第六十五話 ドラゴニアとゴンザール
ダンジョン側の街にどんどん人が入ってきた。ゴンザールからだ。
今のところは主にゴンザールの食糧事情を改善するものだ。
ドラゴニアの土地は元大森林の一部。土は肥沃である。生産性はかなり良い。しかも大規模農業。
美味しくよく育った野菜がとても安く手に入る。しかも船に積み込むための人工(にんく)も安く、船賃は無料。よって主な経費は、ほぼ船から降りたあとのゴンザール国内での荷馬車賃のみ。ほぼゴンザール国内で買い込んだのと似たような運送費のみ。船賃が無料はでかいのだ。
元々ゴンザールでは魔物の森は開拓しにくく、海べりは塩気が多い土地なので農地が少ない。
ゴンザールの農民の多くはドラゴニアダンジョン側の街の農地の貸与を望んだ。
ドラゴニア国内生産分は、余剰分を販売するだけなので、まだそう多くはなかった。また、ダンジョン側農地に手をかけるほどの人手もまだなかった。なので、ゴンザール側でやってくれるなら助かるというものだった。土地だけドラゴニアを使い、生産と消費はゴンザールとなるのだから。
ドラゴニア国内での余剰分は、ダンジョン側の街の商店や商会で販売した。
さほど多くは無いが、ドラゴニアにとってはお金が手に入る機会だった。
「そろそろ、うちでも硬貨を作るか?」ドーラ
「そう簡単に作れるものでもないんじゃないか?」ガンダ
「んー、、ダンマスに頼めば教えてくれると思う、、」
でお願いした。
ドラゴニアの邸の一角で、幾つかの鋳型にそれぞれの金属を流し込む作業ができるようになった。
鋳型はドーラが石から魔法で作った。素材の金属は金、銀、銅なので、鉄などに比べれば温度は低く済む。
それでも作業は危ないので、ドーラかユータが魔法で作業することになった。
それぞれの金属の含有量はゴンザールと同じにした。価値を同じにしたのだ。
金属は、ドーラが探すのがうまい。それをユータが転送で集めてくる。精製しなくても純度の高い金属が集まる。
釜で溶かし、鋳型に流し込み、冷やして抜き、バリを取る。
お金を作っても使う場所が殆どないが、国家としたら、自国のおかねを作れる、もっている、というだけで違うのだ。
ダンジョン側の街が3割ほど埋まった頃、ドラゴニアの者達とゴンザールの者達で、中間の街に行き、開発計画を作り始めた。
ここには農地のための土地は作っていない。ここは冒険者のための街にしようと思ってドーラとユータが作っておいたのだ。
なので、ドラゴニアとゴンザールで2カ国共同経営の冒険者ギルドを立ち上げた。職員は主にゴンザールのベテラン冒険者達。
ゴンザール国内にはもう各国にあるギルドが出ているので、それが在る場所には出さない。問題視されて揉め事を起こされるから。
だが、ゴンザールの荒れ地のダンジョンの入り口から西側は、ドラゴニアゴンザール冒険者ギルドの担当とした。
ドラゴニアがかかわらねば、荒れ地とその西側に入れる者などいなかったのだから。
既存の冒険者証を提示すれば、そのままドラゴニアゴンザール冒険者ギルドの冒険者証を作ってもらえる。
新人は教育を受けられる。冒険者としての知識と、剣と魔法の研修を受けられる。
銀月と満月の者達が、多くの新人たちが最初の頃に消えていっているのを知っているから。そうさせないために、研修を始めた。
「強い冒険者が多くなったら、ここの森に冒険者用のダンジョンを作ってもいいですよ」
とダンマス。
冒険者が弱いと、魔獣が多くで過ぎてしまうことがあるそうだから。
その見極めはダンマスがしてくれると言っていた。
いずれ、ここは冒険者用ダンジョンの街、となるのだろう。
ゴンザールの宿のベテラン従業員達がこぞって、独立してここに宿を建てることを希望した。
最初はさほど冒険者も多くはないだろう。が、強い魔獣が多いので、収入は増える。
そのうち冒険者を辞めて、ここやドラゴニアのダンジョン側の街で商売をしたりできるかもしれない。
ドラゴニアが領地を広げる時、農地を貸与してもらえるかもしれない。そういう期待もできる場所でもあった。
ゴンザールもドラゴニアも冒険者を低く見ない。誰も見下さないしバカにしない。
それだけでも冒険者達にはどんなに居心地がいいか。
ましてや、ドラゴニアはドラゴンが王の国で、国民のほぼ全てが孤児で、今まで一人も欠ける事無く、皆幸せに暮らしていると言うではないか。皆仕事を持ち、読み書きもできるという。おとぎ話のような話だ。
ゴンザールだけだって、ゴンザールに来るまでここまで居心地の良い国が在るなんて信じられなかった。皆半信半疑でゴンザールまで来たのだ。
そして、今、ゴンザールの同盟国が、更に、凄く、まるでおとぎ話の国、というわけだ。
冒険者は、大半は孤児か、田舎で居る場所がなかった者達だ。
ドラゴニアが本当に聞いたとおりと知った時、皆、自分を肯定された気持ちになった。
ドラゴニアの皆と、ゴンザールの王様や貴族たちは、自分たちがそこまで冒険者や国民から信頼されている、好かれている、敬意を払われている、などと露ほども思っていなかった。
自分がすべきことをしている。ただそれだけでここまで来たから。
だが、それが、今の信頼を作り上げてきたのだった。
武力もさほど無い。金もないゴンザール王。でも、これほど国内の者達に信頼され愛されている王族貴族は他にはないだろう。
それが、今、ドラゴニアという、もしかしたら最強かも知れない国と国交を結び、更に最近同盟になった。(中間の街を共同経営にするために、どうせなら、と軍事・経済同盟にした)
近隣他国にしてみれば、あっというまにそうなってしまったと見えるだろう。
ドラゴニアはゴンザールと同盟になり、ダンマスとは家族同様になった。ダンマスの2つのダンジョンが同盟国みたいになっている感じだ。更にダンマスは増やす予定な様子だ。
ダンマスの好意は、ダンジョンを作ってあげる、増やしてあげる、なのだろうか?
