第25話 友達

それなので、ご飯を食べて

3人は、お休みを貰いに行こうかと(笑)


会社に戻り、事務所へ。


「あの、すみません」


だーれもいない、事務所。


ひとり、運転課長有馬は、のーんびりお昼寝。


奥にある、和室でごろり。


元は、泊まり勤務の指令の寝床だったので

奥まって静か。


有馬は、少し糖代謝に問題があるので

ご飯の後は眠い。



ゆーっくり、眠っている。


でも、3人も人が来ると、流石に気づく。



「あの、課長。少しお休みが頂きたいんです。」と

愛紗。と、由香。友里絵。


有馬は、のーんびりと半分居眠りで


「あー、判った。中島さんに用紙貰って書いてね。」


と、あっさり承認。(笑)




「信じられないねぇ」

「要らないのかな、あたしたち」

「そうかも」




中島さんは、お母さんみたいな

事務のトップの人。


丸々太っていて、色白。

ちょっと怖いところもあるけど、それもお母さん。



用紙を貰いに行くと、びっくりしていた。


「課長が?、そうですか。」と

淡々と事務処理をしてくれた。

パソコンから紙を出して、理由とか日にちとか書いて

はんこ。



「はんこはあるよね」中島さん



「はい」3人。



点呼で使うので、いつも持っている

免許とはんこ。


ガイドは免許要らないと思うけど、今はアルコール検査の時に

免許のICカードで登録するのが運輸省の決まり。


アルコール検査の時に代理でする人がいたからだった。




3人は、そこに立って用紙を書いた。


「えーと、理由、どうしよう。愛紗はいいよね。里帰りで。」



「それだけ?」



「あたしらは?」


由香は「そーだなぁ、赤木にセクハラされて心が痛いとか。」



友里絵は「あ、それいーねぇ。懲らしめてやるか。」



愛紗は「そこまでするのは可哀想だよ。」




由香は「やさしーなぁ。愛紗。だからかな、たまちゃんも

可愛い愛紗って歌を作ってたとか。」


愛紗は恥ずかしくなって、赤くなる「あ、それ違うの。

スティービーってアメリカの歌手の歌なんだって。

あいしゃ、ってね、スティービーさんの赤ちゃんが

生まれたときの歌、なんだって。」



友里絵は「ああ、そーいえば。東京でミュージシャンしてたとか。

コンビニでバイトしてた時もね、店内放送と一緒に歌ってて。

あたしも音楽好きだから、一緒に。

それで仲良くなったのかなぁ。」



由香「ああ、あの、なんだっけ。えーと、つじあやの。」


友里絵「そうそう、パレードって曲。でも、たまちゃん世代の曲で

あれはカバーなんだって。だから、あたしもたまちゃんも

知ってた。」



「俺のこと?」と、背中から声を掛けたのは


辻善男。


路線ドライバーの中堅だが、深町よりちょっと年上。


短髪、オールバック、がっしり系と

よくいそうなバス運転手。



わりと封建的だけど、根は悪い奴ではなく

新人をいじめようとしたドライバーがいても、同調しなかった。




「ううん、歌手のつじ」と、由香。


辻は「そんなのしらーん」

と、ははは、と笑って歩いて行って。


「お、休暇か、いいなぁガイドは。今、暇だしな。」


路線と違って、観光は仕事がないと走らないから

燃料が無駄にはならないものの、暇な時は収入にならない。


それで、流れ者観光ドライバーは、大岡山で

路線を担当したがるが


そう、簡単ではないことは前述。


路線は難しいのだ。



辻も、一時観光に乗ったが

元は路線だったので、路線に戻っている。


それだけ、路線は人が足りない。





辻が行ってしまって、愛紗は「リフレッシュ休暇でいいんじゃない?」と


東山は、電鉄系なので

そういうところは普通の会社。


時々、休暇をとらないと労働組合からも言われるし

労働省から会社にも勧告が出る。



「何日?」と、由香。


「そーだなぁ、3日くらいか。」と、友里絵。


愛紗「遠いからね。それだと中一日になっちゃうよ。移動で一日かかるから。」


由香「じゃ、思い切って一週間!」


友里絵「おー、いいねぇ。いつから?」


愛紗「そうねぇ。研修があるけど。来週くらいから。」


今日は月曜。研修があるけど、まあ、自分ひとりだし

指令さんも夜勤明けで眠いところを、教官しなくていいから楽かも。



なんて思って。



「あーりまかちょー」と、もう起きてた

お昼寝トドちゃんの、おなかをさする由香。


有馬は「おお、君たちか。」と、寝転んだまま紙を見て。


「うん、行っておいで。今は暇だしね、元気で帰っておいで。

ずっと休んでないし、3人とも。」と。


ガイドは不定休みなので、有給があるとは知らなかった愛紗だった(笑)


観光のある時期は、毎日仕事で

時々、休み。一週間に一度くらいだけど

勤務時間でいうと、朝4時くらいから深夜22時、と

一日で3日分くらい働いている事になる。



観光だと、どうしてもそうなる。観光地への往復が仕事なので

お客さんが遊んでいる間は寝ている(笑)。

それは勤務時間にならないが、本当はそれも仕事である。


それを引いても16時間くらいは仕事の時間になるので


残業、になる訳。



路線は、もう少し法の規制があるので

16時間最長、1行程が12時間まで。

でも、大岡山は電鉄系なので、せいぜい13時間勤務くらいだ

が、岩市の悪知恵で、昼休憩に貸切業務を割り込ませる。

貸切は路線でないから規制外だと言う脱法。(現在は出来ない。

それが発覚して解雇されたのもある)。


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