第6話
「なあシュバルツ。俺は確かに全力でやれって言ったぜ。それに答えたお前に非はねえよ、うん。でもさこれだけは言わせてくれ。あの的クッソ高かったんだぜ。」
ギルド長が悲しい視線を向ける先には、魔法の影響で大きくひしゃげた的があった。
「す、凄い魔法だったね。い、威力だけなら私と並ぶかも…」
「凄まじいな。まさかアダマンタイト製の的がひしゃげるなんて。」
ギルド長の横にいつの間にか2人の男女が立っていた。
男の方は身長180センチ程赤髪で温和そうな顔をしており、白と赤を主体とした全身鎧を身に纏い、ロングソードとカイトシールドを背負っている。
女の方は身長155センチ程黒髪でイメージの魔女と相違ないとんがり帽子とローブを纏い身の丈程の杖を持っていた。
「あのー、お二人はどちら様でしょうか。
」
「ああ、そうか。お前は初対面だもんな。」
疑問に思い尋ねるとギルド長が答えてくれた。
「この2人は5級パーティ『無窮』のリーダーのアランと魔法使いのベルだ。あと3人ほどメンバーがいるがまた会った時に挨拶しとけ。」
「初めまして。俺はシュバルツといいます。よろしお願いします。」
とりあえず無難な挨拶をしておく。
「紹介にあずかったアランだ。こちらこそよろしく頼むよ。」
「ベ、ベルです。よ、よろしく。」
「お前ら挨拶はそこまでにしとけ。シュバルツ、次はお前の本領を発揮してもらうぞ。」
「本領ですか?」
本領?そんな物自分にあったかと思い、思案に耽る。
「そんな考えずともわかんだろ。お前の
「ああ!召喚ですね!」
「そうゆうこった。おらついて来い。」
ギルド長の後をついて行くと、何故かアランさんとベルさんまでついてきた。
「あのー、お二人は何故ついてくるんでしょうか?」
「ん、聞いてないのかい?僕は君の召喚の技量を確かめる試験官役さ。ベルはただの付き添いだね。」
「ギルド長、聞いてませんが?」
「いやー、初めは俺が試験官やろうと思ってたんだが、アグレスの野郎がやめろっつうから偶々暇してたこいつらにしたんだよ。」
アグレスの野郎め…とブツブツ言いながら目的の場所に向かうギルド長。
「アランさん、アグレスって誰ですか?」
「アグレスさんはこのギルドの副ギルド長さ。ギルド長があんな感じだから、ギルドの業務のほとんどはアグレスさんが処理してるんだ。だからギルド長もアグレスさんには逆らえないんだけどね。」
アランさんの話を聞いていると100メートル四方に区切られた台が複数所狭しと並んでいる場所に着いた。
「着いたぞ。2人ともさっさと上がれ。」
上がれと言われたので台の上にあがる。
「よし上がったな。んじゃ今からルール説明すっぞ。まずシュバルツは召喚魔法で召喚獣を出せ。この台から出ない限り大きさ数は問わん。だが召喚するのは最初だけだ。戦闘中に追加召喚するのは認めん。」
「次にアラン。お前は召喚された召喚獣を全て倒せ。シュバルツに攻撃する以外なら何しても構わん。制限時間は10分。アランの勝利条件は時間以内に召喚獣を全滅させること。シュバルツの勝利条件は10分過ぎても召喚獣が1体でも生き残っているか、アランに致命的なダメージを与えるかだ。」
「ギルド長。アランさんに致命的なダメージ与えるって、明らかに危なくないですか。」
アランさんが5級の冒険者と説明を受けてもどのくらい強いかわからないし、もしも殺してしまったら俺の冒険者人生が色々な意味で終わってしまう。
「大丈夫だ。この台は魔道具でな。一定のダメージを受けるとそのダメージを無効化するかわりにダメージを受けた者を台の外に吹き飛ばすようになってる。ただしコイツは簡易型だから人にしか適応されねえがな。」
そう言った後ギルド長はこちらを見て、笑みを浮かべた。
「5級の事を心配するなんぞお前には10年早え。心配せず全力でやれ。」
そこまで言うなら全力でやらしてもらおう。
「シュバルツ君。ギルド長の言う通り心配はしなくてもいいよ。何かあっても魔道具の能力で無傷ですむしね。」
「わかりました。全力でやらしてもらいます。」
さてここで何を召喚するか悩ましい。フィールドは100×100メートルの正方形型。大型の奴はやめておくべきだろうな〜。
あぁ…でも「やらない方がいい」なんて思うとかえってしたくなるな。なら一つ、ただデカイのではなく少しひねろう。他は適当にだすか。
『汝は妖精にして財の守り手。小人にして巨人なりし汝の力を我に貸し給え。』
『
『彷徨える魂は鬼火となりて、生者を惑わし死へ誘う。汝は人呼ぶ漁火なり。』
『召喚・ウィルオウィスプ』
『汝は恐怖の体現者。恐れあるところこそが汝の居場所。今ここに恐怖を体現せよ』
『召喚・ブギーマン』
目の前に3つの魔法陣が発生しその中からまず50センチ程の小人が現れた。
小人は頭から複数の岩石を生やし、その身を蓑で覆っていた。
次に現れたのはランタンを持った黒い人だった。黒いと言うのは、その姿がまるで炭を人形に固めたようであり、それが握るランタンに灯る火は蒼く燃えている。
最後に現れたのはピエロのような格好をした2.5メートル程の長身が目立つ召喚獣。
「ほぉ…どいつも見た事ねえ奴らだな。シュバルツそいつらはお前さんの地元の奴らか?」
ギルド長の含みのある言葉。どうやらヴェルトさんはコイツらがこの異世界の存在か確認したいようだ。
「ええ、そうですね。こいつらは自分の地元ではそこそこ有名なやつらでしてね。力を貸して貰いました。」
確認するのはいいのだが、俺が転生者なのがバレないか心配である。
「双方準備はいいか?」
「うぃっす。」
「いつでもいけますよ。」
適当な返事を返す俺と、真面目な返事を返し盾と剣を構え戦闘態勢をとるアランさん。
「よし、それじゃあ試合開始!!」
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