青春パステルレイン

@kagura0530

第0話 プロローグ~当たり前の今を力いっぱい握りしめて~



昔からある程度の事は何でもできた。勉強で困ったことはあまりないし、

友人関係や恋愛なんかも持ち合わせのコミュ力や相手の顔色や呼吸の

仕方、仕草なんかを観察して、トラブルになりそうな時は間に入り、

そうでない時は普通ボケ役に徹したりツッコミ役に徹したりしてなんとか秩序

を保っていた。今思えば自分の立ち位置や自分のできる最大限のことをよく理解していたように思う。中学時代では入っていた部活、陸上部の200M

で県1位で全国大会に出て、全国ランキング8位にまで昇りつめたこともあった。




こんな武勇伝は過去の栄光に過ぎないけど、それでもその生まれながらにして

持った才能は、当時の俺にはまだ早かった。



事の始まりは中学3年生の、受験を控えた年のある日、あるクラスメイトの

靴が亡くなった。そのクラスメイトの名前は安生拓斗。安生とは幼稚園からの

幼馴染み仲が良く、クラス替えの結果を知ったとき飛び跳ねるほどうれしかった。

それから毎日一緒に過ごすうちに、なんだか安生がお絵から距離を置くような

態度を取ってきた。遊びに誘っても「僕はやめとくよ、」、「他の子のほうが楽しいよ」の一点張りで、ついには全く話さないようになった。それから2か月くらい

経ったんだろうか、ある日、俺は消しゴムを落とした。ちょうど安生の方へ転がっていったのっで、「悪い、拓斗、消しゴムとってくれない?」と、お願いをした。

何故かクラス中から視線を感じ、俺は照れるように目をそらした。。それに、久し振りに話したということもあって、俺は少し緊張していたのかうまく目を合わせられなかったのかもしれない。すると前からのそのそと周りの目を気にするような眼で近寄り、「無理して僕と話さないでいいよ」と、今にも消えそうな声で、全てをあきらめた声で、放たれたそれは、まるで捨てられた猫のようだった。



その時、俺の中で今までかろうじてせき止められていたダムが壊れた。

冗談じゃない。避けてるのはそっちだろ?急にどうしたんだよ、

言いたいことはたくさんあった。その感情が俺の体を乗っ取るのには

そう時間はかからなかった。「ふざけんなよ。」胸ぐらを掴んだ。

そして何かを祈る気持ちで、力いっぱいに殴った。



その後、二時間にも及ぶ説教を受けた後、二人に和解の空間が与えられた。

保健室のようなところ、見たこともない空き教室に、喧嘩したばかりの

少年が二人。どこかほこりっぽくて、体育館のようなにおいがする。

あまり落ち着いて、冷静になって話せるような環境ではないな、なんて

客観的にこの状況を眺めているもう1人自分が言う。まただ。

まるで自分の背後にもう一人冷静な自分がいるかのような錯覚に陥る。

頭を抱えていると、どういうわけか、安生の左足が、やけに汚れていた。

右はきれいだったので、不思議に思い、「どうして、左の靴を履いていないんだ?」と聞くと、「いじめられてるんだ。近藤たちのグループに。だから君にも火種がいったらだめだと思って避けてた。」安生は悔しそうに、

は?なんだそれ。

「なんで相談してくれなかったんだ。。親友じゃないか」

安生は黙ったままだった。



俺は感覚派だ。考えるよりも先に行動する。話の末に安生はその日早退

した。帰り際に、「後は俺に任せてくれ」そう言うと、安生は

曇天のない笑顔でうなずいた。その日は雨が上がった後らしく、安生の

笑顔を形付けるように、かすかに消えかかった虹がさしていた。

その3時間後、家に帰ってきた母親により、安生は遺体として発見された。

自殺だそうだ。知らせを知った俺は急いで安生のいる病院に行った。

708号室、3階だ、エレベーターに乗り、3階へ向かう、

「チン」という合図とともに扉が開くと、嘆くような鳴き声が聞こえた。

そこで俺は初めて、後悔をした、もしもっと、他の方法を試していれば、、、

彼を救えたのではないか、と。



家に入ると、安生からの手紙を母から渡された。それを読んだときに、俺は決心した。こいつの分も生きて、青春してやる、それでいつか、立派になって

また顔向けすればいい。内容をまとめるとこうだった

「もし君が僕のことで公開して立ち直れないでいたら、代わりに、俺の分まで生きて楽しんでくれ。ちょうど進路で迷っていると聞いたよ、泉ヶ丘学園、僕の第一志望の高校だ。そこの生徒会に入ってくれ、それが僕の夢だったんだ。

