第28話 今日も箱が命

フィギュア好きの方なら、理解頂けると思う。



私のフィギュアとは氷の上を優雅に舞うフィギュアではなく、興味のない方には冷めた目で見られるが、好きな人は台座(フィギュアを置く台)のディテールまでこだわるホビーのフィギュアだ。



いつから集めだしたのか、どんなフィギュアから集めだしたのか記憶がない。



最初にフィギュアらしきものに興味をもったのは、小学校の時にお菓子についていた小さな猫の5センチくらいの置くおもちゃのシリーズが出て、友人と買ったのが最初の記憶だと思う。




それからは、あっさり興味がなくなり、20代後半までフィギュアの「フ」の字も考えなかった。



親が病気をし、私自身倒れてしまい家にいる事が多くなった時にパソコンで目についたのが某ネズミの国のオーロラ姫のスノードームだ。



家にいる事は、内向的でインドアで好きだったがさすがにストレスがたまり、自分のお金で購入。



届いたオーロラ姫は、森で動物達とたわむれるシーンを再現しており、まあ、クオリティーが高く、映画から出てきたようだ。(すでに、この時点でエンジンがかかった)




それからの記憶がない。





今まで書いたエッセイように、辛くて記憶がないのではなくアニメも好きだったため(基本、ダークなアニメばかり)かたっぱさはから、お財布の許すかぎり購入し、私の部屋は、フィギュアだらけになる。




今思えば、怖い部屋だった。どちらを向いても私が好きなキャラクターのフィギュアと目が合うのだ。




それから、人生が親の事で地獄になり1度いっきに手放した。




親の病気が落ち着きはじめた30代後半、少し余裕も出て(本当は余裕なんてない現実)某ネズミの国のフィギュアへの収集家の勢いを少し取り戻す。




ちなみに、20代の時に初めて購入したオーロラ姫のスノードームはフィギュアの価値を何とも思わない軍隊式の教育をする父親が通りすぎた拍子に落とされ、割れた。




父親いわく、「落ちる場所に置いた私が悪い」だった。さすがに、毎日見ては荒んだ人生の支えにしていたスノードームだ。



普段は泣かない私は泣いた。



お金で弁償してくれたが、番号入りの某ネズミの国のスノードームは発売個数が決まっており、在庫の値上がりで、とても手を出せない値段になっていた。




泣く泣く今でも諦めている。




ある程度、お金がたまり買えるようになると1年に1度か2度、購入して某ネズミの国のフィギュアを集め、アニメのフィギュアを集めている。




さすがに、たまり過ぎてある程度は手放してフィギュアケースに入るものと、時々、気分転換に交換する押し入れに入れているフィギュアだけを残している。



一緒に暮らす両親は、動物と本の次にフィギュアに愛情をそそぐ私におののき、指一歩ふれなくなった。



しかし、ある時、父親か母親がフィギュアが入っている箱を踏んだ。



「ふああああああッ!」

驚くほど、内向的な私にしては大声が出た。親がおろおろしている間に私は言っていた。



「箱もフィギュアの一部だから!」

ぽかんとする親の顔が忘れられない。



フィギュアが好きな方には、ご理解頂けると思うが、フィギュアの箱も商品の一部なのだ。



例えるなら、本が好きな人なら帯も大切にするように、料理が好きなら野菜の鮮度を気にするように。



例えが伝わりにくいが、とにかく大切。



箱は綺麗にとっておく。




今日も私はフィギュアだけではなく箱も命にしている。









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