第247話 猫ふんじゃった

かわいい子を守ってあげたい、かわいいままでいさせてあげたい。

そういう気持って、誰にでもある。


女同士だと、可愛がるだけでいられるから

いいな。


そんなふうに、友里絵は思ったりした。




めいめいに、好きなおかず。


友里絵は、お稲荷さんとのり巻きとか。


「それでメシも食うのか」と、由香。


「うん」と、友里絵。


「よく食うなー。その割に背、伸びないな」と、由香。



「横に伸びてんの」と、友里絵。



みんな、笑う。






「エルさいずのハラ」と、友里絵。



「それは、あたし」と、菜由。



愛紗は「あたしも・・・」と。



真由美ちゃんは「日生さんって、宝塚みたいなお名前」



愛紗は「そう?」



真由美ちゃん「ひらがなにすると。日生あいしゃ、さん」



菜由「それでは、新作「エルさいずのハラ」でーす!」



由香「ジュテーム、オスカル!」



友里絵「雄狩るのか。やっぱしなー。」



ははは、と、みんな笑う。




菜由「でもさ、愛紗が男役だと結構似合うかも。背高いし」


実際、愛紗はみんなより、頭ひとつ高い。

そのあたりが、男子にはいまひとつ人気が無かった理由でもある(^^;



「うん、学園祭でやった」と、愛紗。




「わー、見てみたかった。写真ありますか?」と、真由美ちゃん。



愛紗「あるけど、恥ずかしいな」と、にこにこ。



友里絵「なに演ったの?」



愛紗「えーと、定番の。ロミオとジュリエットとか」



「かっこよかったでしょうねー」と、真由美ちゃん。にこにこ。




菜由「普段、娘役っぽいもんね、愛紗」



由香「ギャップ萌えか」



友里絵「なので、愛紗をPRポスターに、とか。国鉄さんが」





真由美ちゃんは「国鉄ですか?お仕事」




菜由「あ、それはね。指宿で。国鉄の人と一緒になって。

こっちに来るなら国鉄においで、って。

楽しい空想」



真由美ちゃんは「いいですね、そうなったら。わたしも楽しみ。」




とか、お昼を頂きながら。



上品な話題なので・・・・・友里絵は割りと静か(笑)。




「いつも、真由美ちゃんは人吉から、吉松の乗務が多いの?」と、愛紗。



真由美ちゃんは、うなづいて「はい。だいたい・・・・まだ始めたばかりですし。

時々、熊本、鹿児島へ行って帰ってきたり。そのくらいです。

だんだん、長い乗務になるそうです。」




湯前線が13時15分なので、それに合わせてご飯を食べ終えて。

なんとなくダイヤに合わせる習慣の5人。職業的(^^)。



ごちそうさまでしたー、と、5人でごあいさつ。


食堂のおばさんは、にこにこ「あいよ、ありがとうね。またおいで」



線路沿いを歩いていると、まだ、枕木に石炭がらが落ちた後があったり。

電信柱が黒く煤けている。


そのあたりを、愛紗や菜由は懐かしい、と思う。



真由美ちゃんは「そうですか。愛紗さんの伯父様が国鉄ですか。

わたしもそうです」



愛紗は「割と多いですね。親類筋で入るの」



真由美ちゃん「人吉は、のんびりしていますし。高校からだと就職枠があるので

希望優先ですね。」



由香「ああ、なんかあったっけ。パン食い競争みたいな」


友里絵「そうなの?」



由香「友里絵はしらないからなー。」



友里絵「まあ、ね。中退ー>専門校だもん」





真由美ちゃん「専門はどちらですか?」



友里絵「あ、あの。ペットトリマーと看護師。大したもんじゃないけど」



真由美ちゃん「すごいんですねー。この街にもありますけど、美的センスが

難しいと聞きます」



由香「まあ、犬に対してのね。本人はあんまり美的じゃないけどね」




友里絵「悪かったな」



由香「別に」



みんな、ははは、と笑う。




駅に戻ってきた。



さっきは気づかなかったけど、すみっこに電子ピアノが置いてある。



「駅ピアノか」と、由香。



「えー、おほん」と、友里絵がピアノの前に座る。



「え?」と、菜由。



友里絵は、真面目な顔でピアノの蓋を開けて


鍵盤を。



♪ねこふんじゃった♪。



駅員さんも笑っていた。


キヨスクのおばさんも。





「やっぱお笑いか」と、由香。



菜由「そうなるだろうと思った」

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