第百六十六話 ムータンの冒険者たち


ムータン冒険者たちのほうは、たまに怪我する者が少し居るのみで、ほぼ皆少しづつ経験を詰み技量を上げているとのことだった。


引率する各チームのベテラン冒険者達は、もう彼等だけでも狩場を間違えなければ大丈夫だろう。そして、彼等はもう狩場を間違えることはまずないだろう。と述べているという。

だが、後発部隊が来る迄はそのまま継続させた。危険に関する経験は、うまく積めば摘むほど向上していく。


そして彼等は、3−5日森に入って狩りをして、2−3日街に滞在。その時に軽く魔法の訓練をしたり休みを取ったりする。


彼等は森に居るときは基本干し肉をメインに食べ、夜には食べられる獲物を食べたりしている。引率しているリーダーはストレージを持っている。ドラゴニア防衛隊に参加してくれた者達全員に、ジオとテイナが指導し、回復魔法と収納魔法を使えるようになってもらっている。

日常はともかくも、緊急時には必要な魔法だから。そこだけは全員使えることを前提にガンダ達が作戦を考えるからだ。


ここから判るように、防衛隊に所属してくれた冒険者達はその名の通り防衛のみをしてもらう。それは銀月と満月の皆で考え、後からドーラも同様の考えをガンダに述べていた。

もし、冒険者の中から半端でない強さの者がでたら、前線に出てもらうが、そうではないなら絶対に出させない。前線に出るくらいなら全員で逃げるために尽力してほしいと。



また、防衛隊隊員の中で希望者には転移魔法の指導もしている。全員複数人、それもより多くを連れての転移まで覚えたがっている。ただ、狩りをする者達の多くは行きには転移を余り使わない。歩いて狩場に入り、狩場の雰囲気がいつもと違うか確認するから。特になにかとても強い魔獣がいるときなど、雰囲気は変わる。異変を感じるのは彼等の命を守る基本中の基本だ。

転移は使う場合はもっぱら帰りに使う。

それでも皆ベテランなので、余力を残して帰ってくる。

更に、多くの者は帰りも歩きか身体強化した走りで帰ってくる。早く帰る理由がなければ転移は使わないだろう。


冒険者が危険な場合、さてもうそろそろ帰ろうか、これで仕舞にしよう、ってときに多い。

つまり、他の者達も帰る頃、だ。転移で帰るとそういうのを見つける機会はない。勿論そんなことそう多くはない。年に1度あればあるかないか。そのために、歩いたり走ったりして帰るのだ。

そういうベテランばかりなのが、防衛隊に志願したベテラン冒険者たちなのだ。

だから転移魔法を覚えても、余り使う機会は無いだろう。本心から危機的状況になったら必要だからだと思っていることがわかる。



その引率するベテラン達にとっても、南の水路開発後にドラゴニア領になった西ノ森は真新しい狩場。期待もあるが、最初は恐る恐る入っていっていた。ベテランだから当然だ。自分たちが新しい狩場の調査を兼ねての狩りを行っていることを判っている。

追随するムータンの者達もその慎重さを目の当たりにし、それを学ぶ良い機会だった。


ときにはジオやガンダが上空に飛んで、彼等の動向を見学してくる。

報告も受けているけど、やっぱり自分で見てみたいというのはある。

で、驚くことに、いつの間にかストレージを持っているムータンの者も何人も居た。


ジオは知らないと言うので、帰ってからテイナに訊くと、結構教えを乞うてきて教えてるとのこと。

ダンマスが、向こうの世界でムータンにマソを発生させていると言っていた。それが功を奏していたんだろう。

ドラゴニアの収納の殆どはダンマスの教えで広まったものだ。

ユータみたいに膨大な魔力を持つ者ならいざ知らず、

「あなた達は、こっちのやり方で覚えてください。魔力が少ない人向けです」

とダンマスが教えた省魔力収納。

と言っても、ドラゴニアの者達は、それ以外の地域の者達、つまり今までのこの世界での一般的な魔法使い達の数倍から数十倍の魔力を持てている。

ダンマスやドーラやユータが異常なほどの持ち主なので、ダンマスは「魔力が少ない人」と表現していた。


魔物の出る森も多く、狩りができるダンジョンも2つあるドラゴニア。マソは多い。ここに住んでいれば、当然他の地域に住むよりも魔法は上達していく。住んでいるだけで今までよりは魔力保量は多くなっていく。更に、鍛錬すれば伸びは早い。


