第277話 メルセデス

「さて、ごはんも食べたし・・・。」と。

203号室に戻って。ひとやすみの5人。


友里絵は「きょうは、どうするの?」


愛紗は「夕方までに、南阿蘇に行けばいいの。

高森線の終点で、町営バスに接続があるね。16:30かな。

色見環状線」


菜由は「さーすが、ツアコン」と。温かくからかう。


愛紗は「なんとなく、その役なのよね・・・シーガイアは、失敗したけど」

と、失敗をすこし気にするタイプ。

そういう事もあって、時刻表をきっちり調べているけど・・・指宿では

乗車券を置き忘れたりして。



真由美ちゃんは「シーガイアですか?ステキですねー。」と、にこにこ。



友里絵は「ひろーい、ジャングル風呂があって」

と、ひとさしゆびたてて。先生みたいに。


由香「それは箱根だろ」

と、いつものように。


友里絵「そーだっけか。♪裸♪天国♪」と、にこにこ。



菜由「熱海じゃなかったっけ?」

と、窓際から、川を眺めながら。


愛紗「伊東かしら」と、思い出すCM。



友里絵「裸ー天国ーホテルー紅葉。あ、やっぱ違うか」と。


ははは、と、みんな笑顔。



由香「語呂合わせかいな」と。座敷に横座り。

バッグの中身を見ていたり。


友里絵「伊東にいくなら♪ハトヤ♪」これもシーガイアじゃないか、と(^^;



由香「学校の勉強もそのくらい真面目にやればなぁ、いまごろは大学生かも」

と、お母さんみたい。



友里絵「ムリムリ」


由香「解ってるけどさ。あたしと同じ高校だし」


友里絵「ハハハ」


由香「そこも出られんかったと言う・・・。」



友里絵「出なかっただけ」



由香「お化けかいな」


ははは、とみんな、笑顔。



愛紗は「真由美ちゃんは、公立?」


真由美ちゃんは「ハイ。県立です」


友里絵は「そーいう感じするねー。県立の子って・・ちゃんとしてるもん」


真由美ちゃんは「そうですか?」と。ハテナ。


菜由は「私立の子って、どんなの?」



由香・友里絵。互いに相手を指差し「こんなの!」


わはは、と、互いに笑う。



菜由「うーむ。なんとなく解ったような・・・。」


友里絵「そうそう。県立ってだいたい、制服からして紺とかそういう感じの、仕立てのいい生


地で」



由香「言えてるねー。あたしらはさ、チェックのスカートで、安っぽいペラペラので」


菜由は「ハハハ。なんか解る。そういうの」


愛紗「わたしは私立だけど、紺のブレザーだったっけ」



菜由「愛紗はさ・・・ミッションだし」



友里絵「ギアなの?」



由香「歯車に、手を挟まれた」



友里絵「ギア」



はっははは、と、みんな笑う。




由香は「でもさーぁ、友里絵と話してると面白いけど、後で

何してたかって考えると、何にもしてないのね」(^^;


友里絵「そこがいいのよ」


由香「そうか?」



友里絵「所詮この世は一転地六」


菜由「仕掛け人か」



真由美ちゃん「父がよく見てました」



友里絵「勤め人だとね。いろいろ・・・。」


由香「友里絵んとこはいいよね」



菜由「なんだっけ?お父さんの仕事」


友里絵「トラック野郎BJ」


由香「BJだけ余計だよ」



愛紗「あー、あったね。土曜の深夜だったかな」


由香「神奈川は金曜だったような」


友里絵「そうだっけ?」



菜由「そうそう。白バイ野郎の後だったか・・・その辺り。」



真由美ちゃん「かっこいいですね。あの。パンチさん。」


友里絵「パンチ佐藤?」


真由美ちゃんは違う違う、と掌を横に振る。にこにこ。


由香「ピンキラのパンチョさん」


友里絵、違う違う、と手を振る「ョはないよん」



菜由は「ああいうタイプ、好み?」


真由美ちゃん「はい。なんか、さっぱりしてて、明るくて」



友里絵「おにーちゃんに似てたりして」



真由美ちゃんは「いえいえ、兄はあんなに・・・日焼けはしてますけど」



菜由は「かっこいいだろねー。機関士席の窓開けて。白い手袋で、指二本。


本線進行!速度110!


とか」



愛紗「あたしも、それ憧れたっけ」


友里絵は「それでバスに乗ったの?」




愛紗「わからないけど・・・そうかもしれない。」

・・・ふと、愛紗は思った。


どこか、遠い遠い記憶で。

そういう人を見て、憧れたのかな・・・・。なんて。



真由美ちゃんは「機関士も、今はいませんけど・・・なれるかもしれませんね。

今の時代なら。」



愛紗は空想する。


大きな機関車を操作して、ながーい列車を率いて。

海岸線の線路を走る。そんな自分の姿。



・・・・あんまり、女の子っぽい夢ではなさそうね。

なんて思って。





とっても長い一日だったような火曜日が過ぎ、きょうは水曜日。


「出かけるとなると名残惜しいね」と、菜由は。

着ていた浴衣を畳んで。


友里絵は、そのまま丸めて(^^;


由香は「そーいうところが、やっぱ三流高・・・」と。


友里絵は「アンタも一緒じゃん。」


由香は「まあ、あたしは出たけどね」



友里絵「ででで・・・出たー」



由香「止めろってそういうネタは」



友里絵「貴乃花の勝ちー」



由香「そのネタか」




菜由は「友里絵がいるとさ、淋しくなくなっていいね」


愛紗「ほんと」


友里絵は「へへへ」



由香「ムダに明るいからなぁ」



友里絵「便所の100w」


真由美ちゃんも、くすくす。


菜由「まあ、都会だと明るくてもいいけど」


由香「そうね。ご本尊様が見えないし」


愛紗「ご本尊様って」(^^;



友里絵「メルセデスでしょ?」


由香「メルセデスって?」


友里絵「ベンツボ」


ははは、と、みんな爆笑。


友里絵「さ、汚く決まったところで。お開き!」


一晩お世話になりました、と・・・203号室に頭を下げて。


友里絵「また来るからねー。」


真由美ちゃんは、その言葉に、なーんとなく・・・感じるものがあった。

昨日の夜のこと・・を、思い出して。

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