これって運命?!
さくら 歌緒
第1話 プロローグ
これが、運命でなかったら、どう説明したら良いのか。
出会った事が運命なのか。
それとも、運命だから出会ったのか。
世の中の恋人、夫婦は、皆、こんなにも相手を愛おしく、顔を見るだけで、ドキドキして、いつも、一緒にいたい。
そして、一緒にいない時間は、会いたくて会いたくて、息苦しくてたまらないものなのか。
出来る事なら、ずっと肌を寄せていたい。
「好き」
「愛している」
そんな言葉では言い表せない、体の奥底から、お互いを求める、何かがあるのだろうか。
でも、運命は、過酷で、辛すぎる。
辻田絢香が、この法律事務所で働き出してから、数ヶ月。
この事務所では、2年先輩、年齢では、5歳年上の上司にあたる山本太一に、今抱えている案件の進み具合を説明しようとして、書類を差し出すと、同時に受け取ろうとした太一の手が絢香の手に触れた。
その瞬間、二人の体に衝撃が走った。
それは、静電気とかそういった物理的な物ではなく、何か解らないけれど、体の内側から何かが溢れ出るような、まるで頭のてっぺんから、雷に打たれた様な、いや、心臓がギュッと締め付けられるような、そんな感じ。
ふっと顔を上げ、目が合うと、視線をそらせなくなった。
お互いの心の中が丸裸になったみたいで、すべてを相手に見透されたみたいに思った。
これが、二人の運命の始まり。
初めて顔を会わせた訳ではない。
絢香がこの事務所に来て数ヶ月、太一の下についていた。
その間、本当に、何も、何も感じなかったし、お互いに、ただの、同僚、先輩と後輩以上の関係も、以下の関係も全くなかった。
絢香が、この事務所に入所した頃、太一は、幸せの絶頂。
結婚2年目で、なかなか出来なかった子供がやっと出来て、数ヶ月後には、産まれるという時。
絢香もまた、学生時代からずっと付き合っていた、彼氏の裕紀との結婚が長い春を経て、やっと決まって、この上も無い幸せを掴んだ時だった。
二人とも、それぞれの人生を生き、それぞれの人生を全うしていくものだと信じて疑っていなかった。
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