第百六十八話 新ムータン 地方で


ムータン人達が新ムータン入りしてから半月ほど過ぎている。

もう兵舎も日常生活に全く支障が無いくらいに小物まで揃っている。

食事も皆ここに帰ってきて、3つにわかれて順番に食べている。


が、農業班で地方に出ている者達は、いちいち戻るのもなんだし、こっちで生活できるくらいにしておきたい。と、現地で暮らし始めた。当然その近くに森があるところも多い。なので狩り班の2チームくらいが同行し、警備と同時に食料確保を担っている。

また、その地方の街で風呂屋を稼働させている。やっぱ肉体労働してるんだから毎日入りたいよね!


このように、徐々に各地が人間が住むための稼働を始めている。


ーー


「なぁ、、俺達も、なんでもできるようになっちまったなぁ、、」

と、近衛兵のタモラが畑地の小石をザルに入れながら言う。畑にする場所の土をひっくり返した後の小石をのけているのだ。そのあとほぐしながらまた石があったらのけといて、畝を作り何かを植える。


「ああ、もともと俺らいろいろできるとか思ってたけど、こっちは桁が違うな。できること全部がプロ以上だと思ったわ」同じく近衛兵のイバール。全く偉そうにしない極普通。名前がたまたまなだけ。


ここは王都から南の平野側。海に近い方だ。たまに潮の匂いがする。歩いていけるほど近くはないが、潮の香りは時には思った以上に遠くに運ばれることもある。

この街に、まだ名は無い。図面での地区番号2−18ー1、西から2コマ、北から18コマ目。そこの印1,ということ。

縦横20にわけられている。


身体強化しながら作業を行っているので、効率は生身での数倍はある。最近は夕方にほとんど魔力を使い切るくらいに自然に調整している。5%くらいは残している様子で、寝る寸前に使い切ってそのままバタンキューする。

寝る前に使い切る事も、もう日課になっている。

ムータン人達は基本、素直で努力家であった。



地方の農業の試験は、外周から回って、内側に戻っていく感じで行うことになっている。植え込みが終わったら次に移る。その時念話で本部と話て次の場所を決める。

農業試験に出る班は総勢2000人以上。1班に狩人含めて20人ほど。一箇所に半月ほどかかると見ている。これでもびっくりするほど早いのだ。マソのあるこっちでは植物の育成も早いと、当初は驚いたものだった。


向こうの世界のムータンから次が来ないうちにある程度決めておきたいと司令官のみならず、皆思っていた。

なので狩人たちも本気で農地の近くの森の安全性を確認している。


でっかい森の内部は、専門要員として冒険者班が用意されているけど、村の周囲は農業班と一緒に行動している狩人達が安全性の確認を行う、ついでに食料確保もする。


「・・・ここはあまりいないなあ、」

と、タモラ達と一緒のチームの狩人のナーカモラ。実習時に弓が上手いのがわかり、狩人になった。腰にはうさぎが3羽、足元には中型犬ほどの一角うさぎが2羽。


「ああ、この辺で引き上げるか、、うさぎがいるくらいだから脅威は今の所無いだろう」

と、ナーカモラのペアになっているキーモラ。剣が得意らしく大きめの両手剣を持っている。足元にはイノシシ2頭。


魔獣ではなく獣がこれほど多いのは、大型魔獣がいないか、いてもそれほど多くはないということ。基本的にはそれらの縄張りを侵さなければ表の方に出てこないだろう。が、あくまでも基本だ。情況はいつ変化するかわからない。常に環境・情況の変化を見、危険性に気をつけておくことは必須だ。


「あれだなー、新しい者達が来ても、」

「ああ、俺ら達だけじゃ無理だな、ドラゴニアで研修つけてもらわないと死者でるなー」

「うん、ぼろぼろ出ると思う。少なくとも森に入る者達のみだけでも先にやってもらいたいな」

「だよな」


勘、の重要さを、研修中に冒険者としてやっていたときに実感した。

今回からもうベテラン冒険者のリーダーがいないのだ。リーダーは村で待っている。独り立ちの許可を得たナーカモラ達。

まさに自分達の勘がこれほど研ぎ澄まされるのか!と思うほどに集中して森に入っている。

魔力と勘が相まって、索敵になっている。


「キーモラ、」

「おう」

と、キーモラ側のヤブから飛び出す一角うさぎを正面から一突き。

その後ろに隠れてキーモラに飛びかかろうとする二匹目の眉間をナーカモラが射抜く。

他にはいない。


「戻るか、、」

「だな」


村の一番大きな建物、村長の邸を拠点にしている。

ここの厨房を使い、みなの食事を作る。

そして頃合いになると村の風呂を稼働させている。

その日の当番が早めに戻って食事と風呂の用意をすることになっているのだ。


各人の得意なもので料理が決まる。ムータン料理の場合もあるし、ドラゴニアで覚えた料理の場合もある。

酒は週に一度配給が転移でやってくる。晩酌にいっぱい程度だが、有り難い。


晩飯時に感じる。皆口に出すことは無いが、「俺達がムータンを作っている」と実感できている。

だからなのだろうか、ぐっすり眠れる。



翌朝、朝日が昇ると、皆自然に目が覚める。そして自然に思いがこみ上げる。

さあ、今日も!!



ーーーーーー



ダンマスとユーリはダンジョン二階層に扉を設置した。扉と言うか、門だな。

入り口からは広い道というか大通りくらいになって門まで緩やかなスロープで降りている。荷車も通れるように。

でかいのはダンマスのストレージにしまっちゃえばいいのだが、でも「でかいのが通れると便利」と。ダンマスが居ない時でも使えれるほうがいいのだ。


ドラゴニアの世界の方の出口は、南の大陸の小島にダンマスが作った小さなダンジョンの中にしてある。


もし何かあってもダンジョンなら、特に魔力の吸収がしやすいだろうと。ダンジョンは一種の異界だから。


そして、この小島に、ドラゴニアへの転移扉を設置すれば完了だ。


「半月後には実稼働できますね」ダンマス

「ああ、多分、、」ユーリ

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