第75話 夢のなかの旅
愛紗の乗っている、寝台特急「富士」は
東海道本線を快調に下っている。
最高速度110km/h、明確に決まってはいない。
非常ブレーキで600m以内に停まればいいのだけれど。
この、沼津付近は
直線で平坦なので、かつては速度試験が行われたりした。
電車や機関車の最高速度を試すのである。
160km/hくらいは出せたとの事だが
確かに、しばらくの間何も無い。
車窓は、水田や工場などが存在する地方都市らしい雰囲気に
なってきて。
そろそろ「懐かしいな」と。誰もが思うような長閑さになってきた。
ひとりでのんびりしていると、愛紗も空想する。
「大分に着いて、ホームで、そうだ、スタンドのおばさん、元気かな。」
大分駅の改札の横に、昔ながらのうどんのお店があって。
関東なら駅そば、と言うところが、関西から西はうどんなのが
面白いけれど。
そこのおばさんが元気で朗らかで、愛紗は「こういうお母さんならいいな」と思ったりして。
いつも、ここで久大本線に乗り換えて、庄内のおばさんのところに
行くのだった。
のんびりとしたディーゼル機関車に引かれる、青い列車は
なんとなく、このブルートレインに似ているけれど
座席車で、時々修学旅行用、なんて団体列車で
使われるみたいな雰囲気だった。
「駅のお仕事を手伝ってもいいなぁ」
大分駅では、颯爽とした制服の女の子が
改札にいたり。
庄内駅は、おばさんが委託駅員だから。
風景を思い出す。
のどかな山並みにある駅。
木造の古い駅で、種田山頭火の石碑があったり。
駅前は土のまま。駅前は広く
のんびりと、町内バスが走っていて。
「ああいう所のバスならできそう」
なんて、空想するのは楽しい。
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