第8話 water

ほんの少し前の筈なのに


すごく遠い日だったような気がする


夏休みの始まる前の日。




それは、めぐの時間旅行のせいで

短い時間に、たくさんの経験をしてしまった


そのせいかもしれなくて。




「早く死んじゃうかも」(笑)

なんて、めぐは思ったり。





学校への坂道を登るのも

疲れてしまうような(笑)それは気のせいだ。




テニスコートのほうから


すぽーん、すぽん。と

テニスボールを打つ音が聞こえてきて。



「ああ、若いわぁ」と

すっかりおばあちゃんの気分の(笑)

めぐだったり。






テニス、ラリーを繰り返してた

うちのひとりが

打つのを止めて、駆け寄って来た。





「めぐー。元気?」と



長い髪を後ろでまとめた、スリムな

その女の子は



昨日、一緒だったリサ.....の

18歳の姿。





「ああ、おはよ、リサ。よかったね。」と

めぐは、21歳のリサに言うつもりで(笑)




ああ、そっか。


まだ、この日のリサは

大学進学のつもりだったんだ。





秋になって、おじいちゃんが天国に行って


それで、急に進学を止めるんだ。




それを知っているめぐは




「大学、行くよね」と言ってしまう。





リサは、テニスラケットを抱えて

爽やかな表情、で


「なに?へんなの、めぐ」と。




「あ、そうそう、ミシェルがね、

うちの高校へ来たいなんて言うんだ。


女子校だから無理なのに。変な子。」と

リサが言って、弟の、あのかわいい少年の

名前がミシェルだと言う事を

めぐは、なんとなく思い出した。




17歳で、あんなにかわいいんだもの。

14歳だったら、どんなに可愛いのかな、と



別に年下好みではないめぐにしても(笑)