「ユータとドーラのおかげで魔力有り余ってるんで、いくらでもダンジョン作れますよ!。敵国ができたら、そこに100個位ダンジョン作って、魔物たちにその敵国を乗っ取らせましょうか?」
とか言っている。
好意ではない場合でもダンジョンを作る様子ですw。
で、なぜそこまで魔力があまっているのか?
「特にユータがそれほど使わない。どんどん中から湧いてくるはずなのに。ばんばん使えと言ってるのに。なので、余剰分をどんどんすいとって使って(ユータの世界で)あげてるんです。じゃないとまた危ない目にあうからね(この世界が)。」
とダンマス。
もしドラゴニアの敵国ができたら、ドーラとユータが2人で殲滅するくらい魔法を使うのがいいだろう。
ユータのどこでもいけるドアはよかった。あれは結構ユータの魔力使ってくれた。でもユータにしてみればさほど使ってるようには感じなかったろうけど。それでも常時使うってのがよかった。
またあのようなものをいろいろ設置すれば、ユータの魔力も使うことができていいだろう。
このように、ダンマスはユータの強力な魔力が脅威になると見ているようだ。
ダンマスの言うことは、その経験の多さから、まず間違っては居ないと見られるものなのだ。
「最近、こっちで特にやることないな」ドーラ
「うん、お手伝いくらいだねぇ、、」とヒモノをひっくりかえしているユータ。
周囲は見渡すほど、干物の物干し台が遠くまで並べられている。
堀が多くなり、魚も増えた。毎日200枚くらいヒモノを作ってもまだ魚の増えるほうが多いくらいだ。
だからダンジョン側の街の食堂で「一夜干し定食」をやっている。
一夜干しだからまだ柔らかい。干しが足りないので保存食に成らないので遠くに持っていけない。だから一夜干しを作っているここで食べるしか無い。オイシイので人気だ。
野菜の切れ端を漬けた漬物と味噌汁とご飯で定食。
こっちではそれでも豪華。一般的にはおかずは一品のみでご飯を食べる。別に汁物を付けるとかしない。
野菜炒めなら、それとご飯のみ。が、一般的なのだ。
目玉焼きなら、それとご飯のみ。
なので、一夜干し定食はダンジョン側の街での名物定食みたいになっていた。
だからユータは責任感丸出しでガンバッてヒモノを作る。
まぁ、実家にも持っていくし、、最近は4−500枚位持ってっている。
市さんとこでも、「アレばいくらでも買うっていう人多いんで、、」というので、100枚くらい持ってってる。
ーー
最近、領地内では自転車が流行っている。
ドーラがどーしても持っていきたい!!っていうんで、ママチャリ、マウンテンバイク、3輪チャリンコ、を買って持って来てみた。
とりあえず子どもたちにはオオウケだった。皆大笑いしながら爆走していた。
体力半端なくあるからね、こっちの子たち。みんな毎日皆肉体労働しているし。体力どころか魔力もかなりつけたし、、、。
なので本気になったらすぐ壊しちゃうので、気をつけて爆走して楽しんでいた。
が、
「もっと欲しい。とても便利」
と言われては仕方がない。
ヒモノの売り上げて向こうのお金は使いどころがなかったのでちょうど良かったのかもしれない。
それぞれ100台づつ仕入れてきた。ストレージは便利だなぁ、、とこういう時に本気で思う。
「貸し自転車屋」の話を子どもたちにしたら、やりたいという子が数人出てきた。
なので、ダンジョン側の街に店を出した。とりあえず各種10台づつ。
子どもたちに修理の方法とか教えた。
魔法でもいいけど、物理方式で覚えることは必要なので、なるべく魔法を使わないほうがいい、とおしえた。
「魔法は、魔法でしか出来ないことをおもいっきりやる。んで使い切る」
ことを徹底させるようにした。
転移とか、転送とか、念写とか、念話とか、飛行とか、大規模土魔法とかの大規模魔法、そんでもまだ余ってたら、空高くにバクレツを撃て、と。なので、夜子供達の寝る頃になると、結構夜空にドンドン!!バンバン!うるさい。
ドーラが「花火ってのがあってだな、、」
と、教え始め、、それから子どもたちの寝る間際は花火大会の様相になってきた。
それにはダンジョン側の街の人たちは大喜びだ。
ちなみに、王様と領主様は、かわりばんこにダンジョン側の離宮に来ている。
王様がダンジョン側に居る時は、領主様が王都に行って、王の側近たちと一緒になって国政をみているそうな。
なので、この花火を楽しめている。
皆、やっとのんびりする時間を持て始めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます