第37話 今日も図書館が大好き

眠る前の読書は、小学生の時からだ。

私の子供時代からの家庭環境は、同世代から見ても悲惨だ。



厳しい父親には、何をしても本気で殴られて、父親が気分が最高潮に悪い時は、外に出されて、家に入れてもらえなかった。



母親は、父親にさからうのが怖くて、泣きじゃくる私をただ見ているだけ。



今の時代なら、少しニュース沙汰になることもあった。



そんな居場所のない子供時代から、私は図書館に土日に行くのだけが楽しみだった。



海外では死にたくなったら図書館へ行け、そこには先人達が残した膨大な知識と話さなくても良いさまざまな人がいる。と言う名言が今でも好き。



なので、私は死にたくなると図書館へ行く。



図書館の、少しカビた古い本の香りと新書の新しい香りと、老若男女問わずに静かに本を見る人々。



毎週のように通うのに、私は館内をひととおり本を見ながら歩く。



予約をした本と、たまたま目についた本を抱えてあいている席に座る。



ひざに本を置き、周りの風景をながめてから本を読み出す。



家に帰りたくない時は、閉館時間ギリギリまでいた。



大好きな優しい司書のお姉さんがいて、今のように自動貸し出しの機械がない時なので、一冊ずつバーコードを読み取る。



その間に、司書のお姉さんと短い話をする。



いつか司書になりたい。

そんな夢すらくれた女性だった。



夏は苦手だが、夏の図書館は大好きだった。弱めに流れるエアコンの冷たい空気、夏休みのため、利用者は逆に減る。



いつも以上に館内をゆっくり歩き、20冊以上は本を借りる。



いつもは、リタイアしたおじさんが座っている窓際の大きなソファーに座り、窓の外をぼんやり見る。



窓の上の小さなあいた窓から夏の香りの空気が流れてくる。



誰も私に関わらず、本と図書館だけが私に寄り添う。



そんな時間が好きで、私は本も読まずにぼんやりしていた。



一人だけれど、目の前には誰かが人生と時間をついやし、時代を越えても残る本がある。



司書のお姉さんが、返却された本を持って静かに歩きまわる。



ここも世界の1つだと思う。



図書館の雰囲気を満喫したら、私はそっとページをめくる。



新しい世界が開かれる。



誰かは言った、この世界が夢と思えば多少は生きるのが楽になると。



夢と同じくらい私は今日も図書館が大好きだ。




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