可愛い男の子は、撫でなでしてあげたいと


思ったりするのも、自然な事で

やっぱり、女の子だから


可愛がるのは好きだもの。


愛でて、育てるのを

好むのは、女の子だけではなくて

生き物として、年少の者に

優しくして、群れ全体のためになる

行動をする。


正しい事、だし。




「ミシェルね、めぐが好きみたいなの。」と

リサは、どっきりする事を平気で言う。




めぐが、ちょっと、どきどきして

言葉に困っていると



「お姉ちゃんに憧れる年頃なのかな。

ま、わたしとしてはめぐが相手だったら

いいけど。

でも、めぐって年上が好きでしょ?」と

リサは、的確な観察(笑)。



さすがに女の子同士。





その、3年あとに

タイムスリップしためぐが

ミシェルの心を揺り動かした。


その原点は、ずっとずっと前にあったらしい

けど




そんな気持ちって、どうして

本人の知らないところで起こるんだろな、

なんて、この時のめぐは思ったりもする。




まあ、全部見えちゃったら

面白くないから(笑)。



ルーフィのご主人は、飽きちゃって

眠りに入っちゃったのかな、なんて。




めぐは思う。それは同時に


ルーフィが、恋についてあまり

情熱的でない理由であったりもするのだけど

それには、めぐは気づかない。







リサは、再び

テニスコートに戻る。


めぐは、どんなにか


「そのまま、大学に入って。

おじいちゃんは、悲しんでないの。」と

言いたいだろう。



でも、それを言ったら未来を変えてしまう

事になるから




言っていいものかどうか。




言ったら何が起こるのか、それも解らず

聞く相手もいない。





過去でなければ変えてもいいようにも思うが(笑)。



それは、筆者の思いである(笑)。








めぐは、なぜかゆっくりあるいて。




時間旅行をするようになって

尚更、時間の流れを楽しめるようになった。





その大切さをわかった、とでも言うのだろうか。






歩いて、学校の門を通ると



Naomiに出会う。

「おはよ」と。




そろそろ、進路に悩む季節のNaomiでもあるけれど。




まだ、進学するかどうか、決めかねている

Naomiであるらしい。




結果、どうして郵便局の一般内務職員に

落ち着くかはよく解らない。



Naomiにどんな夢があったのだろう、と

めぐは、3年後のNaomiの姿と

この日のNaomiをイメージの中で、見比べてみたりして。



でも、なんにも解らないのだけれども。





そして、めぐ自身の未来について

調べるのは、とても怖くてできないめぐ、

でもあった(笑)。



そんなものかもしれなくて。



教室に行く前、図書室に行くのは

いつもの日課。

理由はないけど、なんとなく。



図書室は、広くて静かで。

朝の雰囲気を楽しめる気がして

めぐは、好きだった。




教室に行くと、誰かがおしゃべりをしていて

それも楽しいのだけど




そうすると、朝の雰囲気が楽しめないようで


めぐは、図書室で静かに

過ぎていく時間を楽しんでいた。




始業前、誰もいない図書室に

今朝は、れーみぃの姿を見かける。





おはよ、と静かに挨拶して



めぐは、れーみぃの笑顔に



昨日までの、ハイウェイパトロールの

姿をオーバーラップさせてみて。





どうも、馴染めない(笑)のだけれども。





Naomiも、リサも、れーみぃも。




わたしたちの社会を守ろう。

そんな気持ちでいっぱいなんだ。





めぐは、清々しいクラスメートたちの

凛々しさに、心温まる。


めぐ自身は、なにか

出来る事はないのかなぁ(笑)なんて

思ってて。




図書館にいる事が、そうなのかなあ、なんて

ささやかに思うのだったり。








れーみぃは、変わらない長い髪。


白い夏帽子がお似合い。




麻の夏服は涼しそうで、スカートは

ひざ丈くらいなので、可愛らしく

それが、かえって愛らしく

色気を感じるな、と

めぐは思ったり。



大人っぽい奥ゆかしさのあるセンスは

、大切にしてあげたいって

ふんわりと思う。




理想のお嫁さん れーみぃ。

図書室には、誰もいなかったので

れーみぃと、めぐはふたり。



かわいらしいれーみぃは、めぐがみても

好きになっちゃいそう(笑)。




もともと、愛って感情は

生物行動学的なものだから



女の子を愛でるように出来てて。




生命を育む存在を、大切にしたいと

誰しもが思う。




女の子の愛らしさと、赤ちゃんの愛らしさは


認知科学的に同じ要素であったりもして

それは、人々の心の中にあるから


めぐが、れーみぃを大切にしたいと

思うのも自然。





その、れーみぃは


ハイスクールの、この頃から

お巡りさんになりたいと思ってたのかな、


なんて、めぐは思って。




れーみぃの手元の本を見ると


警察官採用試験問題集(笑)。



そうなのかなあ、と思って



昨日までの、白バイルックを

思い返してみる。




「司法警察官になりたいの」と



そんな事言ってたっけ。




法律を志す、でも、弁護士じゃなくて

みんなのそばで働く、司法警察官になるのは

なんとなく、れーみぃらしいなぁ、と



めぐは思ったり。




クラスメートの中でも、おとなしくて

しっかりしてて。




お嫁さんになってほしいなぁ、なんて

めぐは思ったり(笑)。



れーみぃをお嫁さんにするのは

ファンタジーにしても


ルームメイトにして、一緒に暮らすなら

楽しいな、と

めぐは思ったりする。



別に、家事をしてもらうとか

ではなくても



ふんわり、のんびりタイプの

れーみぃ、ふくよかなお顔と

きれいな長い髪を見ているだけで


幸せになれるような、そんな気がして

来る。




やっぱり、美の根源は女の子にあるのね、なんて

文化人類学の講義みたいな事を言わなくても


れーみぃと一緒だと、そんな事

思ったりする。めぐだった。





もっとも、れーみぃが

どう思ってるかは、別だけど(笑)。




でも、恋人が出来るまでの間は

なかよしで、いてもいいよねっ、れーみぃ?



と、めぐは、心で囁いた。




魔法使いめぐの、能力を使った訳じゃないから

その気持ちは、れーみぃには届かないし


無理に届けちゃうと、つまらない人生に

なっちゃいそうな、そんな気もして。




「あ、そろそろ、ホームルームかな。」と

れーみぃが言うので


めぐは、図書室でのしあわせな一時を終えて


クラスに向かった。



クラスルームは、にぎやかで

先生が来るまでは、ちょっと苦手な

めぐだったりもする。



本が好きな人々は、わりと

そういうところがあって。



心のなかに、好きな世界を

持ってい

るので


その世界の気持ちでいたい、って

思ってて



自分と関係ない言葉、情報は

ノイズにしかならないし



言葉って意味があるから

その意味に、思考が引きずられてしまう。





人間が、かつては

野生だった証であって



どんな情報でも感じ取って

危険から身を守る、そんな行動の

表れ。



行動科学的にも、それは正しく

単純な手続き行動でも、耳に関係ない

言葉が入って来ると、間違いが増えたり

する、と言う実験を

ずっと昔に、日本の角田さんと言う

学者が定説にしたくらいなので



言葉は、ノイズのなかでも強力。



人間は言葉で考えるから。




生まれたばかりの人間を、言葉のない

世界で育てると



知能が育たないと言う観察結果もある。


不幸にして、ジャングルに取り残された

赤ちゃんの観察である。




そんなふうに、生き物は

環境に適応するのであったりもして。



めぐは、本のあるところに適応。



Naomiは、郵便やさんに適応(?)



