第39話 天気予報はずれた
引っ越してから一ヵ月がたとうとしている
実家に帰ったことは
栞にはまだ言えていなかった
メールはしている
電話も何度か着信があったけど
間に合わなくて出なかった
かけなおす事も今はしたくなかった
今は冷却期間だ
栞はその後のメールで
”悠ちゃん忙しいのかな?
声、聴きたかったから電話しただけだよ
着信、気にしないでね”
と最近では珍しく
猫なで声が聞こえてきそうな事を言っていて
さすがに
私がこんなにも釣れないことが不思議に思っているようで
それはそうだよね
あんなにまっしぐらでいた私が
急に距離感つくってきてるんだもんね
忙しいときに無理をしない
お互いに負担にならないように大人な交際をしてきた私たちでも
ここまで来たら
異変に気が付く・・・
栞・・・どう考えてるのかな?
私の中ではもう
彼との恋は終わりに向かっている
大嫌いになりたくない人だから
これ以上
色々ありそうな空気に
私は耐えられないと思っている
最後はジタバタしたくない
心を整えている
やっぱり7歳も年上だから
そこはしっかりしたい
彼に出会って
私は
何度も何度も彼に恋をした
その度に
彼を思いすぎて
走って
転んで
勝手に傷ついて・・・逃げ出して
もうこれが最後
最後にしよう
私はこれから
ケリをつけに行く
”明後日おやすみだから会いたいんだけど
久しぶりに外で会おう
栞の時間に合わせるから
おしえてね”
彼は仕事だから
その日は20時に約束をした
”もしかしたら待たせるかも”
そう言っていた
彼の生徒と会ったりしないように
街はずれの小さなレストランで待ち合わせをした
約束当日
私は昼から彼の部屋に行って
最後に自分の持ち物を処分する
久しぶりに突然来た部屋は
やはり綺麗で・・・
化粧落とし
洗顔
歯ブラシ
部屋着
カップ
私がここにいた痕跡をすべて消す
ほかの女性がここへきているかもしれない
そんな不安と一緒に
どうしても証拠のようなものを探そうとしてしまう自分を
”今日はそんな事をしに来たんじゃない”
と引き止めながら
見たくないものに会わないように
伏し目がちで片付けをした
短かったけど
楽しかったな・・・
好きだったな・・・
そう思うと
やはり未練のよな不安定な感情がゆらゆらと体中に巡る
今日で終わる
今日で彼との長い長い恋は終わる
最後に封筒に合鍵を入れて
郵便受けに入れた
約束の20時
私は少し前にそこに着く
早く着いた
緊張していた
私、どんな感じかな?
窓を鏡のようにつかって
自分の身なりをチェックする
最後くらいは素敵に見えたい
20時過ぎにメール
”ごめん
遅くなってる
もう少しかかりそう
待ってて”
気長に待とう
私はスマホを開いてニュースなどを見て暇をつぶす
何も注文しないで待つのは気まずいので
ドリンクとサラダだけ先に注文
1時間が過ぎた
彼はまだ来ない
窓の外を見ると
天気予報がはずれて雨が降り出した
傘・・・持ってきてない
21時半
「オーダーストップのお時間なのですが・・・」店員
もうそんな時間
そっか
ここ22時で閉店だもんね
私は申し訳なくて
ケーキとコーヒーを頼んだ
22時
お店の外に出る
雨は強くなってた
栞からは連絡はない
お店の前でメールを入れる
”お店、閉まったからでたよ”
少し時間が空いて栞からメール
”ごめん
俺の部屋に帰ってて”
・・・だけど
私、もう彼の部屋へは帰れない・・・
私は雨の中
歩き出した
家に帰ろう・・・
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