第97話
ミカはラウラと同じ部屋で寝ることになり、カイは以前使った違う部屋で寝ることになった。ミカは初めて感じ取る感覚に戸惑って動けずにいたが、ラウラに手を引かれるようにして連れていかれた。部屋に残ったカイはこのような方法で魔力感知が出来るようになるとは思っていなかったため固まっていたが、5分程したら理解できたため、慣れた足取りで寝床に向かった。
翌朝カイが起きた後、ラウラとミカが作った朝食を食べた後、さっそく特訓を開始した。
特訓内容は、まず初めにラウラがミカの実力を知りたいと行くことで模擬戦をすることになった。
距離を開けてラウラもミカも武器を構える。
「始め」
カイの合図で模擬戦が始まった。ミカもラウラもお互いの戦い方を知らないため最初は様子見から始まるかと思われたが違った。ミカは最初から足に雷を纏わせた高速移動で急接近する。ラウラは一瞬だけ驚いた顔になったが冷静に自分を中心として強風を生み出すことで対処する。ミカはその風に阻まれて近づけず止まる。ミカが止まったことで魔力感知どころかラウラは視認することが出来た。ラウラはすぐさまノーモーションで風の塊を撃つ。その風は学生が放つ魔法とは桁違いで速い物だった。今までのミカならば放たれたと気付くことも出来ずに当たっていただろうが、今は感知が出来る。ミカは槍で斬ることで風を消滅させる。それを見たラウラは少し口角を上げる。ラウラの予想では避けることは出来ず、防ぐので精一杯だろうと思っていた。だが、ミカは風を斬って消滅させた。それはミカが「この魔法ぐらいだったら避けるどころかこうやって対処できる」とラウラを挑発しているようだった。
ラウラはわざと挑発に乗るようにして、風を同時に3つ作り出し自分の後ろで待機させる。そして新たに風を2つ作りミカを挟み込むようにして飛ばす。ミカはそのうちの片方を斬って消滅させ、もう1つは避ける。避けた直後、足に雷を再度纏い直してラウラに一直線に向かう。ラウラはミカが足に魔力を集中させ始めた瞬間に目の前の地面に向かって待機させていた風の1つを撃ち込む。一直線に来ていたミカは急停止してから後ろに跳び避ける。ラウラは次にミカが退いた先に風を撃つ。ミカは何とかそれを斬って消滅させるが、焦ってしまい大振りになってしまった。そのため振る抜くよりも前にラウラが最後の風を撃ち込む。ミカは体勢が悪い中、高速移動で避けたため、いつもよりも足に高い負荷をかけてしまった。ミカは止まると、再度駆け出す。まだ纏っている雷を解いていないため高速移動が出来た。今度は周り込み後ろに出る。後ろに移動した瞬間、ラウラが動いていないのを見て油断したミカはラウラが後ろに向かって突き出してきた杖に気づかず、その突きをくらい後ろに飛んでいく。
数回転がった後、ミカは転がった勢いを使い起き上がる。するとラウラは休憩なんてさせないと言わんばかりに5つもの風の塊を撃ってくる。すべては刃のような形になっており、ミカは転がりそのうちの3つを避けると、遅れて飛んで来た残り2つに斬りかかる。たが先程と違い刃と刃のぶつかり合いだったためか消滅させられず、逸らすことしかできなかった。
逸らすことが出来たミカは、雷で槍を作りそれを握る。振りかぶりその槍を投げると、高速移動を使い接近する。ラウラは風を纏わせた杖で槍を叩き落す。それと同時にミカが目の前に現れ、槍を振るのではなくラウラの杖を蹴る。しかもその蹴りは雷を纏わせたまま。高速で蹴られたことでラウラは杖を手放す。ミカは蹴りを放った足を地面につけて、懐に入ろうとしたが出来なかった。
先程蹴りを放った足が激痛を発したのだ。先程の無理な体勢での高速移動と蹴りは反動が強すぎてミカの足が耐えられなかったのだ。
その場で足を抱えて座り込んだミカの目の前には、風を纏った腕で攻撃しようとしているラウラがいて、その手はミカに当たる寸前で止まった。
模擬戦が終わった後、歩けなくなったミカをカイが背負い家まで移動した後で、ラウラが持って来た袋にカイが作った氷を入れて、タオルで巻いてからミカの足に当てた。幸いにも痛むのは蹴りを放った足だけだった。そしてラウラがミカの足の状態を診る。その間カイは心配そうにミカを見る。
「ミカ、さっきの高速移動は反動が強いでしょ?」
「はい…。まだ移動にしか使えません。それも長時間使うのは無理です」
「ん。蹴りに使うのは初めて?」
「模擬戦とかでは初めてです」
「蹴りには使っちゃダメ。魔力を纏っていてもダメージがある」
ミカの足はラウラの杖を蹴ったであろう所が腫れて赤くなっていた。
「蹴りの威力が強すぎて自分にダメージが来てる。対策出来るまでは使っちゃダメ」
「分かりました」
そう言うとラウラは立ち上がり、奥の部屋に行く。
今まで心配そうに見ていたカイはいつの間にか安心したような顔になっており、椅子に座ってから話し始める。
「もしかして体術で蹴りを中心に教えてって言ったのもこれのため?」
「うん。高速の蹴りとか強いかなって思ったんだけど…。ダメだった。実際に蹴ってみたらこんなに痛いって思わなかったよ」
「でも使いどころとしては良い線だったと思う。後は反動さえどうにかしたら完璧だよ」
話しているとラウラが何かの瓶を持って戻って来たため、カイは席から立つ。
「これ飲んで」
そう言ってラウラは瓶の蓋を取りミカに渡す。ミカは少しだけ飲むのを躊躇いながら飲む。全て飲んでから少しすると、腫れていたミカの足が元通りになる。
「それは回復薬。帝国にあったから買って来た」
ミカが恐る恐る立ってみると、先程の痛みは消えていた。
「念のために今日は魔力だけにして明日から体術も特訓しよ」
その後3人は数日間特訓漬けの日々を過ごした。そのため2人は数段レベルアップすることが出来た。
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