第134話 リムジンバス

「ありがとね」と、靴屋さんのおばさん。


ありがとうございましたー。と、由香と友里絵はコーラスみたいに。

真新しい靴に履き替えて、にこにこ。


「いいわね、その靴」と、愛紗が言うと


ふたりもにこにこ。


履いてた靴は、お店から家に送った、と。



「早く決まっちゃってよかった」と、愛紗が言うと


友里絵は「うん!おばさんがいい人だし。愛紗を待たせちゃ悪いし。」


愛紗は「ごめんね、気を使わせちゃったね。」


気遣ってくれていい子ね、と思う。

ちょっと、自分がイヤそうな表情をしていたのかな、と

反省反省。


由香は「いいってことよ!友達じゃん。じゃさ、なんか飲もうか。」


友里絵は「ビールかね」



「朝からビールかい。バチェラー・ガール」と、友里絵。



「ガールって年じゃないよ」と由香。



「そだね。もうJKじゃないもん」と、友里絵。



「JKってなんか職業みたいだもんね。卒業すると失業する、みたいな」と、友里絵。



由香は「名刺もってる子もいたもんね」と。



愛紗は、そういう都会っ子の流行は全然知らない。「こっちは、無かったね」



友里絵は「そう。タマちゃんに最初あった時は名刺もってないから、って

レシートの裏に名前書いて渡したっけ」



そういう流行があるんだなあ、と。愛紗はちょっと興味を感じた。



「じゃ、なにか飲み物を・・・。次の角を左に曲がるとニチイがあるね。

右にいくとトキハ。」と、愛紗。



「ニチイってなんか、懐かしい名前だけど・・・。」と、友里絵。


「どっかにあったねぇ。大岡山だっけ、駅前に」と、由香。



愛紗が大岡山に来る、かなり前にあったそうだ。

今は、公共施設になっている。




「じゃ、ニチイに行ってみようか!」と、友里絵は

とっとことっとこ。



すこし、賑やかになってきたアーケードを歩いて左へ。


由香と友里絵は、あとについて。




すぐにアーケードは終わり、突き当たりは公園。その手前にニチイがあった。



大岡山のビルよりは小ぶりな、6階建てくらいの。


結構賑わっていて。



一階は、どこのデパートでもそうだけど化粧品売り場、バッグ・靴・洋品。




「なんだか懐かしいね」と、友里絵。



愛紗も「そうね。昭和って感じ」



由香も「化粧品かー。JKの頃、気になってたけど。今はあんまり」



「こっちは、無かったな、そういうの」と、愛紗。




由香は「大岡山でも、お嬢さんはそうね。あたしらは・・・ね。不良だし」


友里絵は「自分で言うな」と、笑う。



愛紗は、ふと「不良」になってみたかったな、なんて思ったりもした。


友里絵や由香くらい、自然になれるんなら。



そう思いながら、エスカレータで二階、三階。


日用品とか、布団、洋服。


「デパートってみんな、似てるね」と、友里絵。


「ほんと」と、由香。



「懐かしいようなデパートって、少なくなってるね」と、愛紗。



6階がパーラー。


アーケードの上に出ているので、陽射しが眩しいくらい。



「南の国だー。」と、友里絵。


まぶしいな、と。



「ほんとだねー。」と、由香も。




「きょうはいい天気。」と、愛紗。



公園のそばなので、緑が美しい。

ふと見ると、国道の向こうは日豊本線の線路だった。



フロアの真ん中にエスカレータがあって、回廊のような周囲に

お店が幾つか。



駅に近いからか、結構流行っているよう。


公園の隣、と言う辺りもあるみたい。









その、窓に近いパーラー。


昔ながらの硝子のショーケースに、サンプルがいっぱい。



「クリームソーダって、よく頼んだっけ」と、友里絵。



「そうそう。なんかね。定番って言うか」と、由香。



「アイスクリームだけ食べちゃうと、ちょっと淋しいけど、食べないと沈んじゃうし」と、

愛紗。



そうそう、と。友里絵と由香。


「デパートなんて、普段行かなかったし」と、友里絵。



「そーだねぇ。駅から遠いし。高校行ってからだよね、バスで駅行くから」と、由香。



「そうなの?」と、愛紗。


愛紗の住んでいた辺りにはデパートは無いけど、大岡山に住んでいる友里絵や由香なら

いつも行っていると思っていた。




「うん、団地はさーぁ、駅から結構遠いから。」と、友里絵。



「そだよね。最初は片野駅もなくって。バスで30分くらいだったっけ。」と、由香。



3人は、陽射し、さんさん。の窓際の席で。



お話に出たクリームソーダを頼んでみた。




「眺めがいいねー。」と、友里絵。


角のお店だから、線路のほうと、それと、線路沿いの宮崎方向が見える。



高い建物が少ないから、県庁と、トキハデパートと、トキハ会館。


駅の近くはPARCOがあったり。



トキハ、と言う旧かなの看板を見て、友里絵は「なんか、レトロだ」


「今となってはカッコイイね」と、由香。



「そうなの?田舎だーって、前は思ってたけど。あの隣の建物は、結婚式場なの」

と、愛紗。



そういう辺りは、結構田舎っぽいけれど、そこが好きだと今は思う。





クリームソーダのアイスクリームをつつきながら。



「なんで、これってバニラなのかな」と。ふとつぶやくと


友里絵が「そーだよね。いろいろあってもいいよね」と。



由香は「うんうん!組み合わせも。レモンスカッシュの上に、とか」



「クリームソーダって言っても、いろいろ出てくる事になっちゃうね」と、友里絵。



「日替わりだったりして」と。愛紗。



「楽しいね」と、友里絵。にこにこ。



「ねね、空港からさ、菜由はバスかな?」と、友里絵。


「そうじゃない?直通の駅行きはリムジンだし」と、愛紗。



「リムジンバスかー。ああいう運転手ならいいね」と、由香。



それは愛紗も思いつかなかった。


確か、羽田とか成田は公社の運営で

バスを運行していると聞いた事がある。



「そーいうところなら、セクハラとかないんじゃない?」と、友里絵。


「どーかなぁ。まあ、運転手はなさそうだけど。ガイドよりは安全かも。」と、由香。



リムジンバスは、大抵ハイデッカーだから

運転席だけが一階。

客席は二階なので、確かにセクハラはなさそうだけど・・・。


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