第138話
宰相が話し終わった後、まず初めにカイが玉座の間から出て行くこととなり、兵士に引っ張られながら出た。
来た道を戻って牢屋に戻るのかと思ったが、兵士は違う所に向かい始めた。
「牢屋に戻るんじゃないんですか?」
「黙ってついてこい」
カイが聞くと、兵士は強めに鎖を引いてくる。突然な事だったため引っ張られてよろける。
「もう口を開くな」
言われた通り、目的地に着くまでおとなしくついて行った。
言われた場所は朝まで居た牢屋と見た目はほとんど一緒で、違う箇所と言えば部屋の大きさと、頑丈そうな扉があるかだった。断然小さくなっており、ある物と言えば、1人しか横になれないサイズの藁ベッド1つしかなかった。
そんな部屋にカイは雑に押し込まれる。
「今日からこの独房がお前の部屋だ。次に外に出た時がお前の最後だ。分かったな」
そう言って兵士は大きい音を立てて扉を閉めて遠くに行く。扉を閉められたことで部屋は真っ暗になる。
カイは藁ベッドの上に座り、魔力感知を集中させるために目を瞑る。すると、床の下で微量の魔力が動いていることが確認できた。そして、自分の魔力が地面に吸収されていた。
(人が抜かれても気づかない量の魔力が動いてる。こうすれば…)
カイは自身の体内にある魔力を集中して流れ出さないようにする。
流れ出さないようにしてからカイは再度魔力感知で周りに人がいないか調べる。人がいないことが確認できたカイは手に小さな炎を生み出し地面を見る。
地面は石で出来ており、何も書かれていなかった。カイは炎を作っていない手で藁ベッドをひっくり返す。すると、一か所だけ石のブロックが埋められたような場所を見つける。カイは手と石のブロックを氷でくっつけ上に持ち上げる。持ち上げたブロックを横に置き、ブロックが無くなったところを見る。そこには魔法陣が書き込まれていた。カイが炎を近づけると、急速に魔力が抜かれる感覚があった。カイは急いで手を遠ざけ石のブロックを見る。そのブロックにも下の部分に魔法陣が彫られていた。
(下の魔法陣が吸う物でブロックの方は吸う魔力を調節する物って所かな?でもこの魔力はどこに…?)
カイは部屋を元通りにしてから藁ベッドに座り直し魔力感知を使う。
他の独房にも人が入っているのか、魔力が流れているためその魔力辿る。
流れている魔力はある一か所に集まると、消えてしまって追えなくなってしまった。
一瞬で吸われた魔力が使われたか、
数時間考えた所でカイは一か八かあることをすることにした。
再度魔力感知を使い人がいないことを確認する。藁ベッドをどかし、先程と同じ様に石のブロックをどかす。
カイは1度深呼吸して下に書かれた魔法陣に手を向ける。カイは手に魔力を溜めてから一気に解放する。すると、面白いように魔力が吸われていく。
カイにとっては魔力を流したのは1分程だと思っていたが、実際は一瞬だった。
持っていた魔力がほとんどなくなったため焦って魔法陣から離れる。
「ハァ、ハァ…」
息を切らしているがその甲斐は合った。
カイが魔力を流して少しすると、さっき魔力が切れた所から先を追うことが出来た。そして、その先に膨大な魔力の塊を見つける。その魔力の塊は10人なんて少ない数では無く、100人が魔力が満タンの時と同じ量以上の魔力は保有していた。
(こんなの何に使うんだ!?使い道なんて…)
カイは立てずに地面に寝そべっていると誰かが歩いてくる。
今の部屋の状態を見られてはマズイと思っているが、体を動かすことが出来ない。
カイが何もできずに横になっていると扉が開かれた。
「大丈夫、カイ君…ってどうしたの!?」
入って来たのは白ローブだった。
「何かされたの!?」
白ローブはカイに近づき肩を揺らす。
「大丈夫です。魔力が無くなっただけです」
カイは白ローブに支えられながら上半身を起こす。
「あの石の、ブロック、地面に、戻して、貰って良いですか?魔法、陣が下になるように」
扉が開けられたことで光が入り、中がしっかり見えるようになったため白ローブはカイに言われた物がすぐに分かった。
白ローブはカイに言われたように石のブロックを元に戻す。ついでに藁ベッドも戻す。
「何をしてたか分からないけど今は逃げるよ」
白ローブはカイに肩を貸し立たせる。
独房から出ると1人倒れている兵士がいた。おそらく見張りの兵士だろう。事前に白ローブが逃げるために倒していた。
「なにこの魔力!?」
「移動しながら言います」
逃げるために魔力感知を使った白ローブは驚く。カイは肩を貸してもらいながら先程したことを説明した。
城を出ても白ローブに肩を貸してもらい、2人は路地裏まで来た。
「カイ大丈夫?」
その路地裏にはミカがいた。カイが何故いるか聞く前に白ローブが話し出した。
「ミカに君の現状を聞いて急いで助けに向かったんだよ。昼間はさすがに兵士が多くて助けられなかったから夜になっちゃってごめんね」
白ローブはミカにカイを渡してからカイに向かって頭を下げる。
「助けてもらっただけで嬉しいです。ありがとうございます。それに夜に脱出したおかげで騒ぎになってないみたいですし」
白ローブに感謝の言葉を言ってからカイは疑問に思ったことを聞く。
「白ローブさん、俺は皇子を誘拐した可能性があるんですよ?疑わないんですか?」
「それはね…」
白ローブが訳を言おうとしたところでガシャガシャと音が響く。白ローブは喋るのを止め警戒し始める。
路地から騎士と兵士が検問所の方に向かっているのが見えた。だが誰も路地裏に入ってくることは無かった。
「バレたね。ワケは帝国で話すよ。2人は急いで王都から脱出して帝都に向かって。ミカ、後はお願い」
「うん」
白ローブは一方的に言うと屋根に跳び乗って見えなくなった。
「白ローブさんが今から騒ぎを起こしてくれるから、その間に逃げよ!」
まだ1人で歩けないカイはミカに肩を貸してもらいながら移動し始めた。
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