れーみぃは、規則性のあるとこに適応。




リサは、鉄道のような規律の世界に適応。





それぞれ、好きな環境を選んでいくのが

生きていく、って事なのだろう。





なんて、めぐが思ってる訳でもないけれど。




時間と言う、規則性を飛び越える事が出来るのは

魔法使いと、それと

夢の世界だけ。





夢で、もし


天国へも行けたり、過去や未来へ行けるなら


生きる事は自由になるし、

現在の社会にこだわる事もなくなる。




それは、とても素敵なことなのだろう。




そんな、時間軸の自由を得た

魔法使いめぐ(笑)は


ちょっと、罪つくりな存在だったかな(笑)。



ミシェルにとっては。




しかしそれも、運命だったりもするので



ふつうなら、お姉さんだった憧れの人が

クラスメートになって

現れる、なんて事は起こらないので



ミシェルにとって、素敵なな体験だったのかもしれなかったり。







ざわめいていた、クラスメートたちも


先生が訪れて、静かになった。


先生は、穏やかなおばあちゃんなので


そのあたりも、クラスメートたちが



信頼している理由だったりもする。





「みんな、元気だった?」と


おばあちゃん先生は、にこにこ。




はぁい、って

みんな、楽しそうにお返事。





日焼けしている子は、リゾートにでも行ったのだろうか。




めぐも、リゾートに行ったけど


それは、向こうの世界での話だった。




マジックショーに出たりして


散々なリゾートだったな、と

めぐは思う。





坊やのお母さんを見つけるために、頑張ったんだっけ。





そうそう、坊やはお母さん見つかったのかなぁ。





めぐの力ではどうしようもなかったので

ルーフィさんや、向こうの

おばあちゃんに


あとを頼んで来たんだっけ。




そう思い返すと、坊やの事が

気になっちゃうめぐだったりした。


でも、違う世界の事だから

電話かける、って訳にも行かない。





「あとで、おばあちゃんに聞いて見よう」とりあえず、困った時はおばあちゃん。




そんなふうに、頼りにしてるおばあちゃん。



めぐの、心のよりどころ。






ふと、先生を見ると

先生も、やさしいおばあちゃん。





めぐ自身、このまま、おばあちゃんに

なっていけたらいいなあ、なんて


密かに思ってる。




たぶん、魔法使いになったせいなのかしら、って

なんとなく、めぐは感じた。






ホームルームは、30分くらいで終わって。




また、クラスメートたちは

賑やかに話はじめた。





お菓子の話、お祭りの話。



夏休みの宿題の話。




それぞれに、実用的な話である。




でも、夢のある話もあって。





「めぐ、めぐ!」と


リサが、にこにこして声を掛ける。





そう、屈託のないその表情は


まだ、この秋に訪れる

悲しいこと、を

知らないから。


できるなら、そのままでいてほしいんんだけど、と

めぐは、リサの未来が明るいって事を

言ってしまいたくなるけど



言っても、信じて貰えないから(笑)。



黙ってるしかなかったりする。




「元気ね、リサ」と、めぐが言う。


「なーに?おばあちゃんみたいに。ねね、がっこ終わったらプール行こう?」と


リサは、楽しそう。

はじけるスパーリングみたいに。





めぐは、リサと一緒に居ると


なんとなく、元気になれそう。




めぐの、元気を減らしてる理由は


もちろん、リサの未来に起こる事のせいだけど。




ほんとうは、めぐも元気な女の子なんだ。





時間旅行をする事で

ひとの未来を知る事が



だんだん、なんとなく


おばあちゃんみたいな気持ちに

なっちゃうのかなぁ、なんて

思ったり。



でも、その魔法のおかげで


リサは、おじいちゃんの本心を知る事が


できたんだけど。



もし、それがなかったら


リサは、ずっと悩み続けたかもしれない。





友達の為だもん、と

めぐは、自分のささやかな暗鬱など

振り払おうと思う。





それで「プール、ね。


学校の?」と



言うと




リサは

大きく首を振って。(笑)。



「あの、ほら、めぐのお家の裏山温泉にある。



流れるプール。



」と、リサは楽しそう。





