第五話 夢じゃない!


夢でもみたのかなぁ、、、今が夢なのかなぁ、、、

ベッドにごろんとなると、なんか邪魔、、


あ、、腰のベルトに剣が差してある。で、左腕を見ると、腕輪もある。

・・・・


勉強机の上を全部かたして、剣を載せる。

きれいになっている、サビなどどこにも見当たらない。柄に埋めてある宝石も輝いている。

「磨いたっけ?休憩時とかに、無意識にやってたのかなー、、」


腕輪もはずして机の上に載せる。ふむーーー、、、

手にとってよく見る。

こまかく彫られている文様の中に土のひとつすら付いていない、、、


あれだ、、

「使っていると、勝手にきれいになってくれる?、、まっさかぁ!あっはっはっはっは・・・

んじゃねーよ、、」

そうだ

そーとしか考えられないよな?ボクの小さな灰色の脳みそでは。

かと言って、今ここにはこんなモノについて相談できる相手は居ない。こういうことを相談できる相手は、みんな向こう側だ、あの洞窟の壁の向こう側にいる。


もしくは、やっぱ、穴に落ちてから気絶してて記憶が無く、その間に剣と腕輪をプロ並みに磨き上げ、うちに帰ってきて玄関の前で気がついた、、とか、、、あっちのことは全部夢で・・

怖すぎ、、だよね、、やっぱ却下だね、、


無意識に左手が勝手にポケットをあさり、干し肉を取り出して口に運び小腹を満たす、、、

3つ目を食べ始めた時、、

あ、、、

やっと干し肉に気づく。


やっぱり、あれは、あったんだ。

ボクは向こうに居た。

彼女達と、彼らと会って、知り合って、一緒に魔獣と戦った。

事実なんだ、、信じられないけど、、

左手の干し肉を見つめた。


ーー


あれから数日。

毎日考え込んでいた。特に誰と話すことも無い学校では。

すぐにでも戻ろうかと思った。けど・・・怖かった。戻れたのはたまたまだったのだから。

マキ達は、僕を探したあと、見つからずに諦めて進んだろう。

そう考えて、自分に折り合いを付けたかったのかも・・。



不思議なのは、

向こうで2回眠った、多分2晩過ごしたわけだ、、

でもこっちに帰ってきたときは、行ったときのそのままの時間。

母さんは「さっき出てったばかりなのに、」と言っていた。

それが一番理解できない、理由の想像もできないことだった。


そして、なぜボクが戻ってこられたのか?

洞窟の壁を超えられたのはなぜ?


洞窟から家の玄関までどうやって行ったの?

しかも、いつも一緒だったスラえもんが一緒に来ていない。、、残ったのか?弾かれたのか?溶けちゃったのか??!


授業が終わった後、考え込みながら自然にうちに帰っていたけど、自分で帰った、という意識はあった。アレとは違う。

途中、誰かに話しかけらてたような気もしたが、そういう細かいことは覚えていないけど、、、

向こうに居たときのこと、こっちから向こうに入ったときのこと、などの状況をできるだけ思い出していた。

それでどこになんかがあったのか?を、見つけ出したかった。理由がわかれば、向こうに行くのも怖くない。



学校、休憩時間

「ユータ、どうしたの?見てたけど、ここんとこ数日もぼーっとしっぱなしだよ?」

友人のタカ。

小声で、(何話しかけてきてるんだよ、まずいだろ、あっち行けよ、、、)

「ああ、大丈夫だよ、ユータがここ何日も反応無いんで、奴ら飽きちゃったみたい。今はほら、あの子をいじめの標的にしちゃってるよ」

見ると、ボクに似ているけど、話したことが無い奴がいじめられている。

・・・なんだろう、、ホッとしているけど、それがムカついて、でも、奴らにもムカついてもいるようだし、、みんなにもムカついているようにも思える、、、

でも、ボクは何も出来ない。


「うーん、、、」

どう言っていいのかわからないし、言っても信じられないだろうし、、他の者に知られるのも嫌だし、、

「ここんとこ、ちょっとあまり寝ていないから、かなぁ、、」

ごまかすのがベストだな。


「ゲーム?」タカ

「まぁ、本も、、」

「居眠りしてなきゃ問題ないか、、、」タカ

予鈴が鳴った。



放課後

今日も穴に来た。

帰還できた翌日の放課後にここに来たが、今は穴が小さくなっててとても入れる大きさじゃなくなっていた。ロープはまだ下に向かっていた。ロープは回収した。

これじゃ、向こうに戻りたくてももうムリだ。

などと自分に言い訳を思っていたら・・


・・?

目をこすって、よく見る、、、

穴の、縁、、なんか、、うごめいている???、、うにっ、うにっ、、ってときたま、、、

・・・

棒を拾ってきて、、つんつん、穴の縁を。

内側に少し入れて、外側にぐっと、、

ゲッ!!

すすーーっと、あ、穴が、、引っ張った方向にそのまま、うごいた、、、

???


またやってみる

すすすー、、

ぎゃくに、

すすすすーー、、、元の場所は何もなかったような感じに戻っている。

広がるかな?両手に棒を持って、穴の左右に入れ、

・・・ぐいっ!!

すー、、

「入れるじゃん!!・・、、・・・」

今度は穴の外側の土んとこにぶっ刺して、穴の縁を内側に押して見る

すすすすーーー

どんどん小さくなる!!!

手のひらほどになった。、、、、

穴だった場所の地面を触ると、普通の地面、、全く普通の、、、

・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・

ボクは教科書を出して、穴の横に置く、、

穴を内側から教科書の方に押すと、、

すすす、、

「やたっ!!!」

「穴教科書ぉー(ドラの声で)」

教科書を掲げる!!

あ、、やばいかな?と一瞬思ったが、教科書を縦にしても穴は滑り落ちることはなかった。

穴だけが、、地面に乗っかっていた、んだ、、信じられない現実だけど、、魔法かなんかか、もしくはなんかの生き物なのか?まったくわからないけど!


穴教科書を慎重にカバンに入れ、急いで家に帰る。




自分の部屋の勉強机。この引き出しには鍵がかかる。

一番広い引き出しの中身をベッドのうえに全部出す。ついでに窓開けて引き出しのほこりを全部捨てる。

「さて、ここからだ、、、」


床に引き出しを置き、

カバンから穴教科書を取り出す。

穴教科書をななめにして、引き出しのはしに。で、鉛筆で穴を引き出しの中央に、、、すすすすすーー。

で、鉛筆とシャーペンで

ぐいっ、っと、すすすーー、

穴が引き出しいっぱいに広がった。

引き出しを勉強机に戻す。

引き出しを出したり閉めたり、、うん、問題ない。


あ、、あれじゃん、、、、ノラえもんの、つーか、のり太の勉強机の引き出し、、

「まんまじゃんwwww!!」



夕食までまだかなりの時間はある。

ボクは茶色っぽいズボン、焦げ茶の荒い木綿のブルゾンを着て、

剣には、黒い布がなかったので黒っぽいTシャツを巻きつけて腰のベルトに差し、左手に腕輪を付けた。

ロープを机の足に結びつけた。

部屋の扉の鍵をかけた。

誰かが入ってきて穴にはいったり、引き出しを処分したり、もしくは、大事になったり、、なんて絶対やだ。


今度の軍手は滑り止めのついたやつ。

ボクの頭の中では、好きなゲームのオープニングががんがん鳴り響いている。


では入ろうか!


あ!部屋にあった菓子パンや菓子類、小さいペットボトルをあちこちのポケットに詰め込んだ。



では、入ろうかっ!!!

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