第3話 run on

そうして、坂を下ったとこにある

小さなフラワー・ショップに着く。

店長は、静かに微笑みながら。

グロス・ブラックのエプロンが似合うその人は

長い黒髪を素っ気なく後ろで束ねた


細面の、どこかしら薄幸そうな美人だ。


でも、どう考えても採算が取れていないような

この店を、どうやって運営しているのか?


それに、僕へのバイト料もとても良いのだ。

(それはとても良い事だが)



いつも身綺麗で、上品そうな服を着て。


白い、Citroen Xantiaを静かに乗っている

不思議な人だ。



ちょっと年齢不詳、20代にも見えるが

まさかそんな事もないだろうと思う(笑)



僕は、センター・スタンドでMotoGuzziをパークすると

お店の中から音楽が鳴っているのに気づいた。


その曲は、Frank Mills and his orchestral の


確か....街角のカフェ、と言う曲だった。



さわやかなストリングスが、かわいい花によく似合う。


店の向こうの大通りを、路面電車が

ゆっくりと、緑の車体を傾けながら走っていった。


今日も、いい午後だ。



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