第39話 眠っている間の告白

 その後、俺とソニアはギルド職員にギルドカードを渡した。

 この勝負に勝てばCランクに昇格するという約束だったからな。

 明日には金色ゴールドのギルドカードが貰えることだろう。


 Eランクに昇格するまで1年かかったというのにそこからはあっという間だったな。

 これからもこの勢いで冒険者のランクを上げていけるだろうか?

 もちろん、俺は可能だと思っている。

 それだけ【魔法創造】というスキルの効果は凄まじいのだ。


 その日、冒険者ギルドで食事をしているとめちゃくちゃな人数に話しかけられた。


「すごいな! ジェイク達のパーティに勝ったんだって!?」

「なぁ! エクストラボスを発見したってマジかよ!」

「俺をパーティに入れてくれぇっ!!!」


 ……こんな感じで。


「一躍有名人ですね」

「俺は顔が良いからな」

「たぶん今回の件は関係ないと思います」

「まぁそうだよな」

「はい。……あの、意味わからないこと私の反応を楽しんでませんか?」

「そういう面もなくはない」

「ですよね」


 冒険者達を無視してソニアと会話をするが、流石にこの人数を完全にスルーするのは難しそうだな。


「おいおい、俺たち無視して二人の世界に入るなよぉー!」

「お熱いね〜! お二人さん!」


 そんな野次が飛んでくると、ソニアは顔を赤くした。

 結構照れ屋なところあるよな、ソニア。

 別に俺はなんともないのだが、このままだとソニアがかわいそうなので冒険者達の対応をしてやるとしよう。


「よーし、まずパーティに入りたい奴ら、よく聞けー。ウチは今のところ新しいパーティメンバーを募集していない!」


 騒がしい冒険者ギルドの中でも聞こえるように声を張り上げて言った。


「なんでだよ!」

「二人なんだからいいじゃねーかよ!」

「付き合ってんのかー!?」


 二人パーティで冒険者をやっている奴らは結構少ないのかもしれない。

 まぁここはE〜Cランク帯の冒険者が集まっているから、上にいけば印象も変わる可能性もあるだろうな。


「パーティに入れない理由は単純だ。パーティメンバーが増えると経験値が分散されて強くなるのが遅くなるだろ。魔物の注意をひきつけるのはソニア一人で大丈夫だし、それを倒すのも俺一人で十分だ」


 俺の発言に周りの冒険者達は黙った。

 これが以前ならば、無能のくせにとみんな思っただろうが今はどうやら実力を認められているみたいだ。


「じゃ、じゃあエクストラボスについて聞かせてくれよ!」


 そんなことを聞いてきた冒険者がいた。

 もう2万ムルを貰ったしな。

 どうせ広まる情報だ。

 いくらでも聞かせてやろう。


「いいぜ。それぐらい聞かせてやるよ。でもエクストラボスはBランクのうえに転移石が使えないから挑戦するのは1000レベルを超えてからをオススメする」


 そう前置きしてから俺は冒険者達に今日の出来事を語った。

 酒を飲みながら、たくさんの冒険者と会話をした。

 なんだかんだ冒険者という奴は気のいい奴らばかりで俺はそれなりに楽しいひとときを過ごした。



 ◇



 そしていつものように酔った俺はソニアに介護されながら宿屋に戻ってきた。

 俺は部屋に戻ってくると、すぐベッドに横になった。

 今日は疲れて、もう結構眠い。


「……ロアさん、起きてますか?」


 ソニアの声が聞こえた。

 返事をする気力がない。

 ソニアには申し訳ないが、俺はそのまま寝ることにした。


「ロアさん……」


 そう言って、ソニアが俺のもとへ近づいてきた。


 なでなで。


 ソニアが俺の頭を優しく撫でた。


「とても不安でした……ロアさんが死んでしまうんじゃないかって」


 ……俺?

 自身の心配より他人の心配をするのか。

 ソニアは相当なお人好しだな。


「無事で本当によかった」


 そのままソニアはしばらくの間、俺の頭を撫で続けた。

 頭を撫でられるのが心地よくて、俺はすぐに寝てしまった。



「──好きです、ロアさん。……この好意は迷惑でしょうから眠っているロアさんにだけ伝えせてください。……今日は本当にお疲れ様でした。おやすみなさい」

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