「なんで、そこなのよー。」と、めぐは


リサの真似してはしゃいで見せて。




「うん。あのさぁめぐ。弟がね。


めぐお姉ちゃんと

一緒に泳ぎたいんだって。



いいでしょ?」と



リサにそう言われると、

まあ、いっか、って気持ちになって来る。




ミシェルかぁ。


めぐは思った。


あんまり印象になかったけど

こんなふうに、ミシェルは

あたしにアプローチしてたんだ。





リサお姉ちゃんに頼んで。





リサも優しいお姉ちゃんだね。





めぐは、なんとなく微笑む。



「いいよ。行こう?登校日だから

授業もないもん。」と



めぐは言って、授業ないのに

なんで学校あるのかなぁ(笑)なんて

思いながら。





白いカーテン越しに輝く夏休みの

太陽、それが



なーんとなくだけど、陰りを見せているような気がして。


夏の雲も、少し高くなってきて


空気が澄んできたような、そんな青空を

見上げて。





少しずつ、そんなふうに

季節は巡って行くのだろう。





その、時間を

めぐは飛び越える事ができるし。



夢のなかなら、誰かの時間を飛び越える

お手伝いもできる。






少しずつ、ひと、誰かの為になれる。



それが、嬉しい、おとなになったような

気がして。





今は、それでいいと思う

めぐだった。



夏の暑さも少し、和らいでくるような

8月の終わり。


エネルギーが失せてくるような、その感じは

どことなく、ペーソス。



めぐは、7月が好きだった。

夏休みに入る前。



始まる前が好きなの。



日曜日より、土曜が好き。





たぶん、限りある命の

ひと、だから


終わりを自然に意識している、そんなせいも

あるのかもしれないけれど




それは、生物行動学のような

お年寄りっぽい学者さんの意見(笑)で




楽しい事は、始まる前の期待の方が楽しくて


それだけに、終わったときはさびしいって


そう思うのは、ふつう。





恋もそうかも。



ミシェルみたいに、遠い存在の

お姉さんのお友達を、憧れるのは

ファンタジー。


夢の中。



心の中で、恋したいって思う。




ほんとうの恋が始まる前の、少年の微睡み。



その時間を、大切にね。って

めぐは思う。



「イメージを壊さないように、しないと」(笑)と

注意注意。




なので、一緒にプールで泳ぐ、なんてのも

ちょっと、怖かったりして(笑)



かわいいミシェルの想いを壊さないようにしないと。






なんたって14歳だもん。



めぐは、自身の14歳の頃を思い返すと

あんまり今と変わらなかったような気もするけれど(笑)

女の子って、そうなのかもしれない。



絵本を読んでたのが、字の多い本になったくらいで

幼い頃と、あんまり変わってないような気、もする。




めぐが、他の人と大きく違ってるのは

17歳までの人生が2回あった、って事くらいで





天使さんと、神様くらいしか

そのことを覚えてる人はいない。













「じゃ、学校終わったらプールね。」と


めぐは、こないだおばあちゃんに買ってもらった


レモンいろの水着を着て行こうかな、なんて

思ったり。









ホームルームのあと、クラブに出たいひとは出て

帰りたいひとは帰ると言う

なんとも、自由な時間割で



めぐは、リサとの約束ができちゃったので

まっすぐ、お家に帰って。




そのあと、裏のプールに行く事にした。





行く夏休みを、惜しむ意味もあったりして。




18歳の夏休みは、もう来ない。




そんな思いもあったりして。







まあ、めぐは時間旅行で

戻る事も、出来たりするけど。







スクールバス、時々乗る

赤いおやねのかわいい、おはなのバスに


「暑いから、涼んで行こうかな」と


めぐも、乗って行く事にした。



発車時間までは

、少し間があるので



並木の下で、涼んでいたり。




木陰だと涼しい、高原のような

風が渡って来るようになると


もう、秋がやって来る。





なんとなく、淋しいような


そんな気持ちにもなる。



秋は不思議。





めぐは、そんなふうにも思う。







秋が淋しいなんて

Lyricalな思いに耽るのは


17歳らしくないな、なんて


めぐは思ったり(笑)



