実は小説より奇なり、って言うだろう」
ドイツの人って偏屈、って言うけど
なんとなくそんな気も(笑)したわたしだった。
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