第15話:好意

 私達は辺境にある皇室の離宮を貸していただくことになりました。

 側近衆には私を皇太子から引き離したい理由があるのでしょう。

 皇太子は最初難色を示していましたが、結局は側近衆に押し切られました。

 その代わりと言っては何ですが、離宮までの旅の護衛や離宮に着いてからの護衛に関しては、側近衆が困るほど大部隊を用意してくれようとしました。


「皇太子殿下、旅の間の護衛はありがたくお受けいたしますが、離宮に着いてからの護衛は遠慮させていただきます。

 監視として付けると仰られるなら喜んでお受けさせていただきますが、そうでないのなら、皇都を出るのなら羽を伸ばしたいと思っております」


 私は率直な気持ちを話しました。

 正直私は規則や慣習に縛られるのは大嫌いなのです。

 公爵令嬢であったときは我慢していましたし、皇都でお世話になっている間も我慢してきましたが、辺境送りになるのなら自由奔放に過ごしたいのです。

 魔力や魔術ならこの世界最強だという自信がありますから、人目を気にしないでいられる場所なら無敵だと自負しています。


 側近衆も私の味方をしてくれました。

 話の端々から想像すると、側近衆は私の財力を知っているようです。

 知っていてそれを利用しようと考えているようです。

 更に利用しようとしている事を隠そうともしていません。

 ギブアンドテイクだと伝えたいのか、それとも完全に下に見ているのか、側近衆一人一人の性格が分からないので判断できません。


「……そうか、キャメロン嬢が皇都を息苦しいと思っていたのなら、離宮に行くのなら伸び伸びとしたいと思って当然だな。

 分かった、私が余計な護衛をつけるは止めよう。

 その代わりキャメロン嬢自身が、私の面目を潰す事がないように、雇える限り最強最大の護衛を雇うのだぞ」


 皇太子が心から心配してくれています。

 ここまで来てようやく側近衆の心配が理解できました。

 いえ、私に刺客を送ってきた貴族達も気がついていたのですね。

 私だけが、皇太子が好意を持ってくれている事に気がついていませんでした。

 我ながら何と鈍感なのでしょうか。

 これではいずれ側近衆からも本気で命を狙われそうです。


「はい、できる限り多くの優秀な護衛を雇わせていただきます。

 既に数だけは子爵家と同等の兵士を召し抱えております。

 装備に関しては皇国正規軍に匹敵する装備をそろえております。

 以前から優秀な傭兵や冒険者に彼らを鍛えさせようと考えておりました。

 この後直ぐに傭兵ギルドと冒険者ギルドを訪れようと思っております」


 できるだけ早く、できるのなら明日にでも皇都を離れよう。

 触らぬ神に祟りなしだ、もう皇太子を頼るのも近づくのも止めです。

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