「おとなになったのかしら」なんて


ひとりごとを言っている間に



赤い、スクールバスは


発車時間が来る。




エンジンを掛けると、クーラーがきくから



涼しいので、学生たちは

校舎から、木陰から。


とぼとぼと乗ってくる。


もちろん、女子校だから



先を競ったりする子もいなくて



至って静かなものだけど。





めぐは、運転手さんのすぐ後ろに座って




クーラーで涼んでいた。





回想は、なおも続く。



回想は、ひとの心が休む事ができないので


行う、シミュレーションのようなものである。





頭の中に脳があり、絶えず思考を続けているのは



それが、生き残る為に


周囲の環境から、何かを感じ取り

敵のいない場所を求めたり、そういう理由から発達した機能だったりする。





そのせいで、平和な環境でも


何かを感じ続ける性質があるから



宇宙飛行士は、闇の宇宙で

音のない、情報のない世界に堪えるように

地上では、闇のプールに

閉じ込められる訓練があったりする。



そうすると、皆

幻覚を見て、

現実がどこなのか?が


認識できなくなったりするそうだ。




つまり、何か情報を与え続けないと

記憶を元に、思考を続けると言う訳なのである。



例えば、平穏な都市生活で

敵の存在を気にする必要がないなら


文芸に親しんだり、音楽を楽しんだり。



新しい事を考え続ける事が

大切である。








もっとも、めぐの回想は


それともちょっと違っていたりして



秋が訪れると言う、太陽のエネルギーの

減退を

淋しい、と詩的に感じて



それと、自身の恋の思い出を

重ねて感じていたりする


やわらかな感性であったりもした。





魔法で、恋も解決すればいいのにね。




そんなふうにも思ったり(笑)。






ルーフィとの恋が、叶う見込みが無くても


他のひとを恋する気持ちには、ちょっとなれない

めぐ、だったりもする。





リサ、親友の弟ミシェルも


いい子。


でも、恋人って言うよりは


弟かな?



そんなふうに思ってしまったりして。









スクールバスが、走り出そうとして


ドアを閉じる前に、リサは


駆けてきて。





「すみませーん」と、扉が閉じる前に滑り込んだ。






「セーフ。」と

めぐは、楽しそうに言った。




リサも、にこにこして

左右に分けた髪の毛の、結びめの

ピンクのゴムを撫で付けた。



髪の毛が、きれいに揃っていないので


絵筆みたいに、さらさらと

にゃんこのしっぽみたいで。

ちょっと、かわいらしい。






ドアを閉じた

スクールバスは


途端に、静かな空間、涼しい空気に

爽やかに満たされて。


めぐも、リサも

快よさそうに


瞳を閉じたり、伸びをしたり。



なんとなく、そんな様子も



にゃんこのようだ(笑)。





まだ、午前10時くらいだから

夏休みなら、まだまだおねむの時間(笑)。



こんな時間に学校が終わるなんて....



「登校日って、なんであるの?」とめぐが思うくらいだから。





「遊びにいこう、って事じゃない?みんなで。

よく学び、よく遊べ。

いいことね。」とリサは言う。


自由な校風の、この学校らしい。






ミシェルの学校も、そうなのかな?


と、めぐは、ふと思う。




ミシェル、登校日じゃないの?」と、めぐは尋ねてみると



「うん、あっちは中学だし。

宿題いっぱいあるからじゃない?」と

リサは、楽しそうに笑う。




あちこちで、バスの中は

楽しそうな笑顔。



ゆっくりと、赤いスクールバスは

並木道を下りてゆく。




宿題かぁ。


めぐのクラスは、宿題らしいものは

ほとんどなかった。



3年だから、就職活動も

あるし。


進学する子は、勉強が忙しいし。




「リサぁ、お勉強いいの?」



と、めぐは、すこしおどけて。



女の子同士の時は、ちょっとおどけて

みんな、楽しい雰囲気に合わそうとする。




時々、騒々しい事もあるけれど(笑)


