第116話


 11、12階層ではカイがラプチャーキャメルの対応をずっとしていた。そして13、14階層ではミカが主力で進むこととなった。

 ロック鳥が羽ばたく音がした瞬間にミカが雷を放ち、落ちたロック鳥をカイとルナで倒していた。とどめを2人がやっているとは言え、ミカの負担はデカかった。ダンジョンが広くなったためかモンスターに遭遇する回数が増えたのだ。


「魔力は大丈夫そう?」

「この後どのくらい戦うか分からないから何とも言えないけど、このペースだったら帰りも持つと思う。ただこれ以上多いと危ないかも」

「…14階層からは俺とルナも魔法を撃って対処しよう。ミカの魔力消費を少なくした方が良いと思う」

「そうしよ。飛んで行くのは遅いけど、私も麻痺させられるから私がミカの役をやるよ」


 14階層からの作戦を考えてから探索を再開する。




 作戦会議をした後でロック鳥を6体倒したところで14階層への階段を見つけた。

 階段を降りると、ダンジョンはより広くなっており、ロック鳥が3体が同時に飛んでものびのびできるくらいの大きさになっていた。

 階段のある部屋から次の部屋に移動するとさっそくロック鳥と遭遇した。

 ロック鳥は2体でこちらに気づいていない。


「麻痺は同時に出来る?」

「大きいけど…。狙ってみるけど、たぶん外す」

「じゃあ、麻痺したら俺とミカで突撃。麻痺できなかった方は俺が対処するよ」


 ミカとルナが頷いてすぐにルナは闇の塊を2つ作りロック鳥に向かって飛ばす。片方の闇は当てることが出来たためロック鳥は地面に音を立てて落ちる。もう片方のロック鳥は片方が地面に落ちるのを見て急上昇する。そのため闇を当てることは出来なかった。

 ルナが撃った瞬間に2人は前に出ており、残ったロック鳥はミカ目掛けて急降下して来る。

 カイは急降下して来るロック鳥に向かって炎の手を伸ばす。それに気づいたロック鳥はその場で停止して避ける。その隙にミカが倒れているロック鳥に近づき心臓を一突きする。炎の手を避けたロック鳥は安心しきっていたが、その手は伸び続けロック鳥の真後ろまで静かに伸びていた。背中が熱いと思ったのか振り向いた時にはもう遅く、ロック鳥は巨大化した炎の手の中にいた。

 燃え尽きて灰となったロック鳥を下した後でカイは炎の手を解除する。


 良い状態の方のロック鳥を回収した後でカイ達は15階層に向けての階段を探すために移動し始める。

 今回15階層のボスをカイもミカも調べていないため、どのモンスターが出るか3人とも全く知らない。唯一知っているアルドレッドに聞いても良いのだが、これから冒険者をして行くならばこのような状況にたくさん会うと思い今回はあえて知らない状態で来た。

 ボスに向けて魔力感知でモンスターに遭遇しない様に進んでいたらロック鳥3体で出来たの集団と1回戦うだけで階段を見つけることが出来た。


 15階層に着いて休憩している時、3人はソワソワしていた。今までは知っているモンスターだったり、知らなくても近くにいる人がどのようなモンスターか教えてくれた。だが今回はそれが無い。3人はそのことを不安に思うと思っていたが、いざ目の前にしてみると、楽しみで仕方なかった。

 しっかりと休憩出来た3人はボス部屋の扉に手をかける。


「お前らなら大丈夫だと思うが、万が一があったら俺も戦うからな」


 アルドレッドの言葉に3人は同時に頷き扉を開ける。




 扉の先は先程と変わり普通の温度になっていた。

 そんな部屋の奥に二本足で立つ一頭の牛がいた。遠くて正確な大きさは分からないがおそらく3mほどあり、人間と比較すると異様な量の筋肉がついていた。そして頭にある角は突き刺されたら一たまりもない見た目をしていた。


「あれはミノタウロスだ。気をつけろよ」


 そう言ってアルドレッドは大剣を抜いた状態で扉まで下がる。


「とりあえず俺が前衛で、ルナが後ろで支援。ミカは高速移動で遊撃で良い?」

「分かった!」

「魔法当たらない様に気をつけてね!」


 それを聞いたカイは手に炎を纏わせてミノタウロスに接近する。ミカも前に出るが、カイよりは接近しない。最後にルナは一歩後ろ下がり魔法をいつでも撃てる様に準備する。

 接近したカイはミノタウロスの腹目掛けて殴りかかる。ミノタウロスはそれを防がなかった。

 カイは全力で殴ると、ミノタウロスの皮膚の硬さは異様だった。だが、ミノタウロスが予想しているよりもカイのパンチは強かったのか後ろに3歩下がる。


「モォオォオオオオオォオオオオオ」


 カイの一撃をくらったことで怒ったミノタウロスは雄叫びをあげる。その叫びはとてもうるさく、カイはその場で耳を塞ぎながら後ろに下がる。

 ミノタウロスが下がった瞬間に、高速移動を使ったミカがミノタウロスの前に現れミノタウロスの首を斬ろうとする。だがそれに気づいたミノタウロスは斬られまいとミカに向けて腕を伸ばす。その腕でミカの槍を受ける。腕を切られたと言うのにミノタウロスはミカに向けて手を伸ばし続ける。ミノタウロスの首まで跳んでいたミカはその腕を避けることが出来ないかと思われたが、腕に水が当たり軌道がずれる。地面に着いたミカは安全のため後ろに跳ぶ。


「ありがとうルナ!」

「これくらい大丈夫だよ」


 そう言ったところで離れた所にいたカイが合流する。


「打撃は全くダメ」

「斬撃も望み薄いかも。筋肉が厚すぎる」

「今の所魔法しかない」


 ミノタウロスを見ながら報告していると、ミノタウロスが頭を下げ突進しようと行動し始める。


「あれは俺が受け止めるから2人は魔法を撃って」


 そう言ったカイは地面に手を当てる。

 ミノタウロスは角で突き刺すつもりで突進をする。カイは勢いがつく前に氷の壁を作り突進を受け止め、受け止めた瞬間にミノタウロスの腹の下から鋭利な氷を出す。氷が深くに刺さったため、ミノタウロスが腹大量の血を出す。さすがに生命の危機を感じたのかミノタウロスは立ち止まる。立ち止まった瞬間にカイは氷の壁を消す。壁が消えたと同時にミカが雷で作った槍をミノタウロスに向かって投げる。ルナはミノタウロスの口を覆うようにして水を放つ。

 雷が当たったミノタウロスは叫び声をあげようとしたが、顔に水がへばりついて息を吸えない。ミノタウロスは暴れるが、腹に氷が刺さっているせいで動けない。

ミノタウロスが腹から血を大量に流しながら、息の出来ない状況がしばらく続くとボス部屋の扉が開かれた。

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