第30話 サマーキャンピング!
親というものに不思議な感情を抱くのは、子どものあずかり知らぬところで親同士繋がりがあるというところだ。
例えば部活動でお世話になった友達の親と自分の親がいつの間にか仲良くなっており、俺らの高校がバラバラになってもなぜか親伝いで友達の話を聞いたりする。
今回のことも例に漏れずそうなのかもしれない。
「やあ、駿くん見ない間に結構大きくなってるし随分格好良くなってるね!」
「今日明日は遠慮しないでね!」
「じゃあ、駿行こっか! れっつらご〜」
「あ、はい……よろしくお願いします」
予定も何も知らないまま俺は、茅原家の主催する謎旅行へ参加することとなった…………一体何故?!
遡ること半日、そう遡ったとしてもたった半日の間の出来事。
母と俺の会話の中でこんなやりとりがあった。
「そういえば駿」
「ん、何?」
夕飯を食べ終えた俺はリビングのソファで一休みしながらスマホを弄っていた。
「明日明後日なんだけどね? 予定を空けて置いて欲しいの」
「もともと何も予定はなかったから別にいいけどなんで?」
言っていて悲しくなる発言だったがこれが現実だ。
「明日ね朝早くから出かける予定があるの」
「そうなんだ……んで、どこに?」
「それは明日のお楽しみということで、朝早くなりそうだから六時半には起きて準備してね」
結局俺に与えられた情報は朝早くから出かけること、それは日を跨ぐお出かけになることのふたつだ。
これ以上聞いても何も答えてくれないし、聞くだけ無駄と判断した俺はそそくさと泊りがけの準備をして早めに寝床へ着いた。ここまで何も考えずに準備する俺も俺で素直だなと思うがそれはまあいい。
そして起きて準備を開始し、家を出る頃俺にはふとした疑念が宿っていた。
——いや、親たち何も準備してなくね? と
そもそもが今日平日だし親両方とも仕事じゃん。……これに関しては自分が夏休みということで曜日感覚がなくなっていた自分にも非があるわけだけど。
あらかたの準備を終えてリビングで待っていると母が先に起きてきた。
「もう玄関前に迎えきてるらしいから、よろしく伝えといて」
「どこに行く? それに誰と!?」
「行けばわかるから」
「はあ?!」
「それじゃあかあさんは朝ごはんの準備するからぁ〜」
ひらひらと手を振ってキッチンの方へと戻って行く母親、俺はわけわからず混乱。俺のこの反応は果たしておかしいのだろうか?
真偽はどうあれ迎えがきているとのことなのでそのまま靴を履き玄関を出る。
「おっはよ駿!」
そこで俺の眼の前に現れたのが椎名であった。
車の運転席と助手席には椎名の父と母がいて小さく手を振ってくれる。
「はいはい、車乗って!」
「おおっ?!」
椎名に手を引かれるがまま俺は車の後部座席へと座る。
……そして冒頭に戻ると言ったところである。
ここ半日で得た情報などあってないようなものなのだ。
「あの、ほんっとうに何も知らないので先にお聞きしたいんですけど今どこに向かってるんですか?」
「ああ、駿くんは知らないのも無理はないよ! だって俺も
バックミラー越しに見えた椎名の父、
俺的には色々複雑だけど、それでもこの二人、圭祐さんも千晴さんもまだ俺のことを覚えていてくれたこともそうだが、こうやって色々企画して連れ出してくれることもすごく嬉しかった。
かれこれ五年ほど間が空いたが距離感はあの頃と全く変わらずに接してくれることが何よりも安心した。
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