第百話 訊いてみた


日本のユータの実家

漫画を読んでいたドーラが突然いい出した。


「なんで救う必要ゼロの奴等のために命掛けて闘うんだよっつ!!もう洗脳としかっつ!!怖いわ!」

と。


何読んでんだろ?

「何でも一緒だよ。どれもこれもさー。

大切なかけがえのない仲間たちを助けるならば当然だが、身も知らぬ、しかも善人でもなく善人の振りしてホントのいい人を迫害したりその迫害を見ないふりしたり、それどころか陰で被害者の悪口言って自分を正当化したりするような社会の害悪どもしかいない社会を守る?キチガイなのかなぁ?極度のドMなのかなぁ!!

なんで誰もそれがすんげーおかしいとか思わないの?!!」


一体何読んでるんだろう?

「だーかーらーあ!、どんな作品でも一緒。敵にそういった害悪を全部駆逐して世界を綺麗に掃除してもらってから、敵を倒せばいいじゃん。そしたらその後は人間としてまともな者たちだけのまともな人間社会が作れるだろ?

俺らがしていることと、結果は同じだろ?」


少し考え、、

ポン!!、と手を打つユータ

「ああ!そうだね!!」

「やっとわかったか!!、こーゆー、いかにも正義ですと言ってやっている奴等のほぼ全部が、世の害悪を残すためにガンバッちゃってんだよな。

古い漫画の主人公たちのほうが余程わかっているよな。つか、古い漫画の主人公と今の漫画や小説の主人公達を闘わせてみたいな!

今のは脳みそ花畑なんで、ひ弱な自分が不利になればすぐあいてを卑怯呼ばわりするとかだろーなwww」


まぁ、、そーだろーねー

そう思うと、、、


「あれ?敵しかいなくない?」

「まぁそんな感じだな、おまえんとこの高校の先生とかは違ったけどな。見てみぬふりなど全くしなかったし、悪いことは悪いっていう善悪の基準が俺と似たようなもんだった。この世界ではめったに見ないけどな。」


「・・・市さんも、最初はあっちだったんじゃ、ない?」ユータ

「おう、もろ善悪基準が全くできていなかったな。都合にあわせてころころかえるこっちの者達のデフォそのものだったなー、結構マシになってきたけど。向うに住めば良くなるけどな、あいつなら。」


「移住、聞いてみようか?」

「・・・・ほぼ、ゼロからだぜ?向うに行ったら。、、言わない親切、ってのも、あるんじゃね?」ドーラ

あー、そういう機会をあげないほうがいい、か、、、


「まだ子供のうちなら、どうにかするだろうけど、、」ドーラ

もうおっさん入りかけだもんなー市さんは、、

「だろ?」


「もし、こっちの世界を支配できるとなったら、どーする?ドーラは」ユータが訊いてみる

「いらね。こっちは遊びに来るから面白いの。あったらいいな、ってモノが買えるからいいの。そんだけでいいの。」ドーラ

「まぁ、、そうだよねぇ、、」

「長く住むのは、嫌だな。」

・・・・・だよねぇ、、


「んじゃー、タカは?」

「あいつは、まだ自分で自分の人生に責任持つってこと、わかんないだろ?」ドーラ

そうだねぇ、、、

「・・・でもこっちだけにいたら、、」

「ああ、いつまでたっても、、だなぁ」

「なぁ、」「ねぇ、、」


あ、どーぞどーぞ、いやドーラから、、

「んじゃ、、訊くだけ、訊こうか、、ちゃんと説明して、理解させて、な」

「うん、やってみようか?僕らが、タカはわかってないと思えば、また今度の機会に、ってすればいいよね」

「そうだ。」


で、

卒業まであまり学校行かないでいいからバイトに明け暮れているタカに連絡し、明後日の休みの日に来るという。

どーせなら、市にも聞かせよう、というドーラの意見で、市さんの道場で待ち合わせ。もちろん市さんにも連絡した。



暇なので早めに行ったら練習生が居たのでドーラが稽古つけてやる。

ドーラの手を抜いた、捌きや打撃の速度を経験するだけもかなり違うのだ。立ってられなくなるまで続ける。集中的に攻撃させるので、そう続かない。他の者がやってるときに休み、また順番が来たらやる。それを3度ほど。それ以上は「無意味だな、疲れすぎだ」と、ドーラ。


