第20話
一週間ぶりの講義はクズ野郎と同室だったが、隣にコイツが居てくれるから安心して席につく。
多くの学生にとっては数合わせの単位だが、俺はこの講義がお気に入りなのでもう二度と逃したくないのだ。
コイツはどうやら俺の知らないところでクズ野郎に脅しを入れてくれたらしい。
この図体で凄んで掴みかかったら誰でも怖じ気づくだろう。
気が付けば学内から姿が消えていた。
激動のあとは穏やかな日々が続き、やがてコイツとの別れが近付いてくる。
「もしやと思ったけど、やっぱり手伝いは必要ないみたいだな」
元々こざっぱりとしていた部屋が段ボールだけとなり、ガランとした空間が物寂しく写る。
「お前が居たら捗らないしな、汚部屋男子」
だから、生ゴミは散らしてないって!!
「最後の米だ、食おう」
鍋の蓋が開かれ、熱い蒸気が舞い上がる。
「俺が帰ってもちゃんと掃除しろよ」
ぱくぱく。
「お前こそさめざめ泣いてばかりいるなよ」
もしゃもしゃ。
「「うるさい、ばーか!」」
あはは!!
「丁度いい肘置きがなくなって寂しいなぁ」
もぐもぐ。
「そこまでチビじゃないしっ!こっちはやっと筋肉とサヨナラ出来て清清するわ」
むぐむぐ、むぐむぐ。
コイツとゆっくり飯を食うのもこれで最後。
たった数ヶ月なのに色々有りすぎて、これまでの人生を凝縮しても全く足りないほど濃密な時間だった。
大切な絆を幾つも示してくれたコイツには、きっと一生頭が上がらない。
◆ ◆ ◆
人々が行き交う空港。
「暇があったらたまに連絡してやるよ」
強がりがバレバレだろうが、これが今の俺らしいだろ?
「俺は暇がなくても連絡するわ、待ってろ」
上から目線を仕込みながら優しさを隠さないのはお前らしいな。
どちらからともなくハグをする。
しっかりと抱き締める腕と厚い胸板を忘れないように身体に刻み込む。
一瞬の愛より永久の友愛を教えてくれた人。
離れても心はいつも繋がっている。
寂しがることはない。
お前と出会えて良かった。
ありがとう、タケル。
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