まだ、子供だもの。



そう許されるのも、ハイスクールのうち。



めぐは、そんなふうにも思ったり。





実際、リサは

この少しあと

電車の運転手さんになるんだもの。




とか、未来を知っているめぐは

連想する。





「大学、受かりそう?」と

少しまじめな話をすると



リサはにこにこして「バッチリ。」と

Vサイン。




リサは、そうそう。勉強もできて、スポーツも上手かったし。




でも、お嬢さんタイプじゃなかったから

もし、男子がいたら


アイドルになってただろうけど(笑)。


残念な事に女子校だったから。




「リサも、モテただろーね。共学だったら」と

めぐは、ふつうの言葉を使ってそういう。





「それは、めぐの方。今だってさ、弟ミシェルが

めぐお姉ちゃんが好き好きーっ!って。」リサは、バスの座席にすりすりするジェスチャーをして(笑)おどける。





「やめてよ、リサ(笑)」と

めぐは、ちょっと恥ずかしくなった。




「あたしのどこがいいんだろうねぇ」おばあちゃんみたいに、めぐは言うと




「めぐぅ、おばさんっぽい」と、リサはおどける。




「やだぁ。気にしてんのにぃ。」とめぐもおどける。

でも、おばさんっぽいのは、時間旅行のせいかな。

なんて、めぐはそれをちょっと気にしていたりして。




魔法を使えないひとよりもたくさんの経験ができるから


勢い、ちょっとおばさんっぽいのかなぁ、なんて

ふと、出てくる考え方なんかに

老成した達観(笑)みたいな経験値が出てきちゃって。



それを、めぐは、おばさんっぽいかなぁ、なんて


気にしてしまったり。


まあ、顔が変わる訳じゃないけど。



「そこがいいのよ!」って、リサは楽しそう。



ミシェルも、そう思ってるんじゃない?と。




「ミシェルって、ガールフレンドいないの?」と、めぐが言うと



リサは「うん、内気な子だから。女の子誘うなんて

できないみたいだし。



誘われるけど、行かないみたいよ。


めぐお姉ちゃんが好きなんじゃない、たぶん。



」と、リサは楽しそう。






「いつか、結婚したら

リサお姉ちゃんになるのね、あたしの」と


ふざけためぐを、リサは喜ぶ。




「そういえば、めぐって妹にしたらいいタイプね。

おとなしいし、しっかりしてるし。]



時々、そんなふうにも言われる事もあるめぐだったけど



おばあちゃんっ子のせいかな?なんて

自分では思う。






「そういうリサは、お姉ちゃんタイプ。

あたしについといで!って感じ。


きょうも、イベント企画したし。」と。



めぐは、当然の感想を言う。




実生活でも、お姉ちゃんだもの。




かわいいミシェルのために、

企画したんだよね。





リサ。





優しいお姉ちゃんって、ステキ。



バスは、ふんわり、ゆったり

揺れながら


並木道を下りて、路面電車の

走っている

大通りへと。





「路面電車、いいなー、かわいい。


あれだったら、運転できるかなぁ。」と

リサは言う。




「なれるよ、きっと」とめぐは

そう言ってしまって。





不思議そうにリサが、めぐを見ているのに


慌てて、めぐは「リサ、しっかりしてるもの。

おじいちゃん譲りのレールマン。」って

おどけて言う。




リサは「レールレディよ」と、いいながら





でも、おじいちゃんは、大学を出てから

国鉄に入った方がいい、って



そう、リサは言うから




この時は、まだおじいちゃんを

傷つけたって思っていなかったんだな、と

めぐは気づく。




それは、いつだったのだろう?




たぶん.......

おじいちゃんが天国に行く、少し前。



それで、リサは

罪を感じて、大学へ行くのを

辞めたんだね。




責任感のある、しっかり者のリサ。




本当に、お姉ちゃんにしたくなった(笑)めぐだったりして。







でも、3年も悩ませたくないなぁ、と

めぐは思う。


本当の、おじいちゃんの気持ちを

伝えてあげたい。

でも、どうしたら?



もし、めぐが

おじいちゃんの最期を

リサに告げたら


縁起の悪い予言になってしまうから


それは、今

言う事はできないと

めぐは考える。




「でも。」リサの話だと

今のおじいちゃんは、大学進学をしてから

国鉄に入ればいい、と

リサに言ってた事になる。





「なんで、リサは

大学に行かないで

路面電車の運転手さんになろうとしたんだろ?」



それは、謎。




何かがこれから起こるって事なのかな?





めぐは、ちょっと

予感っぽい気持ちになったけど



ほんとの予言者でもないので(笑)

それは、わからない。



ただ、わかってる事は




おじいちゃんの真意を、リサに伝えたら

未来が変わるって事。





あの時、Naomiが

リサを励まそうと

バイクで出かける事もなかった事になるけれど

それは、それでいい事なのかもしれないね、と


めぐは、リサ、18歳のリサの

屈託のない笑顔を眺めながら思った。




いつもは

歩いて通う道を


バスで来ると、楽チンだけど


ちょっと、味気ないかな?



そんなふうにも、めぐは思った。





過ぎていく時間のひとこま、ひとこまが


記憶されて


それが思い出になっていくような


そんな気もするから





時間をいくつも重ねたり、巻き戻したり、早送りしたり。


そんな魔法を持っていると、

なんとなく、思い出が薄れてしまうような


そんな気持ちにもなるめぐは、18歳。多感な時期であったりもする。






「じゃ、プール、2時ね」と

リサと別れて、坂道を登ると、すぐに、めぐのお家は見えてくる。




慣れた道だけど、いろんな事を感じながら歩いていると

新鮮に見えたりもする。






「ただいまぁ、おばあちゃん!」と

元気よく


畠の方から、めぐは家に入る。






「おかえり」と

いつもどおりのおばあちゃんの笑顔に


めぐは、安心する。



けれども、リサのおじいちゃんの

話を

考えていたら


なーんとなく、いつか

めぐのおじいちゃんみたいに

おばあちゃんも、天国へ行っちゃうの

かなぁ、なんて。


意識すると、ちょっと悲しい

気持ちになったりして。




淋しい気持ちのめぐ。



その表情を、おばあちゃんは読み取って。




「どうしたの?」と



言うけれども





そんな事を、おばあちゃんには言えない。



秋が来るの」とだけ言って。









だから、リサの


おじいちゃんの事も


おじいちゃんが天国に行くまでは、とても言い出せない。



そう、めぐは思った。



でも。


おじいちゃんの本心を伝える事はできるかな?






