同期する世界(仮)

@y_o_u_u

第1話

 完全没入、投影型VRMMOというものがある。所謂、ゲームの中に入って非現実を体験するあれだ。


 ヘルメット着用し、ボタンを推せば、睡眠効果で意識が朦朧して、気づいたらゲームの中。実に胡散臭い技術。


 某SFアニメに影響を受けている某映画のように頭にプラグをさす。脳内の情報を読み込み?、伝達に干渉して、疑似情報を書き込む、なんてことをしているのであれば、安全面的にどうなのでしょうか、洗脳の心配は、記憶の整合性はと思うところがあるが、一応の理解ができる。むしろ、ヘルメットと少し性能がいいパソコンがあればどうにかできる方が謎技術よりは納得できる気持ちがある。


 もっとも、安全面を重視するならば、専用のゴーグル、コントローラー、足ふみマットで事足り、ゲームの中に入らないという選択肢もある。


 こういうふうに思いつつ、利用しているのだから、そこのところどうなの、はやりに弱いめんどくさい人、の認定を受けても仕方がない。実にご都合主義な人である。


 そんな謎技術がふんだんに使われているだろうゲームに、選択されなかった世界、というタイトルのものがある。


 完全没入型の一作目のタイトル。タイトル自体は副題で、別にタイトルがあるのだが、販売運営会社が製作した文字なのか、誰も読めない、副題は販売地域の言葉で書かれているから、それがいつの間にかタイトルとして広く認知しされ、タイトルを言うと、未だに稼働していたのか、と驚かれる扱いになっている。ある意味では話題性があるだろう。


 パッケージ代金以外は無課金。必要品の購入、ガチャシステム、そして、アバターのつくり直し権等々、よそのゲームなら見るようなシステムが、初めから存在せず、アップグレードもされていない。純粋にプレイ時間が左右する。スキル制度を採用して、名言できる職業制度はない。


 ついでに言うとゲーム内時間は現実時間で4分の1。


 外を歩けば動物はいるし、植物もある、ダンジョン、モンスターだっている。町の中には建物はある。


 家具や、生産業をするための道具もあるが、それを運用する設備、例えば、鍛冶をするのに必要な竃はない。しかも、運用する人、所謂、NPCが、いない。動物やモンスターを倒しても、自身で解体しなければならない。


 初期装備よりもいいものが欲しければ、当然、ハンドメイド。服は、動物の毛皮があるので辛うじてどうにかなるけれども、武器は折れたら、壊れたら農具ら、自身で修復するか専門家に任せるしかないが、そんな人はいない。いたとしても、圧倒的に数が足りない。


 スキルレベルは基本的に実世界ベースにしているからか、目に見えて必殺技を放つのがわかるや、常人、超人離れした動きができる、ハンマー一振りで鉄の塊が剣になるなどのものはない。


 なんとなく製作がスムーズになった気がする、腕の振りが良くなった気がする、程度のもの。作業になれただけ、純粋に熟練度があがっただけなのでは、としか思えない。


 結果、プレイヤーが、現実で調べた知識を記憶して覚えている範囲でゲーム内に反映しないといけないという。現実世界が基準過ぎて、ゲームをゲームとして楽しんでいるのか大変疑問があるゲーム。


 サバイバル愛好会や、手に職系の職業訓練に大変需要があるのだが、そこはゲーム内。時折、動物やダンジョンから溢れたモンスターの襲撃を受ける。


 小型なら何とかなるものの、身体能力が現実的で、格闘技を専門的にやってないプレイヤーはそう簡単に大型の動物入院勝てるわけがない。しかも、勝っても動物を殺した感触が残り、続く解体作業。ゲーム特有の血生臭い処理を隠すエフェクトなどはない。なかなかのグロテスクな設定に、心が折れる人が続出。


 釣った魚を三枚におろすことはできる人はたくさんいるのに動物を解体できる人は専門業者以外はほとんどいなかった。農業高校の生徒や、獣医学校の生徒は知識はあるが経験が足りなかった。勿論、人も足りなかった。


 これで、対象年齢が14以上で、規制なしで発売され、注意はあるものの、規制なしなのだから、全年齢でも買える不思議な展開。


 そして、されらが改善される兆しもない。


 どこにあるのか存在を公表していないサーバーの貸出をしているので、運営上は問題ないらしいのに。


 後続の第一弾ソフトがファンタジー全面おしで、NPCの言動が基本同じでも、いないよりはまし。むしろ、テレビゲームをそのまま持って来たらそうなるよね、の設定がゲーマーには馴染み深いものだった。


 NPCに自動的に解体される倒された動物やモンスター。現実的に再現不可能な動きの再現。人数制限はあるものの、人気が出ないわけはない。


 後続のタイトルに出し抜かれるのは当然。過疎化の一途。ゲーム名を言うとまだ、稼働していたのか、と驚かれるほど。


 それでも、未だに人が残っているのはいる。


 現実世界では絶滅したか、発見されなくなった動植物の研究家や、趣味で鍛冶師、薬師、をしている人。ただし、現実には資格なし。猟銃を使わない見習い猟師。服飾関係者と料理関係者。現実世界から逃げ込んできた人、辞め時を逃がした人、ほかのゲームを追い出された人等等。


 加速している時間を趣味に全力で費やしいる人か、費やした分も現実にリターンできる人がほとんどと、その他。


 ある意味、現実世界ではなく、第二の現実世界で生活をしたい人が、残った。


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