第352話  三重町にて

機関区の区長さんは「はい、機関区ー」と。内線なのでのんびり。


「ああ、真由美ちゃん。お兄ちゃん帰ってきたよ。もう、携帯出れるでしょ(^^)。」



真由美ちゃんは「よかった。」(^^)。



でも、一応・・・心配だからお兄ちゃんの携帯にショートメールをした。



更衣室のお兄ちゃん。制服のシャツを脱いで名札を取って。


傍らのランドリー・ボックスに入れた。


ついでにズボンも脱いで。私服に着替えて。



「風呂も入りたいけどな」



今日は、朝4時から出たので・・・3時、と言っても遅い方だ。


実働6時間である。



そんなところ、バッグの携帯にまゆまゆからメール着信の音。



お兄ちゃんは「なんだ?駅にきてんのかな」



電話掛けた・・・・。







まゆまゆは、携帯電話が鳴ったので

まだ廊下だったから、それを取った。


制服なので、勤務中は出てはいけないからだ。



「あ、もしもし・・・お兄ちゃん?お疲れ様」(^^)。




お兄ちゃんは、疲れているけど・・、まゆまゆの声に和んだ「ああ、真由美か。駅?」




まゆまゆは「そう。これから回送で人吉に帰るの」



お兄ちゃんは「そう、お疲れ様。俺はこれから明け。帰って寝ようかと思って」


そういうふうに、細切れで寝られる人でないと務まらない。


恵もそうだけど。




まゆまゆ「じゃ、手短に言うけど・・・あのね、お母さんが、お兄ちゃんを結婚させようかって

考えてるみたいなの」



お兄ちゃん「結婚って・・・まだいいよ俺。そんなの」



まゆまゆ「うん、それでね。相手は、ほら、昨日会った恵さんがいいかって」





お兄ちゃん「無理だよそんなの。俺、知らないし。ちょっと会っただけだもの」



まゆまゆ「そう、それでね・・・にせコイビトを作れば、お母さんも諦めるかって。」



お兄ちゃんは笑った「そんなの、バレるよ・・・それにそんな人、いないし。

ああ、それにね俺、特急組の予備をするみたいなんだ。そうなると・・・あんまり帰って

来れなくなるし」



・・・実際、寝台を率いるなら・・例えば門司に朝8時とか。

或いは上りだと、その反対に夜9時に門司とか。


そういう、乗務員宿泊所に泊まる事が増えるから

家庭を持ってもあんまり・・・・意味ない。

寮の方がいい。


それで、晩婚になる傾向があったり。



まゆまゆは「それでね、この人はどうかな、って。友里絵さんたちが」


と、メールで写真を送った。



お兄ちゃんは「まあ、いっか、とりあえず見るよ。じゃあ」



電話を切って。お兄ちゃんは・・・。「でも、そんなに俺を結婚させたくないのかな?」

なんて、ちら、と思ったり(^^)。




・・・まあ、いっか。


と、ケータイを切って。メールを見た。



「ああ、この人・・・・・綺麗な人だなぁ。おとなしそうだし」

と、ちょっと気になるおにいちゃんだったり。(^^)。



「でも・・・どっちかって言うと、あの小さい子の方が可愛いかな」

と、ぴょんぴょん飛んでいた友里絵のことを思い出した。


「生き生きしてて」







恵は、なんだか・・・陽射しで目が醒めた。

「あーあ・・・・3時か。」



こういう風に、ちょこちょこ寝てるんで・・・いつもすこーしだけ、時差ぼけみたいな

感じ。



「若いうちは気力で持つけどサ」と。



・・・こんなんで、結婚なんて、まあ無理だよね。


そう思う。



「なんか食べようかな」と・・・思っても

面倒になって、ついつい、なんか・・・適当なもので済ませたりする。


眠い。


それだけで。





「あーあ・・・・」好きで選んだ車掌だったけど。



「でも、駅員よりは楽だよな」



一日中、誰かに見られてるような、ああいうとこはちょっとね。



「田舎の駅長さんとかならいいけど」(^^)。







友里絵たちの乗った「あそ3号」は・・・

川沿いの線路を、右左。

カーブしながら、走る。





♪ちゃいむ♪



ーー間もなく、三重町、三重町ですーーー

と、ほがらかなお姉さんの声で、アナウンス。




前の席のイギリス人ふうのおじさんは、友里絵に「next?ohita?」



友里絵は「えー、えーと、愛紗、たのもー。」


愛紗は「ah....next , mie-machi . naka-handa, ohita.」



おじさん「thank you」と、にこにこ。




友里絵「さーすが。」と、喜ぶ。



愛紗は「正しい英語かどうか・・・不明」と、肩を竦める。


パティが、とことこ・・と来て「わたしになぜ聞かないんでしょか」




友里絵「パティがかわいいから、苦手なんじゃない?おじさん」



由香「愛紗は可愛くないのか?」



友里絵「ハハハ、そうじゃなーくてぇ。パティはさ、抱きしめたくなっちゃうじゃん。

おじさんは」



ともちゃんは「ダイナマイト・ボディー!」だし。



パティは「ハハハ」



さかまゆちゃんは「羨ましいですー」



パティは「さかまゆ、ステキよ。ジャパニーズ・ガール。」



友里絵「フジヤマ、ゲイシャガール!」



由香「芸者はあんただろ」



菜由「お笑い芸者」


友里絵「ハハハ」




列車は三重町に着く・・・・。


駅前に青と白の国鉄バス。臼杵ゆき。



愛紗はそれを見ていて、ちょっと・・・だけ。

国鉄バスもいいかなぁ、なんて思った。




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