私の彼はエクソシスト!?~絶対に働きたくない彼×絶対に働かせたい私の泥沼うぉーず~

@Lisarisanyan

第1話 運命の出会い

※以下は主人公・世里奈せりなの回想です。美化1000%でお送りしているため、現実とは少々、いや大幅にかけ離れている可能性がございます。

あらかじめご了承ください。

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そう、あれは春のうららかな日に起こった奇跡――。


「いっけなーい遅刻遅刻!」


おろしたての制服に身を包み、電車に飛び乗る。

高校に入学してから遅刻しないように気を付けていたのに、今日に限って10分程寝過ごしてしまった。

理由は明白で、今日がテストなのでギリギリまで寝ずに勉強していたのである。


「なんか今日空いてるじゃん」


通勤通学ラッシュの時間。

いつもより一本遅い電車とはいえ、5分違うだけでこんなに空いてるのかな?

時計を確認すると、テストまであと30分。

なんとか間に合いそうだと胸をなでおろす。

ぽつんぽつんと座っている人がいるものの、余裕でどこでも座れるこの状況。

もちろん座りたいけど、座ったら絶対に眠ってしまう自信がある。

英単語を覚えきれていない状態で眠るわけには……。

仕方がない。

このまま立って、少しでも単語を頭に叩き込まないと。

周りに人がいないのをいいことにぶつぶつ呟きながらなんとか覚えようと努力する。


「ん?」

今なんか触られた?

お尻に何かが這うような感覚に襲われ、反射的にスカートを見やる。

電車は珍しくガラガラで自分の周りもガラ空きだ。

英単語をひとつでも多く覚えられるように立っていたいけど……。

周りに誰もいないのに触られているような感覚が怖くなって座席に座る。

変な感覚がなくなり、ほっとしたのもつかの間、胸のあたりを触られているような感覚に襲われる。


「なにこれ……」


怖い。

ゾワゾワする感覚が身体中を駆け抜け、思わず目をつむる。

目を閉じても消えない感覚。

ほんとになんなのこれ……。

なんとなくだけど、目を開けるのが怖い。

でももう耐えるのも限界かも……。


意を決して、恐る恐る目を開けてみる。


「きゃあああああ」


目の前には知らない男が気持ち悪い笑みを浮かべて立っている。

べたべたと触ってくる男。

胸を触ってくる男の手を止めようともがくも、男の手はつかめない。

制服が乱れていく。


「やめてってば!」


周りの乗客の冷たい視線が私を貫く。

どうして?

どうして誰も助けてくれないの?


「誰か助けて!」


叫ぶと周りの人は不気味がって座席を立ち、隣の車両へと移動していく。

男はその様子を愉快そうに眺めながら、私のワイシャツに手をかけ、ボタンを外していく。


「いや! やめて!」


バン!


突然聞こえる銃声。

銃に撃たれた男が自分の方に倒れてくる。

反射的に防御の姿勢を取る。


「きゃあああああ! 何? なんなの? お願いだからこっちにこないで~」


半泣きになりながら必死に叫ぶ。


「お前さ、死んでからもこんな姿晒して恥ずかしくないの?」


声のするほうを見ると――


めちゃくちゃタイプな超絶イケメンが男の肩をがっしりと掴んでいる。


「遅れてごめん」

「いやほんと、正直遅いです!」


他の乗客が助けてくれなかったことに対する不満と助かりそうだという安心感を一気にイケメンにぶつける。

我ながら初対面の人相手に勝手だとは思う。


イケメンは手で銃の形を作ると、指先を男に向ける。


バン! バン!


けたたましい銃声に思わず身がすくむ。


「マジで来世はまともな生き方するんだな」


バン!


男は銃声と共に霧のように消えていく。


「き、消えた……」


「君もああいうの見えちゃうんだ。お互い大変だね」


そういいながら、ジャケットを脱いでサッと私の身体に被せる。

あ……。

制服の胸元はボタンが外れ、下着が見えかけている。

胸元のボタンを慌ててかける。

よりにもよってなんでこんなときにドンピシャタイプのイケメンと出会ってしまったんだ……。

でもイケメンがいなかったら助からなかったなとか頭のなかでぐるぐる考える。


「ん?」


イケメンが怪訝な顔で窓の外を見ている。

釣られて窓の外に顔を向ける。

ガタンガタンと走り続ける電車。

停車駅の標識が目に入るも、ものすごい勢いで電車は駅を通過する。


「駅名がなんか変……?」


また目に飛び込んで来た駅名の看板はひらがな、ローマ字、漢字がすべて混じっている。


「なにあの文字? それにどうして停まらないの?」


ふと我に帰って携帯電話を確認すると、もうテストが始まる20分前……。


「やばい。これじゃテストに間に合わない」

「正直テストどころじゃないかも……」


じわじわと暗闇に包まれる電車。


「停電?」

「違うみたい」


隣車両との間の扉がガタガタガタガタガタとけたたましい音をあげている。

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガッ。

……。

一瞬の静寂に耳をすます。

イケメンを見るとイケメンは警戒した面持ちで臨戦体制を取っている。


「とりあえず伏せて!」


扉がバッと開く。


叫び声のようなものをあげながら霊が次から次へと流れ込んでくる。


「きゃああああああああ」


身体の周りをスノードームの雪のように霊が舞う。

このままじゃやられる!