なぜ入りたかったのかは、すぐにわかるよ。」


その文章を読んだ時から俺の進路は決まった、













橋本市立泉ケ丘学園高等学校。歴史ある伝統校で部活動多く、野球部やサッカー

部、そのほか多くのスポーツ部は全国レベルだ。その他には、

立命館大学と連携していることもあり学年に一クラス、数にして約40

人が所属することができる”国際科ritsumeikan cource”というものが設けられている。通称立命館コース。泉ケ丘学園の周りは、自然豊かで、川などもあり、

和歌山、奈良、大阪に隣接していることから主にこの3県の生徒が多い。

立命館コースはそれほどに人気で、毎年高校受験にして倍率が7倍を超えている。

その7倍もの競争率を抜け、今年から見事に高校生というわけだ。



「明日翔(あすか)おはよ~」

横から聞なにやら聞きなれた声がしたので、振り向くと、朝からすかしたイケメン顔と春のそよ風に乗ってほんのりとラベンダーのいい匂いがする。背後に咲いている桜とのトリプルコンボで思わず、春だな~なんて柄にもないことを思ってしまった。




佐藤翼。中学からの友人で、俺が誘ったのがきかっけで同じ高校を受けた。

「なんだ翼か、どこぞの演歌歌手と見間違うとこだったよ、あのーもしかして五木ひろしさんですか⁈」

なんてほっとしたジェスチャーで冗談交じりの事を言うと、

「今がっつり”なんだ翼か”って言ってたよね⁈⁈」

よし、今日もつつがなく俺を取り巻く環境は平常運転だ。



かたん、ことん かたん、ことん

廊下を歩く音が二つ。俺と翼のものだ。久し振りに着た制服が心地良い。

廊下の窓から射す太陽の光が、顔や方、他の教室にあたり、乱反射してる。


かたん、ことん かたん、ことん

規則正しいリズムで奏でられるそれは、、昨日放送されたドラマやアニメ、朝に起きたプチ事件などを翼と談笑する朝のひと時のBGMのようなものだ。

窓から射す太陽も、少し眩しい気もするが翼と話している今この状況がなんだか青春を駆ける高校生みたいな感じがして心地いい。


かたん、ことん かたん、ことん、

かたん、ことん かたん、ことん、 カタコトカタコト


…ん?


定期的に鳴る足音が二つ、それとは別に荒っぽくて激しく、

不規則な足音が一つ。

おかしいな、始業時刻は8時45分、現在時刻は8時刻は8時35分

といったところだ。うちの学校はたくさんの地域から登校してくるので、

各要所の駅からスクールバスで学校までくる。そして学校への到着時刻は、

俺達の乗ってくるバスが一番遅い。そして俺たちはその中でも無駄話

をしながらゆっくり来たので、俺たちが一番遅いはずなのだ。

とすると考えられるのは自転車通学ということか。



なんて呑気に考えていると、「おっはー明日翔、翼」という女の子らしいかわいい声と、女子高生のフローラルな香りと、おまけに俺の方だけにこっそりグーパンチを入れて来やがった。クッソいてえけどかわいいから許してやろう。

今回だけな!(n回目)

だがノータッチというわけにもいかないので、一応触れておこう。

「よう悠月、朝から熱心なパンチありがとう、でも君の気持は受け取れないよっ

だって俺はッ、君が大s)ry」ふざけすぎたのだろうか、軽く肩をとんとんされ「私がいつ君に告白したかなぁぁ???^^」




太陽の光以外なんの味気もない無機質な朝の廊下を、三人の明るい雰囲気が

響いて、乱反射して、今いるこの当たり前の日常が、時間をが

パステルレインのようにカラフルな色に染まった。


























  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

青春パステルレイン @kagura0530

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