第207話 旅くらしはいいな
「あ、バス来たね」と、菜由。
「来た来た。友里絵ー、置いてくよ」と、由香。
友里絵は、まだラブラちゃんとじゃれている。
大きなラブラちゃんなので、立つとしゃがんでいる友里絵より大きい。
「それじゃ、まったねー。」と、友里絵は立ち上がって。
ラブラちゃんは、シッポぐるぐる。ついてくる。
「あ、きょうはもうおしまーい。またね」と、友里絵が言っても
くっついてきて。
「懐かれちゃったね」と、愛紗もにこにこ。
「飼い主さんいないのかな」と、菜由。
「いないはずはないと思うけど・・・」と、友里絵。
こんなに大きなラブラちゃん、綺麗だし
野良ちゃんだと言うこともなさそう。
「放し飼いかなぁ」と、菜由。
「そうでもなさそうだけど・・・・」と、友里絵。
バスが来て、ドアが開いて。機械式ブザーの音が、ツー。
愛紗、由香、菜由。乗り込む。
友里絵が乗ると、ラブラちゃんも乗ってきちゃう(^^)
「あ、ほんとにダメだって、お家帰れなくなっちゃうって」と、友里絵が
ラブラちゃんを表に出そうとすると。
ラブラちゃん、さみしそう。 しっぽをだらーん。下むいちゃって。
愛紗が「駅員さんに聞いてみよう」と、降りようとした。
マイクロバスの運転手さんが、降りてきて
「あ、この子。時々見かけますね。・・・・近所の子みたいだから。」と。
駅員さんに聞きに言った。
駅員さん、今朝のおじさん。「今度はどうしたの・・・?ああ、この犬ね。
時々、駅前で誰か待ってるね。駅で預かるよ。おいで!」と言うと
ラブラちゃんは、駅員さんに付いてった。
友里絵の方を振り返りながら。
「中犬ハチ公かな」と、友里絵。
「字が違うって」と、由香。
「あ、そーだっけ?」と、友里絵。漢字苦手だー、とかいいながら。
「犬に好かれるね、友里絵ちゃん」と、菜由。
「ホントは犬なんじゃないの?骨見つけるし」と、由香。
「あの骨が、本物だったらびっくりだねー」と、友里絵。
そこで、運転手さんが帰ってきて「安心ですね。出発します」と、にこにこ。
マイクロバスのドア・ブザーが ツー、と響いて。
ばたりとドアが閉じる。
空気シリンダーの音がしないので、すこし不思議だなと
愛紗は思った。
・
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大岡山での研修初日。
その、空気シリンダーでドアを開ける事。そんなところから説明を受けた。
バッテリースイッチが閉じていると、シリンダーも動かないので
ドアは閉じた状態になる。
観光バスでは、それでもスイッチで動かせるが
路線だと、古い型のバスは非常コックを開けて、空気を抜いて
手でドアを開ける。
なのだけど、そのコックが結構、古いバスだと油が切れていて
重い事がある。
力任せに引っ張ると、ストッパーのピンが抜けて
非常コックのハンドルごと、取れてしまう。
出先でそういう時は、慌てずにハンドルを元に戻せば
とりあえずドアは閉じるので
車庫までそうして帰り、昼休み等で直せばいい。
ピンを刺すだけなのだ。
そう、森に教わった。
そんなこと、知らない事が一杯だった。
もう、とても昔のことのように思えた・・・・。
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・
マイクロバスは、軽快に走る。
友里絵が「なんだか、帰りたくないなー。」
由香が「まだ、しばらくは旅だよ。」
愛紗は「そうね」
土曜 寝台特急「富士」
↓
日曜 大分、庄内。
↓
「ゆふいんの森」
「つばめ560号」
「快速なのはな」
↓
KKR指宿 泊
月曜
「だもの」と。
「まだまだ、か」と、友里絵。
「でも、いつかは帰るんだ」と、由香。
「旅ってそうだけど」と、菜由。
「ずっと旅していたかったら、車掌さんになるとか」と、愛紗。
「それもいいかなー。」なんて、友里絵。
マイクロバスは、大きな通りを曲がって海岸線へ。
すぐに、KKR指宿に戻る。
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