第127話
カイとミカがラウラに修業をつけてもらっている頃、アルドレッドとセレスは帝国の城の中を歩いていた。2人とも姿が変わっており、セレスはいつも通りローブを着ていて色も黒といつもと同じだが、胸の部分に白色の刺繍が施されていた。その刺繍は空を飛んでいる鳥を横から見た姿を模った物で、帝国の国旗に含まれている物だった。そしてアルドレッドは大きく変わっていた。騎士らしく甲冑を着ていた。
そんな2人は文句を言いながらある場所に向かって歩いていた。
「はぁ~、ルナに剣術を教えてたってのに緊急招集かけるか…」
「しょうがないわ。早く終わらせてルナの所に戻るわよ」
2人は前に城にいた時同様に『ルナ第2皇女の護衛』の指令をこなしながら、ルナに剣術と魔法を教えていた。
今日も特訓していたのだが、緊急招集がかかり団長室に向かっているのだ。
「にしてもあの書類の量は異常だったな…」
「そうね。まだしてる人の話しだと、これから捕まえる人が出たら私達も書類仕事に
戻る可能性があるそうよ」
白ローブから受け取った証拠を元に少女と一部の近衛騎士団員が協力して王国に情報を売っていた者達を捕まえたのだが、その中に騎士と兵士も数名いたのだ。そのことを知った皇帝は近衛騎士団だけに騎士および兵士の素性と勤務状況を一からを調べ、怪しい者を捕縛するように命令したのだ。
その作業真っ最中に2人は帰ってきたのだ。
帰って来たらいきなり山のような書類があったため、何かの悪戯かと他の騎士団員に聞こうとしたが、皆が目の下にクマを作っているのを見て、冗談ではないと理解して2人とも顔をひきつらせたのは記憶に新しい。
そんな多忙な作業が終わって数日、今は捕まえた者達を尋問する人達とそうでない人達に分かれている。アルドレッドとセレスは尋問をしない組みだったため、通常任務に戻りルナの護衛兼指導をしていた。
2人が団長室の前に着き、ノックをすると「入って」と言われ2人は入る。
「急な招集ですみません」
そう言う団長は書類仕事をしており、2人が入って来て、区切りの良いところになると書くのを止めて、2人を見る。
「今日呼んだのは2つです。まず1つは、あなた達がいない間に帝国ではモンスターの増加と言う問題が起きています。それの原因排除をあなた達にお願いします」
「待ってください。原因排除と言うことは調査は済んでるということで良いですか?」
「いえ、調査は今難航していて、全く動いていません。そして今調査をしている騎士と兵士達は城と帝都の防衛に戻します」
「私達2人でするんですか!?」
2人だけで、帝都の周りをくまなく調べるのは不可能だ。セレスが魔力感知が出来ると言っても無理がある。
「いえ。あなた達2人だけでは不可能ですのでもう1人います」
「団長、最後の1人が誰か知りませんが、3人で帝都郊外を調べるのは無理がありすぎる。その上俺は魔力感知を使えません。人員は増やせないんですか?」
「人員は増やせません。最後の1人の存在を知られるわけにいかないんです」
「俺たちは知っても良いと?」
「はい。あなた達を呼んだ2つ目はその者についてです。先程2人の王国での活動記録を見せてもらいました。その中にいくつか気になった物がありましたが、それは今回の任務が終わったら聞きます。白ローブについてです」
定期報告で聞いた時に味方だと連絡が来たが、詳しくは帰国した時に教えると言われていた2人は白ローブの正体を知れると思った。
「彼女の正体ですが、私からは言えません。私が言えることは、彼女は書類上で死亡したことにしています。彼女が生きていることを他の者に絶対に教えないでください」
白ローブの正体が気になるが、団長の言うことのため2人は言うことを聞く。
「任務の話しに戻りますが、魔物の増加の原因を彼女とあなた達2人で調べてもらいます。ただ彼女は王国に戻らないといけませんので、長くて1週間程です。お願いします」
「分かりました」
「了解しました」
「連絡では彼女が帝国に着くのは2日後の様なので3日後にこの部屋に来てください。それまではいつもと同じにしていてください」
2人は最後にお辞儀をしてから団長室を出る。
団長室を出た2人は、ルナと訓練していた城の中に設置されている訓練所まで戻るために移動し始める。
「にしても、何者なんだろうな」
「それに関してはいずれ教えてもらえるわよ。帰国したら教えるってあったんだから」
「それもそうだな」
「それより、問題はルナよ。やっと一緒に訓練できるって喜んでたのに、3日後にはまた出来なくなるのよ?あの子拗ねちゃうわよ?」
セレスが言ったことを容易に想像できたアルドレッドは手で目を隠す。
「…どうするか」
「どう調査するかよりも、先にルナのことをどうするか考えましょう」
2人は色々意見を出しながら訓練所まで移動したが、良い案は浮かばなかった。
「…ってことで3日後には違う任務をしないといけなくなった。すまん」
「ごめんなさい、ルナ」
2人が頭を下げる。2人の予想では文句を言うか拗ねるかと思っていたが、予想外の答えが返って来た。
「そっか…。2人とも頑張って!怪我に気をつけてね」
予想外すぎる答えに2人は固まるが、ルナが拗ねたりしなかったことに安心しきって見落としていた。ルナが何か企んでいる顔をしていたことを。
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