そんなふうにも、思う。









めぐは、おばあちゃんに

お昼ご飯を作って貰って。





「きょうは、中華にしましょうか?」と



おばあちゃんが作ったのは、パエリヤみたいな、


ビアンカで頂くような、白魚の

小さいお魚の入った、炒めご飯だった。




あまり、このあたりでは見掛けない、

珍しいお料理。



「チャーハン、と言うの。」

お米を焚いて食べる、アジアの風習に沿った


お料理らしい。





「おばあちゃんは

アジアを旅したの?」と

めぐは、そのお米料理を


スプーンですくって。

頂きながら。




お塩味と、お魚と、

ガーリック風味のご飯で



タマゴ、ふわふわのスクランブルエッグが


混ざっていて。


ペッパー風味。





中華料理って複雑なんだな、と

めぐは、おばあちゃんの旅先を

イメージしながら


そのビアンカのチャーハン、を

平らげた。



ベーコンの小口切りが入ってたり、

刻み葱が薬味だったり。



めぐの感覚だと、オムライスの中身にしちゃいそうだけど(笑)。


これは、こう言うものらしい。








ダイニングで、ご飯を食べてると

にゃごが、子猫を二匹連れて



「ただいま」と

めぐに言ったような気がした。



おばあちゃんは、「おや、おかえり。

お昼ご飯?」と



自然に受け答え。





.......おばあちゃんは、ずっと前から。



にゃごと、お話してたんだ。


めぐは、いまそれに気づく。





ちょっと、見ないうちに

子猫ちゃんたちも、ずいぶん大きくなった気がする。




こないだまで、ミルクのんでたのに。



今は、親分の(笑)にゃごの

お魚まで食べちゃうくらいに大きくなって。




にゃごも、元は人間で


そのあと、悪魔くんになったくらいだから


結構怖い事もできるんだろうけれども


子猫には、優しいお父さんで



お魚取られても


にこにこ、と



譲ってあげていて。





そういうものなんだろうな、と


その様子を見ていてめぐは思ったりもする。





食物の分配がある事が、家族の成立

条件である、と述べたのは


生物社会学、ジャンルの提唱者

京都大学霊長類研究所(当時)の

今西錦司教授である。




人間には、家族が必要であり



その家族は、男女一対でかつ、食物の分配があり

子供を育てる事、そんな条件を

必要とされていた。




ーーーーでも、ねこだって

食べ物分けてるよ。





と、めぐは思ったりもする。




一番大切なのは、愛だと

今西教授も、同じ研究所の河合雅雄さんも





そう思っていた。

でも、日本人にしか分からない感覚だったらしい。





シームレスな、ボーダーレスな感覚。



外国人、特にキリスト教の信仰が深い地域では

愛、のように高級な感情を

人間以外に認め難かった(つまり、動物は格下と思ってる)あたりが

その理由で





比較進化論、チャールズ・ダーウィンのそれが

当時認められなかったのと



同じ理由で(笑)


思想的に、まったく進化していない、などと

当時の学会は批判されて、志を改めたらしいが




信仰とはそういうもので



思考を停止するので、現実から視点を逸らす事ができるのである。




もし、考えてしまうと

救いにはならないのだから。





信仰も、何かが

好ましいからひとは

、それを行う。


好ましくないことは、ふつうのひとはしない。




そういう訳で、信仰の多くは

限りある命である人間に、

終末が訪れないと、幻想を

与える事で、それを

好ましい、と


思わせる。


なので、子供で信仰深いひとは少ない。



終末、のイメージが

よく掴めないから、である。





なので、魔法使いにとって


信仰はあまり必然性がない。



時間も、空間も自由自在に

移動できるから、である。






天国や地獄、生まれ変わり、輪廻転生、


そういう概念が、ほとんど信仰にあるのは


終末への畏れを和らげるためであったりもしたが




実際に、その世界がある事は



めぐにはわかる。




何と言っても、天使さんに

護られていたのだからーーー。











めぐは、ごはんを食べている

子猫たちを

微笑んで見ている。




子猫は、ほとんど

うちの子、になりつつある。



母親猫は、美人猫なのだけれど


なぜか、子猫はにゃごに懐いていて。


お母さんの家には、時々帰るくらいらしい。





そのあたり、にゃごは


自身の人間だった頃の記憶もあって(笑)

子煩悩である。




優しい父親、として

役立っている。




そんなふうにも、

前世の記憶は役に立つのである(笑)。








「さ、行ってきまーす。」




めぐは、レモンイエローの


スイム・スーツをバッグに入れて。


裏山の、プールへむかうバスに乗って。






いつか、乗ったっけ?



