第66話
学園が再開する限界まで遠距離戦の練習と氷に手に纏わせる魔法の改造を行ったカイは寮の自室に戻ってきていた。
総合第一学園の中期の予定は、前期には1回しかできなかったクラス単位でのダンジョン探索と学内対抗戦を行う。
カイにとってはどちらも避けたいイベントだが、どちらも強制参加のため逃げることは出来なかった。
明日、初日は各クラスに集まることになっており、午前で終わることになっていた。
どんなことをするかは聞かされていなかったが、皆が前期の最初と同じでガイダンスだけだろうと予想していた。
「お父様!!これは本当ですか!?」
「あぁ、王国とやり取りをし、することにした」
「私は反対です!!」
帝国の帝都「パシフィズム」にある城の玉座の間で声が響き渡る。
そこで男と15歳くらいの少女が言い合いをしている。
男は玉座の間にある豪華な椅子に座っているため皇帝だということが分かる。
また、玉座の間にはこの2人の他に女性が2人いて、1人の女性は皇帝の隣の椅子に座り、残りの1人は叫んでいる少女の隣にいる。
「ルナ、これは決まったことだ。それを言っても変わらないぞ」
「お姉さまは黙ってて!!こんなの罠だわ!!」
「私もそう思っている。だが、お父様が大丈夫だと判断し、決めたんだ」
「でも」
「ルナ」
ルナと言われた少女とその姉が言い争いをしていると皇帝が止める。
「私も王国が何か企んでいることは分かっている。だが、いつまでも王国と争いをし兵士を傷つけるわけにもいかん。だからこそ、ここで「帝国にはかなわない」と王国に知らしめるべきだ」
「あの3人からの情報で王国の技術はとても低いことは私も知っています。ですが!わざわざお父様が赴く必要は無いはずです!!万が一があったらどうするのですか!!」
「その万が一が起きることは無い。今回はルナの所の学園長も来る」
「学園長を!?ですが...」
男が大丈夫だと言うが、少女は頑なに反対する。
「彼女がいるのだ。何が起きても大丈夫だろう」
「その油断が危ないと言ってるのです!!」
「ルナ、大丈夫よ。この人も戦えるんだからもしもの時は戦うわ」
「お母様まで...」
ルナと言われた少女が反対だと言うが3人は大丈夫だと言い続ける。
「...私は王国の生徒との対抗戦なんて反対です!!」
それだけ言ってルナが部屋から出て行く。
「ルナ!! お父様、お母様、私も失礼します」
ルナにお姉さまと言われた女性もルナを追いかけて出て行く。
「心配してくれるのは嬉しいが、あそこまで反対されるとはな...」
「本当は私も反対ですからね?自分をエサに調べようとするなんて」
今回帝国には王国に「お互いの国が誇る学園の生徒同士で対抗戦をしたい」と書状が来た。それだけだったらまだ良いが、「こちらでは行える場所の準備が終わっている」とも書いてあった。
今まで何度も何度も攻められてきたが、帝国は王国とも和平が結べる可能性を信じていた。
そうは考えてはいるが、さすがに皇帝が王国に行くことを大臣達は最初は反対した。したのだが、皇帝が「ここで帝国との差を王国に教えるべきだ。ここは私を信じてほしい」と言ったため渋々納得していた。そのため帝国は王国と対抗戦を行うことにした。
だが、皇帝もこれ以上帝国に敵対する考えがあるならそれなりの対応をしようとも考えていた。そのため皇帝は自分を使い王国がどう考えているのか調べるつもりだった。もし、何も起きなければ後日和平を持ちかけ、攻撃してきたら戦争をすることも考えていた。
「彼女を連れて行くのだから、かすり傷がつく可能性もないだろう」
「私も彼女のことは信用しています。ですが、何があったか分かりませんが、彼女は王国を酷く憎んでるようでした。問題を起こさなければいいんですが...」
「だ、大丈夫だろう...」
護衛として連れて行く者を心配しながらその後も皇帝と皇后話していた。
カイはFクラスの教室で机に伏せて、周りからは寝ている様に見えていた。だが、実際は魔力操作を体内でしていた。
そんな中、担任が来たためカイは顔を起こす。
「これから中期の予定を言う。しっかり聞いとけ」
担任にそう言われ立っていた生徒は席に座り始める。
「中期の予定だが、事前に説明していた予定と変更が起きた。まず、ダンジョン探索と学内対抗戦は予定通り行う。だが、ダンジョン探索は今回はFクラスから入ることになった。1週間後だから準備をしておくように」
ダンジョン探索の話しになると一部の生徒の顔が険しくなる。その生徒は前回カイと組んだ人たちだった。前回のことがあったため、かなり不安なのだろう。
「次に学内対抗戦だが、今年は各学年ではなく、全校生徒で行うこととなった」
生徒達が騒ぎ出した。
「せ、先生!上級生と戦うんですか!?」
「そうだ、今年は全学年で行う。もう決まったことだ」
まだ、生徒達が騒いでるが担任は話し続ける。
「次に学内対抗戦の1ヵ月後に学園対抗戦をすることになった」
先程よりも生徒達が騒ぎ出す。
「この学園対抗戦は、後期に予定してる帝国との対抗戦の選手を決める物になるそうだ。詳しいことは近くなったら連絡するそうだ」
その後も連絡事をしているが、ほとんどの生徒が聞いていなかった。
「やっと着いた」
カイの周りがそんな状況になっている中、帝国についたラウラも情報収集を始めようとしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます