第208話 うらめしや~

友里絵ちゃんは、しあわせな子だと愛紗は思う。


お父さんや、お母さんに愛されて、どんな事があっても護ってもらえる。

友里絵ちゃんが高校が嫌だと言った時「それなら行かないでいい」と

別の人生を歩ませてくれた。そんなお父さんに守られて。


愛紗自身は・・・どちらかと言うとそういう印象はなくて。

進学、就職、そして婚姻についても

自身の意志と言うよりは、親、親族の意向・・・・のようなものが支配的で


それが嫌だったから、高校卒業して直ぐに、大岡山へ行った。


一生、そんな風に

親族に隷属するのは嫌だったからだ。



大岡山でも、似たような圧力はあった。例えば岩市である。


悪い事をする=強い、そんな風に思い込んでいるヘンな人。


しかし、「正しい事をする」人たちが、それを抑止する。

そういう会社だった、大岡山。



・・・・・・思えば。

深町もそうであったかもしれない。

どこにも属せずに生きていこうとする。婚姻すら避けているのは

そんな理由かもしれない。


それで、大岡山にしばらく居たが・・・。そこでも、「嫁探し」が始まって

逃げた(笑)。


隷属が嫌だったのかもしれない・・・が。

相手も酷かったが(笑)。




そんな風に思うと、友里絵ちゃんがとても幸せな子に見えてくる。



育ちのいい子。


そんなふうに、思う・・・・愛紗だった。






KKR指宿についても、南国の夕暮れは遅く

まだ、昼間のような景色。




「あー、きょうは楽しかったねー。」と、友里絵。

「ほんと」と、菜由。

「いろいろ遊んだな」と、由香。



愛紗は、それよりも無くした周遊券が気になって。

フロントで鍵を受け取り、ひとりで部屋に行った。



ドアを開けて、バッグを探す。


・・・・・あった。




ほっと、安堵。


「そうだ。フロントに見せればいいって言ってたっけ。駅員さん。」


友里絵たちが上がってこないので、部屋に鍵を掛けて

エレベータで降りた。


友里絵たちは、ロビーでのんびり、お土産ものを見ていたり。



愛紗は、フロントマンに「あの、きょう、指宿駅で周遊券紛失で・・・。」と言うと

フロントさんは「はい。伺っております。こちらですね。」と。


ここは国鉄の施設なので、その辺りは大丈夫だそうだ。



ありがとうございます、と

フロントさんにお礼を言って、ひと息。



ああ、良かった。


そう思う、愛紗だった。


幼い頃からの癖、かもしれない。

きちんと、しっかり。


そう言う、無言の圧力が、どこか自分を縛っているような・・・そんな気がして。

自分の失敗を許せない。


失敗すると、悔やむ。


別に、誰に言われた訳でもない。



「いい子、可愛い子」で、ありたいと思う気持が

そんなふうにさせるのかもしれない。




・・・・でも。



それは、ひょっとしたら

悪い子なら、可愛がって貰えない。

そう思い込んでいる自分、のせいかもしれないな。

そう、友里絵ちゃんや由香ちゃんと旅していると

思うのだった。



・・・・だから、失敗を許せないのかな?



なんて思ったりして。




友里絵ちゃんみたいに、ありのままになりたいな。


なんてふうに思う、今の愛紗だった。





友里絵が「お疲れ様でしたー。」って愛紗に。にこにこ。


愛紗が「なんか、仕事みたい。」


友里絵は、にっこり「だって、ツアコンみたいだもん。一生懸命に。」





由香が「あー、結構疲れたな。」


友里絵「年だねー。あたしたちも。」



由香が「そーだねぇ。麻里恵さんみたいに、財閥だったらなぁ。」


友里絵「無理無理」



由香は笑って「そうだね。遺産なんてさ」



友里絵「ありがとう、いーい薬です。」と、にっこり。手になにか持って。



由香「それは胃散。」



友里絵「♪たーん、たかたんたーん♪」と、ショパンのメロディを口ずさむ。

胃散のCM(^^)。



由香「まあ、でも親は選べないもんな」



友里絵「うらめしや~」と、両手を前に出して。お化けのポーズ。



由香「裏飯屋?、腹減ったかー。メシメシ。」


友里絵「メシはまだだよ。風呂風呂。」



由香「そっかー。さっきのフランスパンくれよ」



友里絵「そーいう時にいるわけ。」



由香「なーるほど。タマちゃんは旅慣れてるなぁ、さすが」と。




友里絵「旅って楽しいもんね」



由香「うん。ずっと旅だといいね。」



菜由が、どっからか戻ってきて「一旦お部屋に落ち着いて。それからお風呂かな。

ああ、きょうは楽しかったなぁ」




友里絵が「ほんと。イッシーちゃんの骨もめっけたし」


由香「ほんとに骨だったら面白いね」


愛紗も「ほんと」


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