第百四十九話 ナンターラ山の街 そこのギルド


マンダジ。だいたいどこのムスリム食にも、このマンダジとサモサはある。サモサは小麦粉を練って薄くしたもの真ん中に具を入れて三角に折って揚げたもの。形はおにぎり型。マンダジは丸っこい甘い味付けの揚げパン的ななにか。ってパンかどーなつみたいなもんだけどね。

自然でシンプルすぎるところが美味い原因じゃなかろうか。


しかも、歩きながらたべられるし。

抱え込んだでかい紙袋にいっぱい詰め込んだマンダジとサモサを歩きながら食べ続けるローラ。


ん!、と手を出すドーラ、マンダジを乗せるローラ。

サモサいい?と手を出すユータ。その手にサモサを乗せるローラ。ローラの口のもごもごは止まらない。次から次へ放り込んでいるから。


「なんか、、お腹が出てきちゃったかも、、、」ユータ

へぇ?って目で見るドーラとローラ。

竜人はやわじゃないんで少々食ったところででぶったりしない。

うらやましいね!



昨晩は、馬車で到着後、すぐに御者おすすめの宿に入り、銭湯(温泉)に行き、宿に戻って食事をした。

ローラも「空腹にならない程度」というのを覚えるようになり、バカ食いは大食い程度にまで下がった。


翌日はギルドに行って、なんか受けよう、と話を決めた。



で、翌日、朝食後、宿から通りに出ると横が市場だった。

どうしても先に市場を見てみたいとダダをこねるローラに負け、3人で市場に入り、入り口付近に集まっていた食べ物屋台の一つから、マンダジとサモサを買ってみたら、ローラが気に入ったようで、、デカイ紙袋いっぱいに買い込み、今、食べながらギルドに向かっている最中だ。



ギルドは前のギルドの建物を街が接収し、それを今のギルドが使っているらしい。

中に入ると、結構居た。それなりの者たちに見える。と言っても、ドラゴニアの中間の街の森にパーティーで入って、どうにか生きて戻ってこられる程度かもしれない。

あそこの冒険者達は、どこの森にソロで入っても、一日ほどの深さなら余裕で稼いで帰って来るだろう。とか思った。

そう思ったら、「あれ?あそこの冒険者が異常に強い?」と今更思ったドーラ。


今のこの国北西王国(元リターニャ)も、国境でモモンガ達が頑張っているのだろう、人間的にろくでもなさそうなのは居なさそうだった。


依頼の掲示板を見ると、そこそこ貼ってある。

しかも、街やギルドからの魔獣討伐依頼が多い。また、近隣の裏街道沿いの街の依頼もある。これも魔獣討伐。

この街の南北にデカイ街があるので、そこへんの納入用か、大量のオーク、ミノの肉の依頼もある。殆どが常時依頼だ。


「ここは、冒険者にはいい街だな、、稼ぎ放題じゃん・・・」ドーラ

「・・・・・ホントだ、、荷馬車かストレージ持ってりゃがっぽりだね!」ユータ

「そなの?がっぽり稼いでればガンガン食べていいのね?」ローラ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぁ、、それも可能だし、、


「おい、すごいこと言ってるな、まだ子供なのに、、」

と近くで掲示板を見ていた冒険者


「まぁこの程度なら、、」ドーラ

「・・・どこから来たんだ?もしかしたら、、ゴンザール?」

ちょっとがっくりしたけど、、そこはドラゴニアって言ってくれよ、、、と思うドーラとユータ


「ドラゴニアから来た」ドーラ

ざわざわざわざわ

(ドラゴニアだってよ、、ほんとにあったんだ、、、)

(空想とかじゃなかったんだ、、)

(んじゃ、王都が燃えたのはやっぱドラゴニアの王にやられたのか?)

(だろうなぁ、、ほんとにあったんじゃ、な。)

(まじかよ、、でも子供がつく嘘じゃないだろうし、、)

(嘘付いて誰得よ?)

