第23話
今日は珍しくお昼ご飯にカツサンドを購入しており、一口含めばジュワッとタレの染み込んだカツが口内に広がった。
舌鼓を打ちつつ、そばに置いてあったペットボトルに入った烏龍茶を飲み込む。
たまにはと久しぶりにジャスミン茶以外のものを買ったが、これはこれで美味しかった。
由羅は糖質対策とパッケージに掛かれたお茶を飲んでおり、やはり彼女のスタイルの良さにはちゃんと理由があるのだ。
生まれ持ったものはもちろん、それにあぐらを欠くことなく努力を重ねているからこそ、由羅はこんなにも綺麗なのだろう。
「今日、クラスの男の子が由羅さんのこと綺麗って言ってました?」
「本当に?嬉しい」
やはり言われ慣れているのだろう。由羅は肯定も否定もせずに、さらりと流してしまった。
「リユは元気してます?」
「うん。ニャーニャー鳴いて可愛いよ。これとか引っかかれたの」
どこか得意げに見せられた腕には、薄らと引っ掻き傷があった。
彼女の綺麗な白い腕には痛々しく見えるというのに、由羅はちっとも気にしていない様子だ。
「痛くないですか…?」
「可愛いリユからの傷だから平気。それより最近暖かいよね。桜、すっかり散っちゃったし」
たしかに、引っ越してきたばかりの頃に比べれば随分暖かくなっていた。
最近はブレザーがなくても過ごせる日があるくらいで、着々と春との別れを感じているのだ。
あれだけ綺麗な桜も、気づけば全て散ってしまった。
そして梅雨が来て、すぐに夏がやってくるのだろう。そっと季節の移ろいを感じていれば、そばに置いておいたスマートフォンが着信音を鳴らし始めた。
画面には、沖縄にいた頃1番仲の良かった
由羅に一言断りを入れてから、晴那は恐る恐る電話に出た。
「香澄…?」
『ひさしぶり、元気してる?』
我謝香澄は沖縄で1番仲の良かった親友で、連絡を取るのは引っ越し以来だ。
相変わらず明るい声色が、電話口から聞こえて来る。
「どうしたの?」
『実は今度のゴールデンウィークに家族で東京旅行行くことになったの。晴那に会いたいんだけど、空いてる日ある?』
ゴールデンウィークはもうすぐそこまで迫っている。二つ返事をして日程を決めてから、電話を切った。
親友と会えなくなって2ヶ月も経っていないというのに、随分と長い間会えていないような気がしまう。
「沖縄の友達で、今度東京に遊びに来るみたいです」
「そうなの?じゃあ晴那ちゃん、しっかり東京案内しないと」
そう言われても、晴那はろくに遊びに行っていないため、有名な街もよくわかっていない。
沖縄からやって来る親友は間違いなく晴那を頼るだろうが、彼女を上手く案内できる自信はなかった。
「オススメのスポットってありますか?」
「じゃあ、今度の土曜日に一緒に下見行かない?」
「いいんですか?」
また、由羅の優しさに甘えてしまう。
晴那が困っていれば、由羅はいつだって手を差し伸べてくれるのだ。
生まれてこの方東京で育っている由羅であれば、東京にも詳しいから色々と教えてくれるはずだ。
親友を楽しませてあげるためにも、しっかりと由羅から教えてもらう情報を吸収しなければいけないのだ。
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