第31話 思いやり


「帰着点呼お願いします」と


本当は言うが。


大岡山は、馴れ合いなので


鍵を返して、書類閉めて終わり。


朝は、一応真面目にやるけど。



「書類はね、まあ、見れば判るけど。

遅れが沢山出たら、ここに書く。

それと、勤務外ね。送迎のバイトとか。

走らなかったのは赤で、減算。

それで、走った時間と距離を計算して、集計。


まあ、どうって事ないよ。


それでね、車両カードと金庫を、機械に入れれば

自動計算だから、そこは楽。


後は、事故が無ければそれで、終わり。」



愛紗は「ありがとうございます。」


野田は「ん、ご苦労さん。明日も9時でいいよ。」


まだ2日目である。ゆっくり慣れさせないとと

森が言ったのだろう。



「どう?」と、有馬は

木滑に。


木滑は「うん、まあ、誰でもそうだけど。

あの子、トラック経験もないから、大人しすぎるね。

事故でも起こしたら、パニックかもね。それでさ

ふるさとの営業所に転属させた方がいいんじゃないかなー。なんて。」と




野田は「俺もその方がいいと思うな。事故でも起こされたら

その方が困るよ。できればなー。ガイドで居てくれたほうがさ。」


有馬も「本人の希望とは言ってもね。適性がないと

仕方ないよね。それは。」


細川は「まあ、園美の例もあるからねー。女は面倒だな。」と


本音。



「まあ、所長が岩市でなくて良かったよ。」とは

野田。



「本当だ。あれが居たらまあ。話にならないもん。」と、細川。



誰も事務所にいない時間帯は、つい本音が出るのだろう。




有馬は「うん。それじゃあさ、宮崎だったっけな。あっちに聞いてみようか。

まあ、ガイドなら直ぐ要るって言われると思う。きっと。

ドライバーはなー。未経験じゃぁ。」と



車内のIP電話で掛けて見る。


全国どこでも、無料だから。



「もしもし、あー、東山急行の大岡山営業所、運転課長です。


そうそう、お元気ですかねーぇ。」

有馬も、元々九州である。



「都井あたりかねぇ。営業所。あそこでドライバーは?あ、足りない?そうだろうね。

それでね。21の女の子だけど。ガイドからの転身で。

でもねー、そっちの子だから、何れホラ。結婚とかさ。

おとなしい子だから、こっちだとちょっと、危ないかもしれないし。


そうそう、セクハラとかね。あはは。


...そう。うん。判った。聞いてみるね。ありがと。」



野田は「どうですか?」


有馬は「うん、まあ、ガイドならね。あっちは観光メインだから。

ドライバーも不足だけど。できればね。路線で使えるくらいに

教育してからなら、って。」



野田は「やっぱりねぇ。教育は大変だもんなぁ。」



木滑は「あっちだったら、研修センターってあるんじゃない?」


有馬「そこに払う金がね。」


細川「なーるほど。こっちもさ、本社研修があるからね。あれが

済んでから渡すかな。」



野田は「本人の希望次第だね。」


おっと、それを忘れてたと


みんな、笑う。


でも、みんないい人で


一銭にもならない事を真面目に考えるのも

それも安全の為。



事故が起きては、業界全体の損失なのだ。

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