第10話 海

流れのさきには、大きな海がひろがっています。


それまでの、涼やかな流れとは違って、温かい、大きな流れに戸惑いながらも

彼と一緒に、南へと

流れて行きます。


どこへ、いくのかしら....


南の海は、とても綺麗な

コバルト・ブルー。


キラキラと輝くような、おひさまのひかり。

エンジェル・フィッシュがひらひらと。


眺めているだけでも楽しくなってしまうような、南の旅。



とても、あたたかで

少し、眠たくなってしまいます。



ゆらゆら、ゆりかごみたい。



スノゥ・フレイクは

夢ここちで

波にのったまま、ゆらゆら....




でも。


暖かい海で、おひさまに照らされて

海のお水は、ゆらゆら

陽炎になって。


空に昇っていきます。


いっしょに、ね。


なにが起こっているのか、スノゥ・ウィにはわかっていました。


でも、スノゥ・フレイクが怖がるといけない、と思い

眠ったままにしておこう。


ふたりは、いっしょに。


空へ昇って行きます。


雪のひとひらは、雪とけ 水になって。


清らかなせせらぎに。


そして、川になって。


海へと旅をしました。



そして。



ふたりは、水蒸気になって空へと、昇ってゆくのです。



さようなら....


楽しい旅だった、とスノゥ・ウィ、彼は思いました。


そして、また冬がきたら

彼女、スノゥ・フレイクに巡り会いたい、そう思います。


もし、この旅の事を覚えていたら、の話ですけれど

でも彼は、思います。

あの丘でであった、彼女はどこか、いつか出逢った事があるような

そんな気がしていたのです。



そのことを、彼女には

話してはいませんでしたけど

でも、きっと。

そうなんだろうと、彼は思います。



ふわふわと、雲の高さにまで昇りつめたふたりは

もう、透明な風のように。


どこにいるのかも、わかりません。




さようなら.....

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