第48話 罪悪感

空になったグラスを置いて

一息ついたころには

22時を過ぎていた


「じゃ、行こうか」栞


栞が私に小さな声で言う

まだ行くところがあるの?

えっ?もう無理だよ


正直

私は内外ともにヘロヘロで・・・言葉を失う


「どこ行くの?」涼太


涼太は栞に聞く

栞は気合を入れるように

小さく深呼吸をして


「悠ちゃんの実家

パパとママに許しをもらう」栞


涼太は少し慌てて


「今から行くなよ!!

もうこんな時間だし

姉ちゃんが初めて男を連れてきたと思ったら

栞だったなんて

ビックリしすぎて死ぬぞ!!」涼太


栞はさっきまでとは違ってあからさまに落ち込んだ表情で


「それって

俺じゃダメってこと?」栞


下を向く栞に見かねて

涼太は言葉を選んで


「・・・状況が理解できないと思うぞ」涼太


と言い直した


栞はしばらく考えて


「いや、今日行く

非常識かもしれないけど

驚かせてしまうかもしれないけど

このことは

今日じゃなきゃダメなんだ!!

これ以上

宙ぶらりんな状態を

一分一秒でもしてほしくない」栞


私は

栞の腕をつかんで


「大丈夫

もう大丈夫だから

宙ぶらりんだなんて思ってない

栞のご家族や涼太たちに認めてもらっただけでも

私は大丈夫」悠


私の声は何故かカスレて

ボロボロ感が増していた

栞は私の方を見て


「・・・悠ちゃん

俺がちゃんとパパとママに許してほしいんだ

そうしなきゃ

お見合いの事だって迷惑をかけるわけだし

早く知ってほしいんだ」栞


そっか

見合いまた忘れてた・・・

パパやママ

もしこの事を知って

認めようと

認めまいと

頭を下げに行くことになる


お見合いを受けて

日時

場所まで決めて

一週間をきって


”私たちは

全く知らなかったのですが

娘には恋人がいて、挨拶に来ました

すみません

このお話は・・・”


なんてことを言いに高級菓子を持って行くんだ


お相手は

怒り奮闘で

門前払いされるかもしれない


その気にさせられて

恥かかされたようなものだから・・・


叔母さん・・・気が強い人だから

ママは酷くあたられるだろうな


”私の顔を潰して!!”


”あんた達が頼んできたんでしょ?”


”どんな娘の育てかたしてるの?

いい歳して非常識”


浮かぶ・・・


それでも二人は頭を下げるしかなくて

悔しい思いをさせるんだろうな・・・


栞はそれを十分に分かっているから

一日でも早くパパやママに会いに行くと言っているのかもしれない


「そっか・・・そうよね」悠


それが分かると

私も疲れている場合ではなくて

栞と一緒に

家へ向かう事しかなかった


涼太も

さすがに親友で

栞がみなまで言わなくても

栞の考えは理解できたようで

にこりと笑って


「頑張れよ

一応、今から二人が行くことだけ親に電話入れとくから」涼太


そう言って肩を押してくれた


「お姉さん・・・頑張って」來未


來未ちゃんも

満面の笑みで送り出してくれた


私たちは二人のおかげで

少しだけ勇気が増した気がする


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