第4話 キス
私と純一郎は、あの日の告白から
友達以上恋人未満
しかし
仲間にはバレないように
ぎこちない関係になった
一年たった今も…
顔が見えない人と話すのは苦手で
電話は好きじゃない私のために
純一郎は
毎日、眠る前にメールをくれた
それはそれは長く一方的なもので・・・
けっこう笑えて…
その日にあった事
それで、どう感じたかと言う事を
事細かに書いてあって
私は純一郎の自伝を読んでいるようで・・・
今までに分かっていなかった純一郎という人を
知っていくようで、彼へ引き込まれていった
だけど
あの日から
実際に会っている時は
不自然なほどに
二人きりを避けるようになったし
あからさまに目をそらしたから
あの日以前の方が
やはり自然に一緒に居られたので
淋しい気もしていた
お風呂上がり
お気に入りのモコモコな部屋着に着替え
女子力を高めてベッドに転がり
部屋でスマホを見つめた
デートをする気分
ニヤニヤしながら彼の文字を読む私は
一人きりの世界
そんな時、何か違いに気が付き画面から目をそらす
ビックっと体全体で驚く
ベットの横には栞がちょこんと座っていた
「びっくりした!!」悠
私は慌ててベッドに座りなおしてクッションを抱きかかえる
するとニヤニヤして栞は私の横にフワッと座った
「どうしたの❓️栞ちゃん❓️
いつ入ってきたの❓️」悠
「ん~ずっと居たよ
悠ちゃんがスマホを見始めた頃から
声もかけたよ
聞こえてなかったみたいだけど
最近、悠ちゃん心ここにあらず?って感じで
全然かまってくれないからさ
会いに来たんだ」栞
栞はあのころから変わらず
涼太と仲良しで
まるで家族のように家に入り浸っていた
私も弟が二人になったようで
彼を自然と受け入れていた
こうして部屋に来たりもする
こんな風に突然いたのははじめてだけど
こんな風に来られると
さすがに緊張する
だって
最近では背も高くなって
女の子のようだった栞は
きれいな男の子になっていって
今では息をのむような美少年だから・・・
先日も七海と美咲が家に泊まりに来た時
「ねぇ、悠はあんな奇跡的なイケメン達が家にいて何にも思わないの?」七海
七海はテンション高めにいう
「私も思ってた!
涼太君は弟だから仕方ないとしても
もう一人の子
とても綺麗でドキッとする~
さっきも廊下ですれ違ったとき挨拶してくれて
顔が熱くなっちゃったもん」美咲
いつになく美咲がおしゃべりになった
イケメンは口数を増やすものだ
私、間違ってない様で…
やはり
いつまでも子供ではないこの子に
少しずつ異性を感じている
だから
ベッドで横並びに座られると
鼓動が…
「スマホ見てニヤニヤしてるって
涼太が言ってたけど
ホントだね
なんだか嬉しそう」栞
栞はうつむき加減に呟くように言う
「ニヤニヤしてないけど…」悠
そう言いながらスマホを左側に隠すように置いた
「彼氏❓️」栞
栞がこちらを真っ直ぐ見る
「…友達…」悠
嘘はついていない
つく必要もない
ちゃんと言おうとすれば
長々と言い訳のようになりそうだし
全てを話す必要はない
そんな私の表情を読み取るように真っ直ぐな目で見つめてくる
キレイ
少しの微妙な緊張感を壊すように
栞はさっきまでと違って
ワントーン上げた甘えた声で話し始めた
「俺ね
昨日、誕生日だったんだ
14歳になったんだよ」栞
さっきまでとのギャップに戸惑う
「あっそうか
だから昨日はママがケーキ用意してたんだね
おめでとう
大きくなったね」悠
「それだけ❓️」栞
栞が顔をのぞきこむ
「えっ、プレゼント❓️
ないよ‼️だって私、金欠だからね」悠
「えー欲しいよ
プレゼントほしい」栞
やっぱり子どもだね
駄々をこねる顔は幼くてかわいい
ちょっと安心
「前もって言ってくれたら用意したかも❗️今は無理
ホントに無理
だから
おめでとうだけで許して」悠
栞は少しすねた顔で
でも柔らかい笑顔で
向かい側にピョンと座り直し
右手は私の頬にそっと手をあて
左手はキュッと私の右手を握った
私は一連の流れが急だったから
キョトンとした顔になっていたのだと思う
すると
栞は一瞬照れたように口元だけ笑って
だけど
いつものフワフワした愛らしい表情ではなく
キリッとした顔つきになって…
えっ❓️
正直、そこからは記憶が曖昧
ただ
栞が近くて
体温が伝わるほど近くて
唇が柔らかくてあたたかくて
トロンとした目が子供の癖に色っぽくて
次には胸がキュンとしてしまって
瞬きを忘れてしまった私は
目を見開いたまま
硬直した
数秒か❓️数分か❓️
時間の感覚も分からないほど緩やかな世界に浸る
気か付くとうっとりしていて
栞はそんな私の頬からゆっくりと手を離して
いつものようにニコリと笑顔になった
えっ❓️
疑問符ばかりが頭を占領する
栞は
スッと私から離れドアの方に…
一度立ち止まったけど
すぐにこちらを見て
「プレゼントもらったよ」栞
そう言ってはにかんだ
可愛すぎる
私はと言うと…
ファーストキス
さらっと奪われてしまった
数分後
赤面する
胸がドキドキドキドキうるさくて
どうしていいか分からない
栞で頭が一杯になる
だけど…
隣の部屋からは
いつものように涼太と栞がゲームしながら
ふざけあう声がしている
いつもの通りすぎて
困惑する
その日
眠れなかった
目を閉じると
トロンとした栞の 眼差しを思い出すから…
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