第17話:方伯
「キャメロンお嬢様、今日からはメイトランド方伯夫人とお呼びした方がいいですか、それともメイトランド女方伯閣下とお呼びさせていただきましょうか」
ブレンダが半分笑いながら冗談を言ってくる。
この三カ月でこれくらいの冗談を家臣領民の前で言えるくらいには打ち解けた。
いや、ブレンダ達五人とは国を逃げ出す前から打ち解けられていた。
問題は国を逃げ出す途中で助けた者達や、皇国に来てから雇った者達との距離感をどうするかだったのだが、まあ、ある程度満足できる所に落ち着いた。
「そうね、少なくとも貴女達五人はキャメロンお嬢様かお嬢様と呼んで。
メイトランド城伯夫人やメイトランド女城伯閣下なんて呼んだら、その場でぶっ飛ばしますからね」
「「「「「クスクスクスクス」」」」」
その場にいた戦闘侍女達がこらえ切れずに笑いだした。
うん、いい関係が築けているね。
ブレンダ達が厳しい目で選抜してくれたから、腕も信用もある護衛が雇えた。
まあ、傭兵や冒険者を続けるなら他所に比べて五割増しの報酬にしたし、家臣を望むなら世襲権のある騎士や徒士にしたからね。
よほどの事情がなければここに留まってくれるわ。
「それにしても皇太子殿下は爵位も領地も弾んでくれましたね」
確かにブレンダの言う通りだ。
私は、皇国からもらえる爵位は男爵程度を考えていましたし、領地も城周辺だけだと思っていたのですが、最終的に決まったのは城伯と未開地全てでした。
まあ、側近衆は予想通り男爵を考えていました。
ですが側近衆の私への背信を聞いた皇太子殿下が激怒されたのです。
まあ、考えようによったら、側近衆が皇太子殿下を騙したのですからね。
殿下のあまりの怒りに慌てた側近衆が爵位を子爵に釣りあげたそうですが、その姑息なやり方が皇太子殿下の怒りに火に油を注いでしまったようで、事は皇国の威信を損ねる背信行為だと、皇帝陛下に直談判する所まで行ってしまったそうです。
皇太子殿下は、このまま私を辺境に追いやっては皇国が威信を損ね大陸中の笑い者になると言って、頑強に私を皇都に呼び戻して守護する言われました。
辺境に止めるのなら辺境伯の地位を与えるべきだとも主張されました。
皇帝陛下も私に何かあれば皇国の威信を損ねる事を認められ、側近衆を厳しく叱責されたそうですが、同時に私の資金を利用する側近案には賛成されたそうです。
事は私にどのような待遇を与えれば皇国が恥をかかないなの一点に絞られました。
流石に辺境伯の地位は与えられないという意見が多かったのですが、皇太子殿下がなかなか譲られず、方伯、伯爵、城伯の三つに絞られ、最終的に皇太子殿下が粘ってくださって、中間権力者の介入がなく独立裁量権が強い方伯に落ち着きました。
「そうね、でもその分責任は重いけれどね」
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