そのダンマスがダンジョンを作ってマソ放出しているムータン。環境が良いのは当然だろう。




北西王国とドラゴニアの間の山岳地帯にある監視所。

その監視所チームの班長マキシーは、最近は国内の方にも目を向けている。新しく国に組み込まれた西ノ森を見るのだ。

異世界から来た者達が狩りに入っているという。

北側はもう同盟になってるので、あまり重点的に監視しなくてもいいだろうと防衛全般を見ているマキに了承もらい、半分を西に回している。


班員達は皆遠視を使えるようになっている。中には聞き耳まで使えるようになって、対象の話し声まで聞ける者もいる。今出来ない者も練習中だ。念話以外にもこれが使えたら便利そうだと。


たまに危険な時を見聞きするが、皆リーダーであるベテラン冒険者達がどうにかしてしまっているので、マキシー達の出番がない。皆飛行魔法ができ、多くは転移も使えるので、なんかあったら助けに行こうと思っているのだ。

それを聞いたマキは、二重の安全性を確保したマキシー達を大いに褒めた。


もし最初にベテラン冒険者になにかあったら、ムータン冒険者たちが危機に晒されるかも知れない。ベテランがやられるほどなのだから。そういう本当にイザというときこそ、マキシー達の出番になるのだ。まぁ、そんなときは無い方がいいのだけど。とマキ。


マキシー達は、自分らが思ったい以上に重要なことをしているんだな、と認識できた。

「影で皆の安全を見守っている、それが君たちだ」マキ


なんか、すげーカッコイイ、、

朝食後のお茶ミーティングでそういう話をしているマキ達を、側で聞いていたユータはそう思った。

自分達が子どもたちからカッコイイと思われ、目標にされていることなぞ全く知らないユータ。



その茶の席で、北西王国国王とミカロユスとガンダ達が話をしている。


「もし、彼等が移住したいと言えば、うちの国は喜んで受け入れます」王

ムータンからの移住者達のことだろう。


「そういう者もでてくるかも知れませんね。念頭に置いて研修を行っていきます」ガンダ


確かに、こっちに来たからムータンに居なければならない、ということはない。慣れて旅にでたければ出ていいし、落ち着きたい場所ができたらそこに住んでもいいだろう。


「現に、今うちの子達も、、、、ゴンザールだろ、北西王国にももう出ているし、、」ドーラ

「イスターニャやラットビアにも行っている子たち、少なくないぜ?」ガンダ

「「え!?そーなの?」」ユータ、ドーラ


「ああ、若いっていいよなー、、どんどん行動していく、、羨ましいわ」ガンダ

うんうん言っているジオとザク

おっさん化したかな?

あ、マキまでうんうんしている件、、、


ユータは同い年らしきマキまでそうなっているのが、少し危機感を抱いた。ボクはおっさんにならないようにしよう、、と。


「・・・でも、んじゃ国内の人口減ってきている?」

「まぁ、、でもまだ子どもたちの流入あるし、、上の子たちもあと5−10年すれば結婚しはじめて、、」

「ああ、そうだな、、早いもんだ」ドーラ

あ、ドーラまでおっさん化し始めた・・・


「そう言えば、ドラゴン人は居るけど、他の獣人は余り見ないね?」

「うーん、、そう多くないんじゃないか?」

「そうなの?」

「ああ、俺もあまり見たこと無いな、そういう集落とかも聞いたこともない。」ガンダ

「そうですね、ウチの国でも今まで訊きませんね」王


少し期待していたユータであった。少し残念。

でもダンジョンには多いんだ、モモンガとかミノとかダンジョン生物にはいるだろう?がっかりするなユータっ!!


でもダンジョン以外産まれだと、ドーラ、ローラ、ニヤだけなんだとね、ユータが知っている獣人。

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