(まぁな)


と、

ドラゴニアがあることさえ信じられていなかった様子。


「おいおい、、ここの国と南で国境を接してるんだぜ?そこでクズな傭兵共が全滅させられたろ?」ドーラ

「うん、そこの領都もメテオで消えたし、、」ユータ

「今はいい街ができているけどなー」ドーラ

「何もかもが美味しい街ね!」ローラ

「だったねー」


「皆、もともとここの国の者なの?」

何気に訊くユータ。でも変なトコ鋭いからなユータ。


「俺らはゲスザンス。ギルドがなくなったからな、でもこっちに来て良かったぜ?あっちは稼ぎの半分以上取られたし査定は低いし、最後の方なんか無茶苦茶だった。それに比べりゃこっちは天国だわな。」最初に話しかけてきた冒険者

「ああ、迫害が無いってのもいいよな!」その相棒らしき冒険者


他の冒険者達が話しに加わりだす。

「ゲスザンス、そこまでひどかったのか?」

「ああ、お前知らないのか?」

「おれはもともとここの地方からで、俺のいなかはギルド無かったんで狩人やってた」

「ここの国のギルドもひどかったはずだぜ?」


「おう、俺はもともとここだったからひどかった。あの頃は山賊みたいな冒険者も多かったし、街の奴等からの嫌がらせや迫害は当たり前だったし、ギルドもひどかった、、、俺らギルドの奴隷みたいな感じだったわ、、特に俺は新人だったからな。」

「お気の毒だったな、でも今が良くなってよかったんじゃん。あのままだったら、な?」

「だよなぁ、、まじ怖くて想像もできねーよ」


「俺はゴーミだ、ゴンザールに入れなくなったんで、ゲスザンスに入ってドラゴニアに行こうとしたけど、邪魔されてなー、ドラゴニアに入ろうとして殺害された冒険者も多かった。だからこっち経由でドラゴニアに行こうと思ってたんだけど、ここも良くなったってんで、来たらこんな感じで良いし、まぁここでいいかな?ってな」

「あ、俺も似たようなもんだ」

「おれも」

「おれも」

「わたしも」


「おれはもともとここの国の南のダンジョンの方専門だったけど、、きな臭くなって逃げたら、その後に領都が壊滅って聞いて、、ギルドも当然無いだろうから仕事にならねーし。で、ここに流れた」

「あ、俺も、あのダンジョンよかったよなー」

「ああ、危険少ないのに結構取れるし、何よりあの宿が良かった。」

「お、お前も常連?」

「なんだ、おまおえもか!!」


「あの宿って、森の入り口の?」ユータ

「ああ、おまえも知ってるのか?」

「うん、うちの宿だった。領主が無茶言ってきたんで引き払ったけど」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」冒険者たち

「ウチの宿、ご利用ありがとうございました!。」ユータ

「おう、ありがとな。皆のおかげで繁盛してた。でもゴメンな閉めちゃって」ドーラ


「あの後ひどかった、、、」

「ああ、あの領主が始めた宿はひどかった」

「そんなに?」

「ああ、あれのおかげであのダンジョンに行かなくなった者、多いぜ?」

・・・・・・・・


「皆、メテオの被害受けなかったんだ?」ユータ

「ああ、あったらしいな、メテオ。でも、まともな冒険者は、そうだな、あの宿が無くなって少ししたらあの領地を見限って徐々に他に移っていったよ。残ったのはギルドにくっついていたゲス冒険者たちだけだから、きれいに掃除されたろう。いいこった。」

「ああ、助かったよ、掃除してもらって」


なんかワクワクしてきたドーラとユータ。


「皆、今ここにいるってことは、今日は稼ぎに出ないんだな?」

「おう、今日はやめとくわ」

「おれもー、なんかこう話しているほうがいいかな」

「ん、今まで話したことなんか無かったもんな」


「んじゃ、今日は俺、なんか気分いっから俺のおごりだー!飲み食い自由!!飲めー!!クエー!!」ドーラ

「「「「「おーーーー!!!!」」」」」」

やっぱラッキーー!!

こっち来て良かった!

今日は朝からなんかあると思ってた!

茶柱たったしな!!

黒猫いたしな!

違うぞ!


北の国境の一つ前の小さめな街。

なんか、ドラゴニアみたいな雰囲気を感じられた。



自分達のやることに信念はあった。

けど、やっぱり、どっかに不安はあったみたい。

と、ユータもドーラも自分の心の中で思った。

その不安を解消してもらい、しかも自分達の行いを喜んでもらえた。

すごく嬉しかった2人。

その不安の自覚なくとも、不安の解消を理解できていなくとも、こころが晴れやいだのは彼らのおかげだった。彼らと話せてよかった、と嬉しかった。

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