第7話:自問自答

「私は貴女の言う通りにやったわよ。

 だけどこのままでは戦争になってしまうのではありませんか。

 我が家と王家が内戦など起こしてしまっては、隣国に付け込まれたしまうのではありませんか、本当にこれでよかったのですか」


(大丈夫です、内戦など起こさせしませんから、安心してください。

 ただそのためには王家を圧倒する軍資金が必要になります。

 その軍資金を集めるために墓地に行ってください)


「墓地、墓地ですって!

 そんな気味の悪い所に行って何をしようというのですか」


(私に任せてくれれば大丈夫ですよ。

 その為にボスヴィル兄上に王都屋敷にいる兵士の半数を指揮して、護衛としてついてきてもらっているのです。

 何の心配もありませんから安心してください)


「ですが貴女の言う通りにしていると、段々大袈裟なことになっている気がするのですが、それは私の勘違いだというのですか」


(大袈裟にした方が実害が少なくて済むのですよ)


「おい、おい、おい、もういい加減独り言は止めろ。

 私は事情を知っているからまだいいが、家臣達が不信な顔をしている。

 どうしても話したい事があれば馬車で話せ、馬車で」


「申し訳ありません、兄上」


 ★★★★★★


「おお、おお、おお、庶民の共同墓地など気味が悪すぎますわ」


(四の五の文句を言わない。

 今から軍資金を創り出すから、クリステルは黙って待っていて)


「軍資金、軍資金といいいますが、墓地に盗賊の隠し金でもあるというのですか」


(魔術を使うから黙っていて、集中できないわ)


「おい、おい、おい、なんだこれは。

 いったいどうなっているんだ、クリステル」


「それが兄上、心の声が魔術を使って軍資金を創ると言いだして」


「おっと、止まったぞ。

 これがクリステルの言っている軍資金だというのか。

 信じられん、こんな大きなダイヤモンドがゴロゴロとできるなんて。

 いったいどれだけの価値があるというのだ」


(ちょっとクリステル、黙っていてと言ったでしょう。

 クリステルが話したせいで集中が途切れてしまったじゃないの。

 本当ならこの千倍はダイヤモンドを創り出すつもりだったのに)


「兄上、兄上、兄上、心の声が恐ろしい事を言っています。

 私が話したせいで集中が途切れてしまったと。

 本当ならこの千倍はダイヤモンドが創る出せたと言っています」


「なに、本当かクリステル。

 だったら黙っているのだクリステル。

 これだけのダイヤモンドがあれば、もはやバカン伯爵の金の力など一切恐れる必要がなくなる。

 それどころか王家と正面から戦っても負ける事はない。

 心の声がいいと言うまで黙っているのだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る