第34話 勝負開始

 勝負の見返りは、勝てばCランク冒険者に昇格させてもらえることをギルドと話をつけているらしい。

 あいつのパーティよりも早くダンジョンボスを倒せばいいだけなので、結構楽そうだ。

 負けたときのリスクは特になかった。

 あいつはお前のプライドをめちゃくちゃにしてやる、と意気込んでいたが、負けても別にそんなことにはならないだろう。


 後から他の冒険者に教えてもらって分かったのだが、あの赤髪の冒険者の名はジェイクというらしい。

 ルンベルクでトップの実力を持つCランク冒険者みたい。

 だから俺たちをCランクに昇格させる話をギルドと出来たのかもしれないな。


「……勝負は3日後か」


 ジェイクは『お前が全力で勝負に臨めるように準備する時間をくれてやる』と言って、勝負が始まるのは3日後になった。

 ダンジョンボスの討伐で時間を競ったり、準備の時間をくれたり、変なところで気遣いが感じられた。

 よく分からない奴だな。

 だが、準備の時間があるのは好都合。

 《紫電一閃》を取得するために消費したレベルを稼ぐことが出来るからな。


『【魔法創造】の効果により《紫電一閃》を創造しました』


 宿屋の一室で《紫電一閃》を取得して、俺は眠りについた。



 ◇



 《紫電一閃》を取得して俺のレベルは20。

 ダンジョンボスのランクはCだと予想できるため、少なくとも200レベルまではあげておきたい。

 レベルを上げることによるステータスの上昇はバカにならないからな。

 3日後にダンジョンボスに挑むならば、準備期間は2日だ。

 この2日でどれだけレベルを上げることが出来るかが勝負の鍵を握るだろう。


 あとはダンジョンボスまでの道も覚えておく必要があるけど、それはレベル上げと一緒に覚えてしまえばいいだろう。

 下層にいけばいくほど魔物が持つ経験値は多くなるからな。


 それらを踏まえて俺とソニアは2日間準備を行った。


 10階層目が最下層になっており、ダンジョンボスは『ケルピー』という馬と魚が合体したような魔物だった。

 上半身が馬で下半身が魚で鋭い目つきをしていた。

 討伐推奨レベルは400でランクはC。

 中々の強敵だ。


 そして俺とソニアのステータスはこんな感じになった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ロア・フォイル 19歳 男 

 称号:[フォイルのダンジョン踏破者]

 レベル:200

 HP:1050/1050 MP:1470/1470

 攻撃力:609

 防御力:192

 ユニークスキル:【アイテム作成】【魔法創造】

 魔法:《生活魔法》《火槍》《アイテムボックス(極小)》《豪火球》《投雷》《稲妻雷轟》《紫電一閃》


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 HPが4桁になってくれたのは結構安心感があるな。

 ダメージを受けるとどれだけ減るのか分からないため、攻撃を貰わないようにしなければいけないのだが……。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ソニア・クラーク 17歳 女

 レベル:200

 HP:2400/2400、MP:1000/1000

 攻撃力:10

 防御力:1800

 ユニークスキル:【難攻不落】

 スキル:《鉄壁 レベル9》

 《自己標的 レベル8》


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 レベルについては二人ともある程度足並みを揃えておいた方がいいということになった。

 ソニアが200レベルになってからは俺に経験値を集中させて、二人とも200レベルに到達した。


 ソニアのステータスは俺とは比べ物にならないぐらいに優秀だった。

 HPが2400で防御力が1800?

 実に素晴らしいよ。

 《鉄壁》と《自己標的》はレベルが10になると新しいスキルを取得出来るようになるとのことで、俺も少しそれを楽しみにしている。

 ソニアのスキルポイントの振り方は守備重視。

 俺を守ることだけに専念すると本人が言っていた。

 めちゃくちゃ助かるけど、一人になったときのことを考えて少しは自衛出来るようなスキルを身に着けてほしいものだ。

 まぁまだそういったスキルはないみたいだけど。


 そして、ついにジェイク達と勝負の日がやってきた。


 ダンジョン前に多くのギャラリーが集まっている。

 その中には友達のエリックと鑑定士のイヴァンの姿もあった。

 そして、この勝負にはなんとギルド職員が審判を務めてくれるのだ。

 俺達が勝てばCランクに昇格できることもあり、中立の立場であるギルド職員が審判役を引き受けてくれたみたいだ。


「くっくっく、よく逃げなかったな」

「逃げる必要がないからな」

「なんだと!? 調子に乗ってんじゃねぇ!」

「ああ、お前を馬鹿にしたんじゃなくてダンジョンボスはどうせ倒す予定だったから逃げる必要はない、ってことな」

「……ふ、そうか。ならいい」


 こいつめちゃくちゃ単純だな。


「あのぅ、今日はよろしくお願いしますねっ」


 ジェイクのパーティメンバーの女の人が挨拶をしてきた。

 おっぱいが大きい。

 谷間が見える。


「おう、よろしくな」

「……よろしくお願いします」


 ソニアも俺の前に一歩出て、挨拶を返した。

 ……なんだかさっきよりも雰囲気が険悪な気がするのは気のせいか?

 気のせいだよな。

 挨拶してるだけだし。


 勝負のルール説明をギルド職員から聞いた。

 競うものは、ダンジョンボスを倒して戻ってくるまでの時間だ。

 Cランクの魔石がダンジョンボスを討伐した証とする。

 事前に用意したものを証とするのを防ぐために、持ち帰った魔石は鑑定士のイヴァンによる《鑑定》が行われる。

 討伐時間は魔道具の[マジックタイマー]によって計られる。


 とまぁ、こんな感じのルールだ。


「俺達から先に行かせてもらうぜ。お前らより確実に早く帰って来る自信があるからな。ハッハッハ!」


 ジェイクがそう言って、先にダンジョンに入っていった。

 俺とソニアがダンジョンに入るのはジェイク達が戻ってきてからだ。

 それまでの時間を無駄にしないように俺は集まったギャラリーに色々と話を聞き、情報を集めた。


 そしてジェイク達が戻ってきたのは開始から1時間半後だった。


 1時間半か。

 最下層まで行くのに大体1時間ぐらいだったから、ダンジョンボスの討伐に手間取らなければ問題ないだろう。


 この勝負──もらったな。

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