第17話 ギルドマスターの厚意
換金を済ませて、俺とソニアは冒険者ギルドで一緒に夕食を食べた。
「ソニアはフォイル村から近いDランクダンジョンがどこにあるか知ってる?」
「……うーん、すみません。分かりませんね」
「まぁ普通そうだよなぁ。俺も全然知らないし」
「ダンジョンの場所が記載されている地図も中々出回ってませんから、人から情報を貰うのが一番かもしれませんね」
「情報かぁ……」
俺は腕を組んで考え込む。
ソニアも同じように悩んで、考えているようだ。
なるほど、地図ならば【アイテム作成】で作成するという手段はある。
だが先ほど《豪火球》でキングフロッグを一撃で倒しているところを見ると、レベルの消費は抑えて、次の強力な魔法に向けて溜めていきたいんだよなぁ。
うーん、情報か……。
「あっ」
俺はある人物が浮かんできた。
「ギルドマスターってダンジョンの位置とか詳しいそうだよな?」
「んー、そうですね。冒険者ギルドのギルドマスターは元々冒険者としてのランクが高かった人に任されることが多いので、多分ダンジョンなどの位置関係については中々詳しいと思いますよ」
「よし、じゃあ決まりだ」
「決まりって……ギルドマスターに聞くんですか?」
「その通りだ」
「良いと思いますけど、教えてくれますかね? 教えれば有望な冒険者を手放してしまうことになるので、難しいんじゃないでしょうか」
「大丈夫だ。このギルドは俺に借りがあるからな」
「借り……?」
ソニアは首を傾げた。
「俺は一度、この冒険者ギルドの職員と冒険者に無実の罪を被せられかけた事がある」
「えっ……大丈夫だったんですか?」
「ああ、無実を証明することが出来たからな」
「なるほど、それで借りがあるってことなんですね」
「そういうこと」
と言って俺は席から立ち上がり、
「じゃ、ちょっと待ってて」
ギルドマスターのいる部屋に向かった。
扉をコンコンコン、とノックする。
「どうぞ」
ガチャリ、とドアノブを回して中に入る。
「……ロアか。なんだ、何か用があるのか?」
「この近くにあるDランクのダンジョンを教えてくれ。あとついでに地図も貰えると、とても助かる」
「ほぉ、図々しい奴だな」
「まぁそっちは俺に借りがあるだろ?」
「前に騒ぎになったとき、見逃してやっただろう」
「それだけで済むような借りか? もっとおおごとにしても良いんだぜ」
「……お前中々頭が良いな。ったく仕方ない、ちょっと待ってろ」
ギルドマスターはガサゴソ、と散らかっている書類の中を漁り出した。
「ほら、これがこの国の地図だ。Dランクダンジョンはルンベルクの街の近くにある。そう遠くない距離だろう」
「おぉ~、サンキュー!」
「お前、軽いな……」
「ん? そうか?」
「ああ、田舎のギルドマスターと言えども、こんなに軽い口を利くやつは中々いない。お前、これから伸びるかもな」
「ははっ、あんたも知ってんだろ。俺は1年間Fランクの冒険者だった男だぜ?」
「それが最近、フォイルのダンジョンのボスを一人で倒すまでに成長している。これは1年間『無能』と言われていた男では考えられない成長速度だ」
「フォイルのダンジョンのボスを一人で倒したなんて言ってないけどな」
「あの少女、パーティに見捨てられたんだろう? それを助けたならもう既にかなり疲労困憊していたはずだ」
よくそこまで考えられるもんだ。
いや、そんなことよりも──。
「ちゃんと聞いてたのかよ。道理でいいタイミングで出てくるわけだ」
「あんな大声出されたらな。ま、俺なりに借りを返そうとした訳だ。ほら、地図はもう渡した。どこにでも好きに行くがいい」
「おう。あんたとはあんまり関わりも無かったけど、今まで世話になったよ。ありがとな」
「ふっ……」
そう言って、俺はギルドマスターの部屋から出た。
ソニアのいる場所に戻って、机の上に地図を広げた。
「えっ、どうしたんですかこれ」
「欲しいって言ったらくれた」
「へー、太っ腹ですね。……国内の地図のようですね……うわーすごい。ダンジョンの場所までちゃんと記載されてますね。こんな地図中々ありませんよ」
「手書きだな。もしかしてギルドマスターの冒険者時代に使っていた地図なのかもな」
「かもしれませんね。そんな思い出のものをくれるなんて、ロアさん仲良いんですか?」
「いや、全然。つい最近まで話したことすら無かった」
「えぇ……謎ですね」
「曰く付きの地図だったりしてな」
「……や、やめてくださいよ。これから大事に使っていく地図なんですから」
「ははっ、悪い悪い」
「えーっと、それでDランクのダンジョンは──」
広げた地図をソニアは見て、近くのダンジョンを探している。
「ここだな。ルンベルクの近くにあるDランクのダンジョンだ。ギルドマスターが言ってた」
「なるほど……ここなら2日ぐらい歩けば行けそうですね。明日早朝にフォイルを出ましょうか」
早起きか……。
「あ、ちゃんと起こしますから起きてくださいね」
「わ、分かってる。ちゃんと起きるよ」
「ふふっ」
食事をした後に、宿屋に戻って俺は早起きするため早々に寝た。
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