記憶の時間・記憶の空間

そんなふうに、前世の記憶を

思い出したりする動物さんが


たとえば、あしかさんが書道をしたり。


ぞうさんが絵を書いたり。

ひょっとすると、それは

人間界から生まれ変わって。



ひとに喜んでもらって。


また、ひとに生まれ変わってゆくのかもしれなかったりする。




老犬、さむは

いつか、生まれ変わってまた

この家にもどってくるかもしれない。



そう思うと、ひと時のお別れ。


そんなふうに思ったりする。



その時のために、いっぱい

思い出を作ろう・・・・・なんて

さむが思っているはずもない(笑)。

犬は、いつも

目の前の事をひたむきに追うものだ。



人間も、ほんとうはそうだったけれど


いろいろ、生活が複雑になって

変わってしまった。




目の前の出来事とは違う事を「希望」「欲望」なんて言うけれど


ほんとうは、おかしなことだ。


目の前の出来事は、何も変わっていない。



自分の頭の中で、イメージした状態に


現実を合わせたいと思うのが

希望や欲望である。



そういう事で、ひとは争ったりする。



動物さんから見ると、変な生き物だと


そう、思うかもしれない。







ルーフィは、ただ

めぐを助けたいために、想像を

働かせている。



それも希望だけれども。



誰かのために希望するのは

それは、良い事である(笑)。





さむは絵本「ゆきのひとひら」を

袋に入れて。


それを首から下げた。



手が使えるので、ひょい、と

袋の手提げを首に掛けようとした。


けれど、犬の前足は


ひとの手とは構造が違うので

やや、ぎこちない。



元々は、人間も

猿と同じ4足歩行だったのだから


いずれ、犬がもし

2足歩行になれば

人間のように、手を自由自在に使い


そして、文化を持っのかもしれない。。





さむは、誰も見ていないので


ドアを手で開いた。



それは、いつもしているのだけれど。


廊下を歩くのは、やっぱり

4本足の方が早い。





あの子の部屋の、扉は開いている。


夏なので、風が爽やかに吹き抜けて。





めざす、机に

「ゆきのひとひら」は、まだそのまま。



本の好きな子は、部屋にはいないらしい。




「いまのうち・・・・・。」と


さむは、魔法で

自由になった前足を

手のように使って

「ゆきのひとひら」を

取り替えようとした。





首から下げた手提げ袋に

手を入れて。

絵本を取り出そうと思っても


手のながさが、ちょっと短い。


関節は、走るために

できているので


前後には良く動くけれど


左右には、人間よりは上手く動かない。




その代わり、早く走れるのだけれど。




仕方ないので、袋を首から下ろして

中の本を、取り出して


入れ替えようとした。



けれども、犬の前足は

人間のように掴む事ができない。


人なら、片手で掴んで


もう片手で袋を持って。


そんな事が普通にできるけれど



犬なので、そこは難しい。


ーーー2冊ある事を、気づかれると面倒だ。




そう、さむは思う。




手早くしなくては、と思うと

上手くいかないが

それも、そういうものだ。




「完成イメージ」を頭に浮かべて

それに近づける。




うまくいかないと、焦る。




そうではなくて、手続きを

ひとつひとつ、間違えずに

進めていけば、いつかは終わるので



完成だけを思って、失敗すると

かえって遅くなるのだ。






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