第332話 SLちゃん
いつしか、雨も止んでいた。
立野駅の豊肥本線ホームの端っこは、屋根がないので
友里絵は、空を見上げて。「雨止んだね」と、にっこり。
雲が、真っ白。
ケータイで、メールを打とうとした友里絵。
放屁ほんせん、と出てしまって。「臭いじゃん」と、ひとり怒る(笑)。
変換しなおし。
包皮本線、と出るので「皮かむりかい」(^^)。
ケタケタ笑っている。
由香「ひとり上手なやつ」(^^)。
友里絵「ひとり遊びと言わないでー♪」(^^)。
由香「いつもひとりで指アソビ」
友里絵「それはあたしのセリフ」
菜由は「まあ、誰も居ないからいいか」と、思っていたら
崖の上が道路で、バスが停まってて。
タクシーのおじさんたちが聞いていた(笑)。
「おもしろいお嬢ちゃんじゃのー。」
そのうちに、坂を登ってくる列車。
ゆっくり、ゆっくり。
煙を吐いて。
しゅっ、しゅっ。
友里絵は「あ、来た!」
黒い機関車は、ゆっくり、ゆっくり。
しゅ、しゅ、しゅー・・・・。
煙を吐き出しながら。
58654、と書いてある。
友里絵は「従業員番号みたい」と、仕事を思い出した。
由香「何番だっけ?」朝、アルコール検査するとき打ち込むのだ。
友里絵は「201254」
由香は「そう。あたしは201253」
友里絵「一緒だね、愛紗は?」
愛紗は「201185」
友里絵は「それだけしか違わないんだねー。一年違うのに」
菜由は「ああ、いろいろあるからじゃない?ガイドってその頃から契約になったから」
友里絵「なるほど。タマちゃんは因みに509037だった」
由香「覚えてるのもすごいなー。算数はダメなのにな」
友里絵「ダメじゃないよー。九九くらいは出来る」
菜由「そりゃできるよ。小学校でやるもん。でも使わないね」
由香「ほんと。電卓があるもんね」
愛紗「なんで、深町さんだけ50---なのかな」
友里絵「知らなーい。契約だからじゃない?」
菜由「なるほど」
由香「正社員にならない、ってあたりがあの人だね」
友里絵「でも最初は、3年たったら正社員になるつもりだったんだと」
菜由「でもアレでしょ。ゴジラが迫ってきたから」
友里絵「そうそう」
由香「他にもいたしな。」
菜由「ゴジラvsキングギドラか」
いっぱいいたもんなぁ、そういえば。と
みんな笑いながら
「タマちゃんはあたしのもんだもーん」と、友里絵。
由香「そうだよね」
列車は、1番線に停まる。島式ホームの山側。
これから、スイッチバックを登って。
阿蘇山へと向かうのだ。
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真由美ちゃんは、折り返しの吉松駅。
なんにもないので(^^;
制服で、駅前にいると
仕事になっちゃうし
事務室にひっこんだ。
「こんにちはー」と。
駅長さんは「ごくろうさーん」と、のんびり。
かわいい女の子には優しい(^^)。
事務室の端っこにある椅子で、バッグの中のケータイを見ると
友里絵の返信。
「この人をコイビトにしちゃえ!」って(笑)。
真由美ちゃんは「愛紗さん」と。
そういえば、オスカルの写真、みてないなー。
そう思って。
お兄ちゃんの写真を添えて
「愛紗さんのオスカル姿、作れますか?」
と、お茶目な真由美ちゃん。
「あ、そろそろ列車」
折り返し20分なのだ。
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お兄ちゃんは、その頃・・・・。
福岡貨物ターミナルで、のーんびり。
貨物のダイアは余裕がある。遅れるからだ。
台風なんかがあると、その代わりにせせこましくなるけど
今は平気。
のんびり休める。
帰りも、おまけに客車回送だから、荷が軽い。
ごはんを食べて。
休憩室に行った。
休憩室は、仮眠も出来るようになっているので
静かだ。
「その代わり、寝過さないようにしないとな」と。
ベッドのタイマーを掛けた。
これは、有名な仕掛けだけど
ベッドが、時間になると起き上がる。
セットし忘れたら終わりだが(^^;
何しろ朝4時に起きると・・・・10時だと
そろそろ、眠くなる。
自然の摂理である。
「少し寝るかな」
細切れに寝るのが上手になる、この仕事。
(因みに、路線バスもほんとはこういうダイヤだったが・・・・
近年は、その昼休憩を45分しか取らないところも多い)。
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恵は、どうやら人吉駅に着いたものの。
裏側だったので
ぐるーっと回って、結局踏み切りまで回ることになった。
柵を乗り越えちゃえ!と思ったが
さすがに職員である。そういう事はしたくても、できない。
「やれやれ・・・・。」
楽しい休日である。
酔っ払って、人の家に転がり込んで。
縁談を持ち掛けられて、逃げて(笑)。
崖で遭難しかけて。熊に食われそうになって(?)
犬に救われた。
「寅さんかいな」(^^)。
明け番ー公休ではないので
明日はまた、乗務である。
「こんな生活じゃ、恋愛どこじゃないね」と・・・・いいながら。
てくてく歩いて。
「あー!なんでこの駅、裏口ないのー!」と、叫びたくなる(笑)。
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