半べそをかきながら、リュックサックを分回すも、霊が飛び交い視界は真っ暗。

どんなにリュックサックを分回しても、このスノードームならぬ幽霊ドームの出口が作れない。


「もうマジでやめてってばー!」


リュックサックを振り回すのももう限界……。

でもここで抵抗をやめちゃったら、私どうなっちゃうの?


「マジで肩痛すぎる! 死ぬ~~~~~~~~」


もっと普段から運動しとけばよかったとか、せめて腕立て伏せとか頑張ってればなとかいろいろな後悔が巡る。

こんなに後悔ばっかりで死ねない。

死ねないけど、これ以上は無理!!

突如、振り回していたリュックサックが引っ張られる。


「肩が抜ける~~~」


幽霊ドームの外へと一気に身体を持っていかれる。


「ごめん。時間かかっちゃって。君、なんか変な力持ってる?」

「えっ?」

「こんなに一気に霊が来るなんてなかなかないからさ」


イケメンが心底不思議そうな顔をして、自身の小指から指輪を外す。


「これ、御守り」


おもむろに私の左手を取るとスッと私の薬指に指輪をはめる。


「霊が私を避けるようになった?」

まとわりつくように私の周りを飛んでいた幽霊たちが離れていく。

「君が離れると今度は俺が襲われちゃうから、離れないでね」


イケメンがまた手で銃の形を作ると、バンバンと銃声が響く。


「何あの銃?」


イケメンの手元にさっきまで見えなかった銃が見える。

銃からは銀の弾丸が勢いよく飛び出し、霊の身体を貫通していく。

銀の弾に身体を貫かれた霊はけたたましい叫びとともに次々と霧散して消える。

電灯がチカチカと点滅し、暗闇に包まれていた車内に光が戻ってきた。


「あ、停まった!」


走り続けていた電車は何事もなかったかのように駅のホームに停車する。

駅名の看板もいつも通りの表示に戻り、胸をなでおろす。


「って、降りなきゃ!」


胸を撫でおろすのも束の間、腕時計を確認するとテストが始まるまであと15分もない。

電車の扉が開くと同時に勢いよく飛び降りる。


「あ、お礼言ってない」


電車のほうを振り向くと、イケメンはさわやかな笑顔で手を振っている。


「テスト頑張ってね~!」

「頑張ります!」


ホーム全体に響くくらいの大きな声で叫びながら手を振り返していると、自分の薬指で煌めく指輪が視界に入る。


「返し忘れた!」


気付いたのが遅く、電車は音を立ててホームを出る。

名前も年齢も連絡先も知らない彼がくれた指輪を撫でてみる。


「顔さえ忘れなきゃいつかまた会えるよね?」


結局単語帳の英語は結局全部覚えきれなかった。

それにもかかわらず不思議と私は軽い足取りで学校へと向かう。

学校へと続く道には春の訪れを知らせるように桜が美しく舞っていた。


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大学からの帰り道、幼馴染のまりあと将太郎とカフェでたわいもない話をする。


「その話もう何度目?」

「わかんない」

「しかももう3年前じゃん」

「何度だってするもん。私の人生のなかで一番素敵な日だったから」

「いやでも傍から聞いたら滅茶苦茶怖い話じゃないそれ? 幽霊の痴漢とかタチ悪すぎじゃん」

「そうかなー。でもおかげでイケメンと出会えたし」

「世里奈のイケメン基準ってイマイチ信用できないんだよな~」

「まりあが面食いすぎるだけじゃない?」

「そういえば指輪は? 珍しく今日指輪してないじゃん。イケメンから貰ったやつ」


まりあの質問にため息が漏れる。


「それがなくなっちゃったの」

「ええ!? あんなに大事にしてたのに!?」

ずっと黙ってた将太郎が机を軽く叩いて口を開く。

「そんなことより世里奈、明日英語のテストなんじゃないの?」

「そうだった!」

「勉強しないと留年に一歩近づくぞ」

「ぴえん。1年目から留年はマジで嫌。じゃ、私先に帰るね!」


街中の桜の樹は幹がピンクに染まり始め、蕾をたくさん携えている。

もう少しすると、蕾が開き、ひらひらと美しく舞うのだろう。

春のにおいが身体中を包み込む。

あの人と出会った季節がまたやってくる。


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