第2話
カイは教会からの帰り道馬車に乗りながら考えていた。
(適性魔法なかった…!?適性魔法ないってあんのかよ!?)
そんな悪態をつきながらも馬車は家についてしまった。馬車の中では父親と話すことは一度もなかった。
家に着いてから時間が経ち、夕食の時間となった。食事の席にはカイ以外に5人の姿があった。
教会にいた父親であり中級貴族であるクノス家の家長であるグラード、母であるローザ、長男のグイ、次男のレイ、四男のパピットであった。
食事が始まる前にグラードからカイの適性検査の結果が発表された。
「カイに適性魔法は無かった」
そのことを聞いた家族たちは最初こそは驚いたがその後それぞれ違う顔になった。
ローザとグイは冷たい目をカイに向け、レイは一瞬だけ心配そうな顔になったがすぐに真顔に、パピットはニヤニヤ笑っていた。
「父上、そのようなことがあり得るのでしょうか?」
そう聞いたのはグイだった。
「執事に調べさせたら過去にも適性魔法が無い者がいたようだが、非常に珍しいらしい」
「父上!!このような出来損ないは今すぐ家から追い出すべきです!!」
パピットは大きな声で父親にそう言う。
「待てパピット。今すぐ追い出しては体裁が悪い。それでは上級貴族になるのに害を及ぼす」
「しかしこいつがいることが害になるのではないのですか!?」
パピットは声を荒げて言及する。
グラードとグイは考えるようなそぶりを見せ、ローザだけは興味なさそうにしていた。レイはパピットの「こいつ」と言う部分に一瞬反応したがまたすぐに真顔になった。
結論が出ないまま静かになってしまった。そこでレイがしゃべり始めた。
「パピット、カイをここで追い出すのは体裁が悪い。他の貴族に攻められでもしたら反論ができないぞ。落ち着け」
「うるさいぞレイ!!黙ってろ!!」
「パピット!!レイは兄だぞ!!兄に向かってその口の利き方はなんだ!!」
レイに対するパピットの態度にグラードが怒鳴りつけた。
「...申し訳ございません」
「父上、提案なのですが、カイが学園を卒業した後に冒険者にならせてはどうでしょうか?」
レイの提案を少し考えたのちに、グラードは決めたように頷き
「カイ、お前は学園を卒業した後冒険者になれ。そのときにクノス家から追放とする。わかったな」
「はい。わかりました」
その後の食事は何事もなかったように終わった。
(どうしよう…)
カイは今後どうするかを考えていた。
(父上には追放すると言われたし、母上とグイ兄上はいつも以上に冷たい目をしてた。パピットに関してはあいかわらずだけど…)
カイの家での扱いは以前から酷い物であった。基本は無視で空気のような扱い。食事をするときはカイを会話に混ぜないようにしていた。
カイの扱いが酷いのには理由があった。それは両親が兄弟を比較していることに原因があった。クノス家は8歳になる前から家庭教師を雇い教育するようにしていた。カイも例外では無く家庭教師が呼ばれた。普通の勉強はもちろんのこと戦闘のことも教えられカイは覚えるように、戦闘面では強くなれるように努力した。しかし、グラードとローザは兄達とカイのことを比べていた。普通に見たらカイは勉強も戦闘もよく出来る優秀な子供だったが、兄たちはまさに天才と言える部類だった。
グイは家庭教師との最初の模擬戦で苦労しながらも一撃をくらわしていたが、カイは剣を当てることはもちろんのこと掠ることさえできなかった。
レイは覚えるのが早く、家庭教師が1週間かけて教えようと考えていたところを一日で完璧に覚えていた。カイも勉強はそれなりに出来たが、レイ並みにはできなかった。
そんなカイをグラード達は、時間も金も使うのが惜しいと考えだんだんと放置していくようになり、さらに執事たちには「カイに構うくらいなら掃除でもしろ」と言われ、最後にはカイにかまうなと命令するようになった。そして、そんな両親を見て育ったグイとパピットはカイのことを自分よりも下だと見下してバカにするようになった。
また、1つ下のパピットに家庭教師がついてから1ヵ月くらいしたときにした模擬戦でカイが負けたため、それからより酷い扱いとなっていた。
(学園に入るまでの2年間どうしよう…)
カイ達がいるグリス王国の者達は、15歳になる年に三年間、学園に入ることが出来る。貴族の子供はそこで学ぶのはもちろんのこと繋がりを持つために通うことになっていた。また、この国の学園は誰でも通うことができ、学費も国が持つことになっていた。そんな好待遇な制度があるのだが、基本的に平民は家族の手伝いをするために、学園には行かずに働き始めることが多かった。
(たぶん、学園は総合第一学園になるだろうなぁ…。面倒な貴族がたくさんいそうだなぁ…)
総合第一学園はグイが卒業し、レイが3年生として通っている学園である。グラードが子供達を通わせている一番の理由は上級貴族が多くいるからである。グラードは上級貴族と繋がりを持ち、上級貴族になろうとしていた。
カイはここまで考えて、どうしようもないと思いベッドに横になった。
「面倒なことが起きないといいなぁ」
その一言を言ってカイは目を閉じた。
補足説明
グラス王国には上級貴族、中級貴族、下級貴族の3つがあり、大半の都市は上級貴族が治めています。クノス家がいる都市も上級貴族が治めています。
グラード達の目的は、上級貴族になるとなっています。
他にわかりずらい場所がありましたら聞いていただけたら幸いです。
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