いつの間にかタカもその中に入っていた。ドーラはタカには速度を幾分上げて対応していた。

もちろんそれは他の練習生達が見てもわかる。

自分もそのうちあそこまで、と思っているのだろう、生徒達の目は真剣。見て取ろうという気構え。

ゴミ達が居なくなって、真面目な生徒たちの足を引っ張る害悪がなくなったからだ。


最後は市。

初心者の子達には見えないかも知れない突きなどたまに出す市。

「速くなったなぁ市も」

・・・・

返事もできないくらいに集中している市

ドーラはいつもより少し速い打撃を寸止めで幾度か与え、市もそれを見て覚えようと。


技量がわかったら、後は将棋のように詰みまでつめていく、ということもよくある。受け手はそらすことがなかなかできない。一手ソラせれば、逆にできる可能性も無きしはあらず、の場合もある。技量の差的にどうにかなりそうな場合は、だが。


それでも市は10分ほど保ち、へたり込んだ。


よーし、今日はここまで。帰って風呂入ってメシ腹いっぱい食って、寝ろ。夢の中で今日の稽古を思い出して何度もやってみろ。

と、ドーラがムリ言うが、それをもう今はムリだと思う者は少ない。

やってる者もいるから。

そして、効果は無いこともないのだ。



市とタカがシャワー浴びて着替えてきた。

練習生達がいない道場で、座り込んで話を始める。


「おまえら、向こうに移住できる、となったら、どうする?」ドーラ

「まず、知っておいてほしいのは、向こうではゼロからになる。幾分魔力を使えるからと言っても、それは向こうの一般人と同じレベルだ。そして、向こうのフィジカル戦闘は半端ない。基本は剣技。

もちろん、同レベルの者達と一緒に教えてもらえる。子どもたちに混じることになる。

そして、最も重要なのは、こっちに戻ってこられない。だ。」ドーラ


「今答えを出すのも難しいことだ。考えておけ。その気になったら、連れて行く。

ただな、もし、俺らくらいの魔力を持てるようになったら、俺らと同じ方法でこっちに来ることも可能になる。けど、それは、努力で可能なレベルではない。」ドーラ


「あのドアは使えないんだ」タカ

「ああ、もし移住となったら、その一度きり使う。あれは、この世界にも向こうの世界にも危険なんだ。俺とユータが使いこなせるようになればいいんだが、、いつになるか全くわからん。もちろんすぐになんてムリだ。何十年先になるか、、」ドーラ


「でも、もし今回行かないとなっても、また気が代わるかも知れないだろ?そんとき言えばいいから。そう重く考えるな?」

「でも移住だからねぇ、、」ユータ

まぁな、、とドーラ


「市も、タカも、このまま行けば10年後くらいには格闘技で世界を制するくらいになるんじゃないか?魔力使える奴なんざいないんだから。」ドーラ

「・・・・・」市、タカ


んじゃ、おれら帰るから、とドーラとユータが帰ろうとすると市が飯食いに行きましょうと誘ったが、

「いや、今日はいいや、、おまえら、いろいろかんがえてみたいだろ?」と、断った。



帰り道、、

「なんかあれだな、、今日はぱっと派手に魔法でも使うか?」ドーラ

「いいね!半分くらい使ってもいいかな!」

「まぁ、、充填してある魔石、全部持ってきているよな?」

「まかせて!」

「んじゃ、いんじゃね?」

またあの洞窟で寝てりゃー補充されるしな、と思うドーラ。


ユータとドーラは空高く飛んで、日本中を見て回った。

また、転移で各国の名所とかにも行ってみた。

さんざん色々見て回り、でも数時間後にはちゃんと家に戻って夕飯を食べていた。


2人共、その日はぐっすり眠れた。

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