と、めぐは回想するけれど。

それは、旅先の向こうの世界の話でした。





(笑)





そんなふうに、記憶は曖昧で。




複雑になってしまうと、おばあちゃんの

記憶みたいに

こんがらがってしまいそうだった。





「自分の夢に飛び込んで、記憶を

組み直さないと」なーんて

思うあたり、めぐは、魔法使いっぽく。







「あ」めぐは忘れた。



あの、坊やの事を

おばあちゃんに尋ねてみる事を。





そのあたりも、記憶が複雑になったせいだったりもして。






めぐ自身、こんがらがってしまいそうだったから


こんな時は、泳ぐのもいいかもしれないな。


リサが誘ってくれた偶然に、感謝。







緑いろのバスは、ゆらゆら揺れながら


停留所にやってきて。




ばあん、と


空気仕掛けの折り戸が開いた。






鉄の階段が、2段。

ハイデッキのバスは


どこか懐かしい匂いがして。





行く夏休みを惜しむような、ひぐらしの声に

良く似合う。





秋が近くなって、空気が澄んで来ると

この、高い声が良く似合う。



ああ、秋が来るんだな、と

めぐは思いつつ



でも、クーラーの効いている


バスの有り難さを

まだ、感じる陽気でもある。



バスは、扉を閉じ、

運転手さんの白い手袋がルームミラーを示し



左手がギアを入れる。




ふんわりと、バスは走り出すけれど



それは、人知れず難しい技術であったりもする。



坂道から、衝撃なく走り出すには

ブレーキの解放を行う時に

クラッチをつないでいないと、できない。




でも、タイミングがぴったりでなければ


揺れるか、後ろに下がるか。

前に飛び出すか。




ふわ、と

雲のような乗り心地になるには


熟練の技が必要である。



本当の技、と言うのは

そんなふうに、人知れず行うものであったりもして。


それは、めぐが

リサの知らないところで


リサの悩みを解決してあげたような


そんなものであったりもする。






バスは、快適に

山を登っていった。



ゆらゆらと、バスは揺れながら山道を登っていく。


車内は誰も乗っていない。


終点が近いので、昼間はほとんど乗る人がいないから

それはそれで快適だ。



観光気分で、車窓を眺めると

左手には、木々が青々と茂り


ドイツの黒い森のようだ。

その隣に、竹林。


パンダちゃんが居ても、食べ物に困らないだろうな、と

めぐは微笑む。




時々、雪が降ると


明け方、野うさぎさんがお散歩している跡が見える

その丘の上。



夜になると、鹿さんや猪くんが

出てきたりする、自然豊かなところ。



右手には、お茶の畑が見える。


その、向こうに


ルーフィと歩いた、坂道が見える。



.....ほんのちょっと前の事なのに。



とっても遠い日のような、記憶を


朧げに、めぐは思い出す。





それで、いいのかも。




と、めぐは、ふと

思い返すと、少しだけ思い出に

胸が痛むような、そんな気もした。





バスは、ハイウェイの高架をくぐり


温泉、流れるプールのあのリゾートへ。



振り返ると、海が見えるのは

坂道を登っているから。




道が斜めになっているから、自分が傾いているのに

それに慣れると、海がこちらに傾いているような

そんなふうに見えてきて。


水平線が、地面より高く感じたりするのは錯覚である。




地面が、斜めに海に向かっているので

行く手遙かな水平線が、それより高く見える。




3次元立体に住んでいる事がよく分かり

二次元の平面的な平衡感覚で、座標を認識できない事が

このあたりでも実感できる。



----と、めぐが思っているわけもない(笑)。








バスは、ロータリーでめぐを下ろし

薄い紫色の煙を吐いて、また戻っていった。



ディーゼルエンジンの排気は、僅かに酸を感じるが

それは、燃料に硫黄が混ざっているせいで


燃焼して酸化されると、硫黄酸化物、水分と反応すると

硫酸になる。



金属が溶けるのだけれども、そんな理由で酸の匂いがする。









プールは、リゾートホテルの裏手に入り口がある。

スポーツリゾートなので、テニスコートがあったりする


エントランスは、ホテルと分けられているのは

巧みな設計である。




ホテルは静粛に、と言っても

スポーツで高揚している気分を鎮めるのも難しいから


入り口を別にするのは良い方法である。



係員が両方に必要だが、それもおもてなし。



来る人は、気持ちよいところに来るのである。

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